2014年

9月

16日

特集:円安インフレが来る 第2部 歴史に学ぶインフレ 昭和恐慌の歴史 2014年9月16日特大号

 ◇「成功のうちに危機が宿る」高橋財政の失敗に学べ

 

井手英策

(慶応義塾大学経済学部教授)

 

 大胆な金融緩和、積極的な財政出動、円安に支えられた輸出ドライブ──アベノミクスの核となるこれらの政策は、歴史的にはそう目新しいものではない。1930年に起きた昭和恐慌期に実施された高橋是清のユニークな経済政策、いわゆる高橋財政に同様の政策パッケージが見いだされるからだ。

 確かにアベノミクスと高橋財政は似ている。それもそのはず、両方とも典型的なケインズ政策だから、政策が似通うのも当然だ。だが、両者の置かれた歴史条件を比べると、その違いは明白である。

 アベノミクスでは、日銀の量的質的緩和を異次元の緩和と呼んだ。だが、通貨システム自体を転換させた高橋から見れば、これは異次元でも何でもない。高橋は蔵相就任と同時に戦前の支配的通貨レジームであった金本位制度を停止し、大胆に発券制度改革を行うことで、通貨制度を管理通貨制度に移行させた。………