2014年

7月

15日

特集:親と子で考えるおひとりさま 未婚化で急増する高齢単身世帯 2014年7月15日号

 ◇社会の制度設計見直しが不可避

藤森克彦
(みずほ情報総研主席研究員)

 おひとりさまが増えている。若者の一人暮らしだけではない。配偶者と死別した高齢者や、未婚の中高年男性の一人暮らしが急増している。
 結婚をして同居家族がいることを「標準」としてきた日本社会において、単身世帯の急増は衝撃であろう。しかし、これは個人の生き方や家族のあり方が多様化していることの象徴でもある。一方、これまで世帯内の助け合いが生活保障の大きな役割を果たしてきたので、単身世帯の抱えるリスクに対して社会としての対応を考えていく必要がある。

 単身世帯を考察することは、現在、家族と暮らしている人にとっても無関係ではない。なぜなら、誰もがおひとりさまになる可能性があるからだ。例えば、配偶者との死別や離婚などによって、将来おひとりさまになるかもしれない。以下では、単身世帯の増加の状況とその要因、社会としての対応策を考察していこう。

 ◇老後を家族に頼れない

 まず、単身世帯の現状をみていこう。2010年現在、全国の単身世帯(おひとりさま)数は1679万世帯にのぼり、総人口の13%、全世帯数の32%を占めている。「標準世帯」といわれる「夫婦と子供からなる世帯」の全世帯数に占める割合が28%なので、単身世帯は標準世帯を抜いて、最も比率の高い世帯類型となった。
 10年の単身世帯数を国立社会保障・人口問題研究所が08年に行った将来推計と比べると、単身世帯化は5年分前倒しで進んでいる。つまり、10年の単身世帯数(実績値)は、08年の将来推計で15年に到達するとみられていた1656万世帯を上回った。
 そして30年になると、単身世帯数は1872万世帯となり、総人口の16%を占めるとみられている。全世帯に占める単身世帯の割合は37%となり、標準世帯の割合(24%)を大きく上回る(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。
 注目すべきは、今後、年齢階層ごとの単身世帯数の増減が大きい点である。10年現在、男性で最も多くの単身世帯を抱えているのは20代である。20代で単身世帯が多いのは、進学や就職などを機に親元を離れて一人暮らしを始める若者が多いためだ。そして30代以降、年齢階層が上がるにつれて、単身世帯数は減少していく。これは、結婚をして二人以上世帯となるためである。一方、女性をみると、20代のみならず70代で単身世帯が多い。女性の平均寿命が男性よりも長いので夫と死別して一人暮らしをする女性が多いためである。
 ところが30年になると、男女別・年齢階層別の単身世帯数の形状は一変する。20代の単身世帯数は、少子化の影響を受けて男女共に大きく減少する。一方、男性で最も多くの単身世帯を抱える年齢階層は50代となる。また、60代男性の単身世帯数も増えていく。他方、女性で単身世帯が最も多いのは80歳以上であり、256万世帯にもなる。驚いたことに、10年の2倍の水準である。
 50代男性で単身世帯が増加していく大きな要因は、未婚化の進展である。50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼ぶが、男性の生涯未婚率は85年まで1~3%台で推移した後、90年以降、急激に上昇を始め、10年には20・1%となった 。しかも30年になると、男性の生涯未婚率は27・6%になると予測されている。女性の生涯未婚率も上昇しているが、男性ほど高水準ではない。10年の10・6%が30年には18・8%になると推計されている。
 一方、80歳以上の高齢女性で単身世帯が増加していくのは、長寿化によって80歳以上人口が増加していくことと、配偶者と死別した高齢女性が子供と同居しない傾向が続くためと考えられる。実際、夫と死別した80歳以上女性のうち、子供と同居する人の割合は、95年の69・7%から、10年には52・4%まで低下している。たかだか15年間で、配偶者を失った老親と子の同居率が17%ポイントも低下しているのである。
 ちなみに、今後未婚の高齢者が増加していくことが予測されている。具体的には、65歳以上の未婚者は、10年の120万人から、30年には315万人になるとみられている。実に163%も増加していく。こうした未婚の高齢者の多くは一人暮らしだと推察される。そして未婚の単身高齢者は、配偶者と死別した単身高齢者とは大きく異なる点がある。それは配偶者のみならず子供もいないことだ。老後を家族に頼ることが一層行いにくくなることが予想される。

