2014年

8月

26日

ワシントンDC 2014年8月26日特大号

 ◇共和党の救世主となるか ランド・ポール上院議員

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 米中間選挙(11月4日投開票)まで3カ月を切ったが、全米の関心は選挙直後に幕開けする2016年大統領選へと向かい始めている。与党・民主党の次期候補にヒラリー・クリントン前国務長官(66)が有力視されるなか、本命不在といわれる野党・共和党で脚光を浴びるのがランド・ポール上院議員(51)だ。共和党の主流である保守派の支持が厚い期待の新星は共和党の救世主になれるか。

「法の執行で『人種』はいまも一因になっている。暴力事件を除いて刑務所に入っている4人に3人は黒人か中南米系。白人の若者も黒人や中南米系と同じくらい違法ドラッグを使っているとの調査があるにもかかわらずだ」。7月25日、中西部オハイオ州で開かれた全米都市同盟の会合でポール氏は強調した。

 犯罪の取り締まりや裁判で黒人など少数人種が不当な扱いを受けている──。ポール氏がこう指弾した狙いは、共和党の党勢拡大だ。共和党の支持基盤といえば白人層で、黒人支持層は従来2割程度だった。それがオバマ大統領の登場で6%(12年大統領選出口調査)まで激減。次期大統領選では支持層の裾野を広げなければ、政権奪還は程遠いという危機感の裏返しでもある。

 10年中間選挙で初当選した南部ケンタッキー州選出の新人で眼科医だが、弁舌がたちテレビでもひっぱりだこだ。連邦政府のムダ削減や減税などで当時旋風を巻き起こした草の根運動「ティーパーティー(茶会)」と連携、同じケンタッキー州選出の有力者マコネル上院議員らが推す対立候補を予備選で破った。

 

 ◇父譲りのリバタリアン

 

 ポール氏ですぐに思い浮かぶのが父親のロン・ポール元下院議員。立憲主義・憲法順守を信条とし、個人の自由を重視し、他国への武力介入を極力制限する不干渉主義の「リバタリアン」(自由至上主義者)だ。08年と12年大統領選共和党予備選への出馬で主張が浸透。ともに指名争いには敗れたが、草の根の強い支持が集まり話題となった。この支持層が息子の選挙に結集したといわれる。

 ポール氏は08年のリーマン・ショック後の経済対策などで膨張した債務削減や歳出削減の旗振り役を務め、保守派の評価を高めた。イラク戦争開戦に反対した父親譲りのリバタリアンの側面もある。昨年夏、化学兵器使用を理由にオバマ大統領がいったんは決断したシリア攻撃に対し、米国の国益に直接関係ないとして「シリア内戦に介入するのは間違いだ」と反対。こうした主張への賛同者は多く、オバマ大統領が攻撃を断念する伏線ともなった。

 共和党に影響力がある保守政治行動会議(CPAC)の3月の年次総会では、次期大統領選候補模擬投票で2年連続のトップを獲得。米メディア調査でも常に上位グループ入りしている。最近は「08年大統領選時にマケイン陣営にいた内政担当責任者を雇うなど準備を進めている」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙)という。

 中間選挙では共和党が下院で多数派を維持したうえで、民主党が主導権を握る上院を奪還できるかが焦点。共和党が両院で多数派となれば、8年ぶりの政権奪還への期待も高まる。ポール氏は恩讐をこえてマコネル氏とも連携。各種地方選への応援演説に出かけるなど「党への貢献」もアピールする。

 ただ、ワシントンかいわいでは、大国として復活したロシアへの対応や、各地で紛争が絶え間ない混乱した国際情勢の中で、「米国が孤立主義を通せるのか」と外交政策への疑問も芽吹いている。救世主になれるかの正念場はこれからだ。