2014年

8月

05日

ワシントンDC 2014年8月5日特大号

 ◇違いの対処に頭を悩ます 中国との「新しい関係」

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 7月9、10日の2日間、北京で米国と中国の「戦略・経済対話」が開催された。注目されたのが、中国の習近平国家主席が掲げる「新型大国関係」を巡る対応だ。

 同対話は、オバマ政権1期目の2009年に、米中両国間で開催が合意された閣僚級の定期会合で、政治・安全保障と経済の両分野を合わせてハイレベルで直接協議するものだ。6回目となる今回は、米国からケリー国務長官とルー財務長官、中国から楊潔篪国務委員と汪洋副首相(商務担当)らが参加した。

 昨年7月のワシントンDCでの戦略・経済対話は、前月に行われた米中首脳会談直後の開催となり、協調的なムードの中で行われた。しかし、今回は最近の東・南シナ海における領有権を巡る緊張の高まりや、今年5月の米企業に対するサイバー攻撃を理由とした米政府による中国軍関係者の訴追等で、両国間の溝が深まる難しい状況となっている。

「新型大国関係」は、習氏がまだ国家副主席だった12年2月の訪米時に言及。その後、国家主席として臨んだ昨年6月の米中首脳会談時に、米中両国が構築すべき関係として提唱した。今回の対話の開幕式演説でも、習国家主席は繰り返しこの「新型大国関係」に言及し、その構築を主張している。

 中国側は「新型大国関係」の意味するところを公式には定義していないが、ワシントンの専門家の間では、「対等の大国」として「中国の核心的利益を尊重する枠組み」とすることを意図したものとの見方が一般的だ。米側の対応については、昨年11月にライス国家安全保障問題担当大統領補佐官が外交演説を行った際、「新型大国関係を機能させることを模索する」と発言。中国の主張を受け入れたとの臆測を呼んだ。

 しかし、今回の戦略・経済対話に先立って行われた上院外交委員会の公聴会で、ラッセル国務次官補は次のように証言した。

 

 ◇「大国関係」と表現せず

 

 6月26日に行われた公聴会で「米政権は新型大国関係をどう解釈しているか」と問われたラッセル次官補は、「中国では、米国や国際社会が中国の核心的利益を尊重することを求める見方があるが、米政権はそれとは大きく異なる見方をしている」と証言。さらに、「重要な課題に対し現実的な協力をするとともに、双方の立場の違いに対処していくことが新型の関係である」と説明した。

 今回の戦略・経済対話の場でも、オバマ政権は「新型大国関係」について慎重な姿勢をとった。対話の開催にあたり発表されたオバマ大統領の声明でも、「大国関係」とは表現せず、「中国との新しい形の関係を発展させる」と言うにとどめている。

 今回の対話は、特に気候変動対策への協調や2国間投資協定の交渉進(しん)捗(ちょく)等で合意が見られたが、東・南シナ海における領有権の問題やサイバーセキュリティーなどの重要な問題では、米中の主張の相違が目立った格好だ。ただ、安全保障面で米中両国の溝が深まる一方で、米国にとって中国との経済面での協力関係が重要であることに変わりはない。

 また安全保障面も、これ以上の緊張の高まりを米側は望んでいない。北朝鮮やイランへの対応といった重要な外交問題での中国との協力関係も必要だ。それゆえ、米国の対中アプローチは、「現実的な協力と双方の違いへの対処」の難しい使い分けが求められている。

 とりわけ、ウクライナ危機等により国際的緊張が高まり、中国が東・南シナ海における動きを強める現下の情勢においては、その「違いへの対処」をどのように行っていくのかが問われている。