2014年

9月

09日

経営者:編集長インタビュー 新井徹 森永製菓社長 2014年9月9日号

 ◇高品質をテコに海外展開を拡大

 

 1899年創業の森永製菓は老舗菓子メーカーとして、「ミルクキャラメル」や「小枝」「チョコボール」など数多くのロングセラー商品を生み出してきた。人口減による国内市場の縮小が見込まれ、海外で人気の「ハイチュウ」などを手がかりに、海外進出を進めている。

 

── 製菓業界の現状は。

新井 業界全体の需要はここ数年、ほぼ横ばい状態です。お菓子は生活に密着した商品なので、景気の影響は高級品などに比べ通常半年ほど遅れてきますが、まだ業界環境が良くなったという実感はありません。ただ、「チョコボール」のプレミアムライン「大人に贅沢チョコボール」や「ハイチュウ」の「ハイチュウプレミアム」など、従来品より単価の高い商品が売れるようにはなっています。

── 原料の価格高騰や円安の影響は。

新井 厳しいですね。円安要因に加え、カカオ豆や乳製品、砂糖など全て上がっています。前々期から前期にかけて原材料コストは約12億円増えましたが、今期(2015年3月期)はさらに23億~24億円増を見込んでいます。前期の営業利益は38億円でしたが、今期は原材料コストが利益を圧迫し、増収大幅減益の見通しです。

── コストカットや効率化にはどう取り組んでいますか

新井 原材料の見直しを進めています。品質や味は極力変えずに価格の安い材料に変えられないかということは常に研究しています。また、原料の安定確保のため、チョコレートの世界3大メーカーの一つであるスイスのバリーカレボー社とチョコレート原液調達の業務提携をしています。生産部門では、機械への置き換えや、3人でやっていた業務を2人にするにはどうすれば効率化できるかなど、一人一人の生産効率を上げる活動を全社運動としています。

 お菓子は値上げがなかなか難しい商品で、できる限り価格転嫁せずにいたい。ただ、単価の高いプレミアム商品に挑戦していることと、7月から一部の商品は価格据え置きで4~8%減量しました。原材料によっては2~3倍に高騰している状況ですので、お客様も理解していただいているのではと考えています。

── 消費増税の影響はいかがですか。

新井 想定よりはるかに少ないですね。昨年テレビの健康番組でチョコレートが取り上げられ、以降ずっと好調で、その影響もあるかもしれません。

 

 ◇米国でハイチュウ人気

 

── 「ハイチュウ」が米国の大リーグの選手の間で人気になって話題を呼んでいるとか。

新井 レッドソックスの田沢純一選手が好きで、チームメートに紹介したのが始まりと聞いています。それで評判を呼び、ヤンキースの田中将大選手もチームメートに配ったりしているということです。

 販売は非常に好調で、米国での売り上げは昨年倍増しました。そこでノースカロライナ州に工場を新設し、来年から米国で初めて現地生産を始める予定です。かつては米国でハイチュウを売ろうとすると、もっと甘くてサイズも大きく、鮮やかな色でないと売れないと言われたものですが、現在は日本と同じ味でも受け入れられるようになったと感じています。食のグローバル化が進み、現地に合わせて味を変える必要が少なくなってきました。

── 日本のお菓子は高品質の割には海外展開が進んでいません。

新井 主に子供が食べるものだからだと思いますが、お菓子は国内産が求められます。原材料費も高騰しており、高い人件費で作ったお菓子を輸出するのは価格設定の面でも難しいという事情もあります。ただ国内市場も飽和状態ですので、今後は海外展開に力を入れていきます。味付けの繊細さなど、日本のお菓子の品質なら世界で十分に戦えます。海外での売上比率はずっと2~3%で推移してきて、ようやく今期に1割に達しそうですが、3~5年後には3割程度に持っていきたい。

── これから進出したい国は?

新井 インドネシアです。2億4000万人と人口が多く、市場が大きくなっていく国です。インドネシアをイスラム教徒が食べられる食品「ハラル」のイスラム圏への輸出拠点にもしたいと考えています。

── 栄養補助ゼリー飲料「ウイダーインゼリー」など売上高の約13%を占める健康食品は今後どう伸ばしますか。

新井 飲料メーカーや食品メーカー、製薬会社などさまざまな業種が参入していて、非常に競争が厳しい分野です。ただ当社は約20年前、ウイダーインゼリーをゼリータイプの飲料のさきがけとして発売し、シェアナンバーワンを続けています。ゼリーを軸として健康関連の商品を広げて、第二、第三のウイダーインゼリーを早期に作るのが目標です。

── 新製品開発と定番商品のバランスは。

新井 日本の消費者は新しい商品に敏感なので、常に新しいものを出し続けていないと飽きられてしまう一方、定番商品も大事にしていかなければなりません。商品開発では違う業界からの協力や外部の方の知恵をお借りすることも増えました。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 無我夢中に与えられた仕事をしていました。プロダクトマネジャー制度など社内で新しい組織ができるとあてがわれることが多かった。新しいことに面白がって取り組んでいましたね。

Q 最近買った物

A 遅まきながらワインの勉強を始めまして、本を何冊か買いました。ワイン教室にも通っています。

Q 休日の過ごし方

A 主にゴルフですが、最近フライフィッシングを初めて体験して楽しかったので、はまりそうな気がします。

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 ■人物略歴

 ◇あらい・とおる

 群馬県出身。1973年早稲田大学理工学部卒業後、森永製菓入社。広報・IR部長兼広告部長などを経て09年6月に取締役。常務を経て13年6月から現職。64歳。