2014年

8月

19日

経営者:編集長インタビュー 西島剛志 横河電機社長 2014年8月12・19日合併号

 ◇制御システムで世界一目指す

 

 制御機器の大手企業。海外のエネルギー需要の増加や北米のシェール革命などを追い風に業績は好調。2013年度は売上高が前年比11%増の3884億円、営業利益が同40%増の258億円だった。

 

── 石油・ガスや石油化学プラントなどのエネルギー・素材系の制御システムに強い。

西島 我々が強いのは、プロセスオートメーションといって、物質が連続的に変化しながら製品になっていく生産設備の制御システムです。石油・ガスや石油化学プラントのほか、鉄鋼や発電所、製紙、食品、薬品などに制御システムを納入しています。

 制御システムは、現場の温度や圧力、流量などのデータをセンサーで計測し、それを受けてバルブなどの操作機器に指令を出すというのが一連の流れです。ただ、制御システムは、人に例えれば脳神経のようなものなので、お客様の設備に合わせた調整をするエンジニアリングが必要です。そのノウハウの蓄積が我々の強みであり、エンジニアリング力が評価されて、海外案件を拡大してきました。

 石油・石油化学関連のプロジェクトは規模が大きいので、制御関連のすべてを担当する「MAC(メイン・オートメーション・コントラクター)」という役割を担うこともあります。そうなると、自社製品は20%くらいで、残りは他社製品も使ってシステムをつくりあげ、なおかつお客様に運転のトレーニングもする。そういうことで、納入後の補修・運用などのアフターマーケットの仕事もいただいています。

── シェール革命で市場環境は激変しましたか。

西島 東南アジアやロシア、中東諸国、豪州などの資源国で、石油や天然ガス開発が活発に行われていたところに米国でシェール革命が起き、確かに投資は北米にシフトしています。米国で新たに石油化学プラントが建設されているほか、エネルギーコストの低下から、製造業も米国に回帰していくのではないかとみています。とりわけ天然ガスは、液化、気化、輸送も含めて我々が相当経験を積んでいる分野なのでチャンスではありますが、それは同時に世界中の競合会社にもチャンスが巡ってきていることを意味します。シェール革命の効果は、一筋縄では享受できないと、気を引き締めています。

── 新興国市場は足踏みですか。

西島 米国の金融緩和縮小で先進国に多少おカネが戻り、東南アジアやオセアニアではプロジェクトの遅延もありました。一方で、ロシアのヤマルLNG(液化天然ガス)プロジェクト向けの制御システムを昨年11月に受注しました。中東諸国でも引き続き投資は活発に行われており、当社についていえば、決して北米一本足打法ではありません。

── グローバルの売上比率は。

西島 計測器なども入れた全体でいえば、海外67%、国内33%。このうちアジアが25%、中東、欧州がそれぞれ10%弱、北米は7%程度です。将来的には北米はもう少し拡大しますし、アジアもさらに伸びるでしょう。

── 制御システムで世界トップを目指すと公言しています。

西島 約3兆円といわれる制御システム・センサー市場では、当社以外に、スイスのABB、独シーメンス、米ハネウェル、米エマソン・エレクトリック、仏シュナイダーエレクトリックの6社あり、バルブを抜いた分野で今は4位です。3位との差はわずかですし、首位メーカーのシェアも十数%程度なので、到達可能な目標です。15年度はまずはシェア10%を目標にしています。

 

 ◇全体最適の経営

 

── 国内は厳しいですか?

西島 そうですね。経済産業省が石油精製能力の削減を促していますし、我々の主要顧客の素材やエネルギー分野は海外勢との競争も厳しく、国内での生産量は減っていくとみています。ただし、国内市場がなくなるわけではありません。これまでは制御とセンサーでのお付き合いが中心でしたが、品質管理や生産効率の改善、省エネなどにも仕事を広げ、ソリューション・サービス・カンパニーに進化していこうとしています。そして今後は、交通インフラや社会インフラなど他の業種にも展開していくつもりです。

── 制御以外の分野は。

西島 創業事業の計測器は、一時期は半導体向けなどが主力でしたが、今は電力や光ファイバー向けの測定器と現場で測定機器を校正するキャリブレーター、細胞観察用システムなどに集中しています。ここで7%程度の売り上げを占めます。そのほか、民間航空機のコックピット向け液晶パネルや船舶向けの航法装置にも力を入れています。

── 今後の課題は。

西島 欧米企業に比べると、まだまだ効率を上げられる余地があると考えています。海外展開を加速する過程では、各国の拠点の独立性や自立性を強みにしてきましたが、2年前から全体最適をより意識した経営をするようになりました。これまで培ったノウハウをグループ全体で共有し、互いに利用しやすくしています。さらにはエンジニアリングについて高い知識を持つ日本人社員を、仕事の減る日本から海外に出して現地のスタッフに伝えていくようにしています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 流量計や伝送器などの製品開発の技術者で、お客様の現場を駆けずり回っていました。設計から実験、生産の立ち上げ、出荷後のアフターサービスまであらゆることをしていました。

Q 最近買ったもの

A スニーカーです。

Q 休日の過ごし方

A 土日は1日1万歩以上歩くことを目標にしています。そば巡りが好きで、目的地の手前の駅で降りて歩くこともあります。

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 ■人物略歴

 ◇にしじま・たかし

 神奈川県出身。1981年東京都立大学(現首都大学東京)理学部卒業後、北辰電機製作所(現・横河電機)入社。2010年横河メータ&インスツルメンツ社長。その後横河電機取締役常務執行役員などを経て13年4月から現職。57歳。