2014年

9月

16日

経営者:編集長インタビュー 貝沼由久 ミネベア社長 2014年9月16日特大号

 ◇超精密加工と大量生産技術が強み

 

 ベアリング大手のミネベアの業績が急拡大している。ベアリングは、車や家電などの回転部を支える部品で、同社の主力商品である極小ボールベアリングは、世界シェアの6割を占める。さらに最近はスマートフォン用LEDバックライトの成長が著しく、業績を牽(けん)引(いん)している。

── 2014年3月期の営業利益321億円は前期比3倍、株価もこの1年で3倍になりました。

貝沼 09年に社長に就任してから12年までの4年間は、主力工場があるタイでの洪水被害(11年)や東日本大震災、円高、アジア通貨高など外的要因にずっと悩まされてきました。そのなかで、携帯用震動モーターやパソコン用キーボードなど赤字事業を廃止するとともに、生産性の改善、コストダウンなど製造業としてやるべきことは全てやりました。

 一方、やむにやまれぬ状況に追い込まれて取り組んだこともあります。赤字事業だったHDD(ハードディスクドライブ)用スピンドルモーターの生産体制の見直しです。長年の経営課題でしたが、タイ工場の洪水被害をきっかけに機械を入れ替え、生産体制も見直しました。それもあってスピンドルモーター事業が黒字に改善しました。

── 創業事業のベアリングの市場は今後も伸びますか。

貝沼 人々の生活水準が上がると、ボールベアリングへのニーズが高まります。掃除機や冷暖房などの家電製品やOA機器、車、銀行のATMなどあらゆる機器に使われています。機械が複雑化するほど必要になる。例えば一般的な国産車では約20個使われていますが、ドイツの高級車種には約45個使われています。また、新興国の経済成長によって需要が急カーブで伸びています。月平均の外販目標を1億5000万個に置いていましたが、すでに1億4800万個の月もあります。

 航空機用ベアリングも好調で、世界シェアは50%を占めます。航空機用ベアリングは、機械加工品も付けて複合品として出しています。複合化(モジュール化)は、供給先が取り付けが簡単になるので喜びますし、当社も付加価値が高まるので積極的に推進しています。

── モジュール化以外の技術力の源泉は?

貝沼 ベアリングの構成部品からそれらを作る工作機械まで、自社で全てを作る垂直統合型の一貫生産がミネベアの特徴です。さらに、世界最小の直径1・5ミリのボールベアリングを可能にした超精密機械加工技術と、その大量生産技術が当社の強みです。

 電子部品と違って機械加工のベアリングは、アナログ技術のノウハウの塊です。長年コンスタントに投資をしてきた結果、減価償却が終わった工場も多く、他社が今から参入しようとしても厳しいでしょう。

 

 ◇LEDバックライトが好調

 

── スマホの液晶ディスプレーに使われるLEDバックライトは、オムロンと世界市場を二分する存在です。

貝沼 LEDバックライトの今期の売り上げは前期比3割増の予測を出していますが、実際は倍増すると見ています。中国のスマホメーカーで急速に高級機種へのシフトが進み、当社の高品質製品へのニーズが高まっているからです。

── そもそもLEDバックライトに参入したきっかけは。

貝沼 金型や射出成形の技術が必要なところはベアリングと一緒で、ベアリングの技術を転用しています。そこに、薄型化、大量生産のノウハウが付加されています。

 当社の事業は現状、LEDバックライトなどの電子機器事業が約6割、ベアリングなどの機械加工品事業が約4割の構成比です。それぞれの事業が景況の波を補う、よい事業ポートフォリオが構築できています。

── 海外戦略は。

貝沼 13カ国に35の生産拠点があり、生産高の約9割は海外です。なかでもタイ工場は、1982年に操業を開始し、グループ全体の約50%の生産を担う主力工場です。ただしタイでも賃金が上昇してきたので、11年に「タイ・プラスワン」としてカンボジアで生産を開始しました。

── 今後の注力分野として照明器具と計測機器を挙げています。

貝沼 照明器具では今年4月、岩崎電気(東京都中央区)やコイズミ照明(大阪市)と、スマート・シティー用の照明設備を開発する合弁会社を設立しました。当社のLEDバックライトや無線ネットワーク技術と、2社の技術を持ち寄り、例えば街路灯なら歩道と車道だけを照らす効率的で省エネタイプの次世代の照明器具を開発していきます。

 計測機器では、橋の各部に取り付けて老朽化を監視する圧力センサーを開発しました。それまで50キロの圧力がかかっていたのが30キロ程度しかかからなくなると、ボルトが緩み劣化していることが事前に察知できます。

 ベッドに体重計などの計測機を組み込む研究もしています。人工透析による除水で患者がどれだけ体重が減ったかを寝たまま測れたり、高齢者がベッドから離れたのをセンサーで検知して知らせる。あるいは寝るだけで日々の体重をスマホに自動的に送信して管理する。スマホが生活の中心になることを前提に、当社の要素技術をかき集めて、世の中が必要とする製品を出していきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 32歳までニューヨークなどで弁護士として働いた後、妻の父親の高橋高見会長(当時)に誘われ当社に入社しました。ところが半年後に高橋会長は突如亡くなりました。入社当時は、日米の会社組織の違いに戸惑いの連続でした。

Q 最近買ったもの

A ニューヨークに行った際に、今年5月に生まれた孫のベビー服をたくさん買いました。

Q 休日の過ごし方

A 無趣味なので、買い物や、スポーツクラブに行っています。土曜日はお客様とのゴルフが多いです。

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 ■人物略歴

 ◇かいぬま・よしひさ

 東京都出身。1978年慶応大学法学部卒業。87年米ハーバード大学ロースクール法学修士課程修了。88年ミネベアに入社し取締役法務担当。2006年ミネベア・松下モータ(現ミネベアモータ)社長などを経て、09年4月から現職。58歳。