2014年

8月

26日

特集:水素・シェール・藻 2014年8月26日特大号

 ◇悲願の燃料電池車発売 ブームに沸く“水素ムラ”

 

谷口健/花谷美枝

(編集部)

 

 次世代エネルギーの本命候補として、水素への期待が高まっている。

 政府は4月の「エネルギー基本計画」に水素エネルギーの活用促進を盛り込み、6月24日には経済産業省が水素と燃料電池(水素から電気を作る機械)の普及ロードマップを公表。2015年度までに100カ所の水素ステーション整備、20年ごろには家庭用燃料電池(エネファーム)の累計140万台普及を掲げた。

 翌25日にはトヨタ自動車が15年3月末までに燃料電池車(FCV)を700万円程度で販売することを発表、15年12月までにFCVを発売するホンダとともに、FCV市販の道筋が見えてきた。

 立て続けの水素関連ニュースは、8月下旬の15年度予算の概算要求をにらんでのものだ。FCV購入の補助金は、安倍晋三首相が7月18日に明言した1台200万円として、初年度の目標台数が1万台なら予算規模は200億円程度。水素ステーションは、1カ所当たり建設費の半額相当の2億円程度を補助する方向で、目標の100カ所の達成には約200億円が必要になる。

 

 ◇資源確保と環境保全

 

 水素は石油やガスなどの1次エネルギーとは異なり、自然界に単体では存在しない2次エネルギーだ。石油やガスなどから取り出す水素は貯蔵・運搬が可能で、必要に応じて電気に変換できるという特徴がある。だが、2次エネルギーの水素に「シェール革命ほどのインパクトはない」と見るエネルギー専門家は多い。

 それでも、日本が官民挙げて水素社会を推進するのは、二酸化炭素(CO2)排出がゼロの「究極のクリーンエネルギー」になる可能性があるからだ。

 現在、水素は化石燃料から作るのが一般的だが、将来的には低品位の石炭や、自然エネルギー由来の電力を使って取り出すことが期待されている。水分が多い褐炭は豪州やインドネシア、ドイツ、中国などに豊富にある。水素を作る時に排出されるCO2を地中に埋める「CCS(二酸化炭素貯留)」を実用化できれば、CO2排出もゼロにできる。すでに、川崎重工業が豪州で計画しており、17年に実証試験を始める予定だ。

 中長期的には「砂漠のど真ん中に建てるメガソーラー(大規模太陽光発電)や未利用の水力発電の電力を使って、水の電気分解から水素を取り出し、液化して日本にもってくる」(資源エネルギー庁)ことも可能だ。

 そして、最終的には「国内の自然エネルギーを使って水素を作れるようになれば、エネルギー輸入量を少しでも減らせる」(国会議員の水素研究会を取り仕切る自民党の福田峰之衆議院議員)という未来図も見えてくる。本田技術研究所の守谷隆史上席研究員は「CO2とエネルギー安全保障の双方で水素以外に解決法があるなら、とっくにFCVの研究開発はやめている」と言い切る。

 水素社会実現には産業政策という現実的な側面もある。国内企業が持つ水素・燃料電池関連の特許は世界一だ。とくにトヨタ自動車、ホンダが持つ燃料電池、水素関連の特許の数と質の高さは他国の追随を許さないと言われる。

 自動車は日本を支える中核産業だ。だからこそ、「官民挙げてFCVの研究開発と普及に取り組む必要がある」(和光大学の岩間剛一教授)。しかも水素・燃料電池は家庭用、輸送、インフラなどを含めると国内の裾野産業は広がる。

 産業として成長すれば多くの雇用が見込めるうえ、水素発電やサプライチェーンの構築のために膨大な社会システムが必要になる。その先には「インフラのシステム輸出で新興国に売る」という壮大な夢もある。

「水素ムラの住人(水素推進派)は、15年を水素元年にする、と盛り上がり過ぎている」(民間の水素関連技術者)とささやかれるほど、水素への熱は高まる一方だ。

 たしかに水素・燃料電池に関する技術の多くは開発途中であり、本格的な水素社会の到来は20年以降になると見られている。とはいえ脱化石燃料、資源の輸入依存度低下は日本にとって見果てぬ夢だ。

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