 ◇予備軍は283万人

 次に視点を変えて、現時点では単身世帯ではないものの、将来的に単身世帯となっていく可能性の高い「単身世帯予備軍」をみていこう。具体的には、「親と同居する40歳以上の未婚者」である。「単身世帯予備軍」は、40歳以上の未婚者なので同居している親のほとんどは60歳以上と考えられる。親が死亡したり、介護施設などへ入所した場合には、これら未婚者は単身世帯になる可能性が高い。
 では、単身世帯予備軍は、全国にどの程度いるのだろうか。10年現在、親と同居する40歳以上の未婚者(単身世帯予備軍)は全国に283万人存在し、40歳以上人口の3・9%を占める。05年の単身世帯予備軍は202万人だったので、わずか5年間で40%も増えた。
 無論、40歳以上であっても、今後結婚して二人以上世帯を形成することも考えられる。しかし、40歳を超えると結婚しにくい現実がある。例えば、10年の年齢階層別の未婚者数に対する初婚件数の割合(未婚者初婚率)をみると、男性では20代後半の7・1%をピークに低下し、40代前半は1・7%、40代後半は0・8%となる 。同様に女性の未婚者初婚率(10年)も、20代後半の10・0%をピークに低下していき、40代前半では1・5%、40代後半では0・5%となる。
 では、単身世帯の増加は問題なのか。言うまでもないが、結婚するか否か、一人で暮らすかどうかは、基本的には私的領域の事柄である。それぞれの人が、自分の価値観に従って選択したライフスタイルに良いも悪いもない。また、単身世帯の増加の背景には、女性の経済力が向上し、結婚しなくとも生活していける女性が増えたことがあげられる。ライフスタイルの選択肢が広がったことは、社会として歓迎すべき点である。

 ◇貧困、介護、孤立のリスク

 しかし、単身世帯は、いざというときに支えてくれる同居家族がいない点で、二人以上世帯よりもリスクが高い。具体的には、以下の三つのリスクを抱えている。
 第一に、貧困のリスクである。おひとりさまが失業や病気などによって働けなくなれば、貧困に陥りやすい。結婚していれば配偶者が働くことでやりくりできるが、単身世帯ではそれが難しい。
 また、単身世帯は二人以上世帯に比べて、非正規労働に従事する人の比率が高い。この背景には、非正規労働に従事する単身男性は、経済的に不安定なために、結婚したくても結婚が難しいという事情が考えられる。さらに、女性は男性よりも非正規労働に従事する人の割合が高いが、未婚化の進展に伴って、「主たる稼ぎ主」として非正規労働に従事する未婚の単身女性が増えている。
 実際、単身男女と男女別総数の貧困率を比較すると、単身女性では30代後半、単身男性では50代以降から貧困率が高まり、男女別総数の貧困率との乖離が拡大している。そして65歳以上になると、単身男性の38・3%、単身女性の52・3%が貧困に陥っている。
 第二に、要介護のリスクがあげられる。単身世帯は同居家族がいないので、病気や要介護状態に陥った場合の対応が難しくなる。公的介護保険が導入されたとはいえ、在宅で要介護者を抱える世帯の7割が「主たる介護者は家族」と回答している。家族の役割は依然として大きい。
 一方、本人が高齢期を迎える前に、まず直面するのは親の介護であろう。従来であれば、40代や50代になれば結婚している人がほとんどであり、夫婦で何とかやり繰りして親の介護を乗り越えた。しかし未婚者が増加する中で、親の介護について従来型の対応は難しくなっている。
 近年では、親の介護のために親と同居する未婚の成人子が増えている。いわゆる「シングル介護」だ。シングル介護の難しさは、一人で負わざるを得ない介護負担の重さのみならず、仕事と介護の両立が難しいなどにもある。11年10月から12年9月にかけての総務省就業構造基本調査によると、「家族の介護・看護」を理由とする離職者は、年間約10万人。そのうち54%は、40代と50代の働き盛りの年代である。
 第三に、社会的孤立のリスクである。近年マスコミで、死亡後数日間気づかれずに放置された一人暮らしの高齢者がとりあげられているが、これは社会的孤立が顕在化した事例といえよう。内閣府が09年に60歳以上の高齢者を対象にした調査によれば、単身世帯の65%が「孤独死を身近な問題」と感じており、夫婦二人世帯の44%、3世代世帯の30%に比べて高い水準にある。

 ◇地域のつながりを再構築

 では、単身世帯の増加に対して、どのような対応をすべきか。
 第一に、社会保障制度の機能強化である。現行の社会保障制度は、家族の助け合いを前提に構築されてきたため、単身世帯の抱えるリスクに十分な対応ができていない。例えば、「介護の社会化」を一層進めていくべきである。単身世帯には、少なくとも同居家族はいない。家族の機能が脆弱(ぜいじゃく)化する中で、介護を家族に委ねることは難しくなっている。
 第二に、地域づくりである。退職をした多くの高齢単身者にとって、今後、地域が「社会とつながる場」になりうる。そして、いくつかの地域では、熱意のあるNPO法人などが、「就労の場」や「交流できる居場所」を創設している。そうした場では、一人暮らしの高齢者などが地域の「支え手」となり、やがて加齢によって支えられる側になっていくという循環が地域で築かれようとしている。こうした活動は、貧困や社会的孤立の防止に有効と考えられ、公的な支援を強化すべきだ。
 第三に、非正規労働者への処遇改善である。就職氷河期にフリーターとなった若者は職業訓練の機会に恵まれず、正規社員への転換も容易ではない。個人の力だけでは克服できない社会の歪みも是正すべきだ。
 単身世帯の増加に向けたこうした施策は、多様な生き方や家族のあり方に対応できる成熟した社会を築く一歩にもなるだろう。そしてバリアフリーの街が障害のない人にも住みやすいように、一人暮らしの人が住みやすい社会は誰にとっても暮らしやすい社会であると思う。血縁を超えて、公的にも、地域としても支え合える社会の構築が求められる。(了)

 

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この記事の掲載号

親と子で考えるおひとりさま 週刊エコノミスト

2014年7月15日号

 

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