2014年

7月

15日

経営者:編集長インタビュー 平野聡 トプコン社長 2014年7月15日号

 ◇土木建設、農業の自動化を進める

 土木作業や農作業を自動化するためのシステムで業績を拡大。2014年3月期は、売上高が前期比20%増の1166億円、営業利益が同2・2倍の117億円に。株価もこの1年で1200円から2200円に上昇している。
── 業績好調の理由は。

平野 直接的な要因は、半導体製造装置事業の構造改革を終えたことです。この事業は、市場規模は大きいものの競争が厳しく利益の出しづらい事業でした。ここを縮小整理したことで、当社の事業は全て成長市場にある、と胸を張って言えるようになりました。

── 成長市場とは。
平野 測量技術を基盤とした建機や農機の自動運転システム事業と眼科医療の分野です。
 土木建設は市場規模が600兆円とも言われ、自動車産業の約6倍もありますが、自動車産業のような自動化・ロボット化はほとんど行われていませんでした。ですが、土木工事や農業こそ、人手不足を補うための産業革命が求められています。
 眼科医療も、人の寿命が延びるほど、白内障や加齢黄斑変性症などの疾病患者が増えています。クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)が重視される時代にあって、我々の事業には追い風が吹いています。
── 自動運転システムはどのように事業を拡大させてきたのですか。
平野 当社の主力事業は、光学技術を基盤にした測量システムでしたが、これだけでは今後大きな成長が望めない、と1990年代に新たな展開を模索していました。そして見つけたのが94年に買収したカリフォルニアのベンチャーです。この会社は、当社のセンシング機器(センサーを利用した計測機器)を使って建設機械の自動運転を行うシステムを開発していました。この会社をベースに自動運転事業が始まりました。
 さらに2000年には高度なGPS(全地球測位システム)技術を有するカリフォルニアのベンチャー企業も買収しました。この会社の面白いところは、180人の技術開発者がモスクワで開発を行っていることです。位置情報も米国をはじめ各国の衛星から受信できるハイブリッド型です。自動化システムに精度の高いGPS技術が加わったことで、建機の自動操縦システムを確立することに成功しました。

 ◇いずれは標準搭載に

── 売り上げ規模は。
平野 前期は489億円でしたが、3年後には5割増の740億円にする計画です。いま売れているのは欧米中心ですが、今後日本や新興国でも普及していくとみています。
 かつてカーナビゲーションが、後付けから広がったように、自動化システムも、いまは後付けがほとんどで、搭載率は米国で15~20%、全世界では10%です。ただ、今後は、販売時に標準装着されるプリインストールの市場が伸びていくと思います。コマツさんも、自動化システムをプリインストールした建機の販売を13年に始めました。将来は、ブルドーザーの半分くらいに標準搭載されると思います。
 建設業は、どこの国も雇用政策の色彩が強く、省力化はご法度でした。しかし、米国でも90年代に公共事業の方針が変わり、省力化、コスト削減に向かい始めたのはこのころです。自動化システムの導入等で工期を縮めると、インセンティブが与えられるようになったのです。
── 農機の自動運転も徐々に広がっているとか。
平野 米国、欧州を中心に導入が進んでいるので、日本でも追随の動きが出てくるでしょう。自動運転によって生産性も品質も向上するからです。これまで農家はトラクターで肥料や水をまくとき、運転者が目見当でやっていました。運転者は、水や肥料がまけていないところがあってはいけないと考え、重なってまきがちです。これはムダであり、農作物の品質を損なうことにもなります。一方、GPS機能を搭載した自動運転システムでは、位置が正確に計測されるため、水や肥料が計画どおりにまけます。今後の課題として、農作物にレーザーを当てて生育具合などを診断し、必要なところだけに必要な量の水や肥料をまくシステムも開発しています。
── 眼科事業は、検査・診断機器を中心に、予防から治療まで一気通貫の展開を目指しています。
平野 昨年6月に3次元眼底像撮影装置(3DOCT)を発売しました。簡単に操作できて眼の異常があるかどうかを確認できるのがミソです。1台約600万~700万円もするのですが、すでに約1800台売れました。今後は、こうした機械をコンパクトなサイズにして、地域の介護施設などに置けないかと考えています。眼科医に行くかどうかの判断を自分でやれるようにする。血圧計のイメージです。

 売上高の75%を海外で稼ぎ、連結子会社53社中45社の社長は外国人だ。

── グローバル経営で心がけていることは。
平野 この10年で会社の構造は大きく変わったのに、日本の社員がそれを理解していないところがあります。会社の成長のためには、どの事業が拡大し、自分の所属する組織はどこに位置するのかという自覚と誇りを持たせることが必要だと考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 30代前半は欧州でセールスエンジニアとして、測量システムや眼科機器など何でも売っていました。後半は、買収したカリフォルニアのベンチャー企業のマネジメントをやっていました。
Q 最近買ったもの
A ゴルフクラブです。半年に1回は買っていますね。あと、ゴルフスイング解析システム(セイコーエプソン製)も買いました。自分のスイングのクセが分かって面白いですね。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフに犬の散歩くらいです。
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 ■人物略歴
 ◇ひらの・さとし
 福岡県出身。1982年東京電機大学理工学部卒業後、トプコン入社。主に海外営業畑を歩き2007年執行役員。10年取締役兼執行役員、12年6月取締役兼常務執行役員を経て、13年6月から現職。56歳。