2014年

7月

15日

ワシントンDC 2014年7月15日号

 ◇熱戦が続く共和党予備選 主流派が奇策で茶会系制す

及川正也
(毎日新聞北米総局長)

 6月24日、全米の注目を集めた南部ミシシッピ州での上院共和党予備選の決選投票で、ベテランの現職サッド・コクラン上院議員(76)が、保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」系の新人クリス・マクダニエル同州上院議員(41)に逆転勝利した。政敵・民主党に触手を伸ばして支持拡大を図ったのが勝因だ。これは奇策か、禁じ手か。

「共和党の予備選の結果を民主党リベラル派が左右した。不正投票だ」。米メディアが「現職勝利」を報道するなか、マクダニエル氏は支持者らを前に、怒りに満ちた表情で「敗北宣言」を拒否した。茶会はいわば民主党リベラル派の仇敵。怒るのも理解できる。
 6月3日の予備選ではマクダニエル氏が投票総数でコクラン氏を上回ったものの、小差で勝利に必要な過半数には届かなかった。決選投票にあたって、コクラン陣営が採った方針は「民主党票を取り込め」。「敵の敵は味方」というパワー・ポリティクスの原則に従った戦術だ。
「男女や人種に関して容赦ない発言」(米メディア)をしてきた極右的なマクダニエル氏の信条を逆手にとり、運動員を民主党支持の黒人が多く住む地域に大量投入して票を掘り起こし、追い落とす戦術を展開した。
 ミシシッピ州を含めた米国のほぼ3分の1の州では、有権者が事前に行う選挙権登録において所属政党を申告する規定がなく、どの政党の予備選にも投票できる。コクラン陣営は、6月3日に同時実施された民主党予備選で投票しなかった民主党員は共和党予備選に投票できることに目をつけた。

 ◇黒人有権者の心つかむ

 また、11月の本選では共和党候補の勝利が確実視され、「どうせなら茶会系ではない人」という黒人有権者の心理をついた。地元メディアによると、民主党支持が圧倒的な黒人の投票数が予備選より大幅にアップし、コクラン氏に流れて形勢が逆転したという。
 黒人地区の投票所で黒人有権者はメディアに対し、一様に「共和党候補に初めて投票した」と話し、「よりましな候補」としてコクラン氏に投じたことを認めた。コクラン氏は勝利演説で「今夜起きたことは、よりよい雇用をミシシッピにという(州民の)総意だ」と述べ、党派を超えた支持獲得を強調してみせた。
 茶会は2010年中間選挙で「反オバマ層」を結集し、下院共和党大躍進の原動力になり、党内保守基盤の新たな核を成してきた。系列議員は50人程度の勢力だが、今年11月の中間選挙の党公認候補を決める予備選で、オバマ政権や民主党に融和的な現職議員の選挙区に「刺客」を送り込んでいる。米ブルッキングス研究所によると、共和党予備選立候補者413人(6月24日現在)のうち茶会系候補は113人と最も多い。
 だが、昨年10月の政府機関一部閉鎖を主導した茶会系には世論の反感も強い。最初のヤマ場となった5月20日の6州予備選。結果は、ケンタッキー州で苦戦が伝えられた上院共和党トップのマコネル院内総務が茶会系候補を降し、「茶会の『訃報記事』が飛び交った」(ブルッキングス研究所のカマーク上級フェロー)。
 6月10日のバージニア州下院共和党予備選では、下院共和党ナンバー2のカンター院内総務を無名の茶会系候補の「刺客」が打ち破るという「カンターショック」が起きたが、これと激戦となったミシシッピ州は異例。今後、番狂わせがないとはいえないが、残る予備選はおおむね党内主流派である現職優勢だ。共和党が急進的な「反オバマ」より、16年大統領選を見据えて現実的な路線に修正し始めた表れともいえそうだ。