2014年

9月

02日

ワシントンDC 2014年9月2日号

 ◇「レッドスキンズ」は蔑称か NFLチーム名で論争再び

 

堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 

「ワシントン・レッドスキンズ」は、プロアメリカンフットボールの最上位リーグであるNFL所属の老舗チームだ。そのチーム名といくつかのロゴマークを巡って、米国特許商標庁は去る6月、先住民グループの訴えを認め、その商標登録を却下する判断を下した。これが論争を呼んでいる。

 訴えは「赤い肌」を意味するレッドスキンズのチーム名が、米国の先住民であるインディアン民族に対する蔑称にあたるとの理由で起こされた。一方、チーム側は、1933年に当時のヘッドコーチで、かつ先住民であったウィリアム・ディーツ氏に敬意を表して付けられた名称であり、そこには愛着の意思こそあれ、差別の意図は全くないと主張した。

 今回の判断による商標の無効化は、そのままチーム名が使用できなくなることを意味するわけではない。だが、海賊版といったコピー商品に対しては法的措置をとることができなくなるため、経済的影響を危惧する声も聞かれる。

 ただ、チームオーナーのスナイダー氏は「差別的であるというのは全くの言いがかりであり、そのような意図はない。今さら過去数十年使用されてきた伝統あるチーム名を変更することは全く考えられない」と名称変更の可能性を否定する。

 実はこの問題は過去10年以上にわたって繰り返されてきた論争だ。99年にもいったん同様の判断が特許商標庁より下されている。

 

 ◇10年前は「差別に該当せず」

 

 その際にはチーム側が起こした不服申し立てにより、2003年の連邦地裁において「人種差別には該当しない」という逆転判決が下された。その後の控訴審でもこの判決が支持され、連邦最高裁判所も同年再審理を却下して現在に至っている。

 長年チームの商標関連の弁護士を務めてきたボブ・ラスコフ氏は、「今回も同様のことが起きただけであり、チームとしては何らの影響も受けない。我々は粛々と不服を申し立て、前回と同じ判決を得るだけである」とのコメントを発している。

 しかし、米国では多くの大学や高校といった教育機関で先住民にちなんだスポーツチームの名称を廃止する動きが活発化している。現在も約300万人ほどいるといわれるインディアン民族に対し、合衆国形成の歴史で与えてきた不当な強制移住や差別的な扱いの事実を真摯に受け止め、これに配慮すべきというのがその理由である。

 また、今回は政界有力者からの圧力も強い。オバマ大統領は昨年10月、「自分がオーナーだったら名称変更を考える」とコメント。今年に入ってからはリード上院院内総務をはじめとする50人の民主党上院議員が連名で、スナイダー氏宛てに名称変更を促す書簡を送った。共和党の重鎮、マケイン上院議員も名称変更を検討すべきとコメントしている。

 加えて、前回とは異なり昨今ではツイッターなどのソーシャルメディアが広く社会に普及している。チーム名改称を求める一般ファンからの声が以前にも増して多く聞かれるようになっている。仮に改称を余儀なくされた場合、他のプロスポーツのチームも影響を受けそうだ。具体的には、米大リーグのクリーブランド・インディアンズや、アイスホッケーのシカゴ・ブラックホークス(ロゴがインディアン)などが挙げられている。

 いずれも決して差別的な意図で付けられた名称やロゴではないと思われる。それでも多民族国家であるうえに、昨今の移民政策を巡る論争などを含めた人種意識の高まりの中で、政治も従来以上に気を使わざるを得ないのかもしれない。