2014年

9月

23日

ワシントンDC 2014年9月23日号

 ◇米商務省の判断で白熱する国産原油の輸出解禁議論

 

篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)

 

 1975年から続いている国産原油輸出規制の解禁を巡る議論が米国で続いている。議論に拍車をかけたのが、米商務省が6月にテキサス州の石油関連会社2社に下した判断だった。

 その2社とはパイオニア・ナチュラル・リソーシズと、エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ。商務省は、蒸留装置での処理という最小限の工程を経たコンデンセート(超軽質原油)を「石油精製品」と解釈し、現行規制の枠内において輸出を容認した。

 米国では第1次石油危機を契機に成立した「1975年エネルギー政策・保存法」により、カナダの国内消費向けなど一部例外を除くと、原則、未精製の国産原油輸出を禁止している。ただ、加工済みの石油精製品(ガソリン等)については輸出が可能となっている。

 コンデンセート輸出容認を受け、原油輸出反対派のエドワード・マーキー上院議員(民主党)らは早速、商務省に詳細説明を求めた。輸出に回ることで米国内の原油供給量が減り、それによる原油価格上昇の懸念を抱く石油精製業界や環境保護団体らも、反対姿勢をさらに強めた。

 このような声を受けてか、商務省のハーシュホーン次官(産業安全保障担当)は8月上旬、貿易関連の会報で、「原油が一度加工されれば、厳密にはもはや『原油』ではない」と初めて公式に説明した。そのうえで「原油輸出に関する政策は変わっていない」と強調している。

 

 ◇次期政権で解禁との予測も

 

 米国内ではシェールガスから収益性の高い軽質原油のシェールオイル(タイトオイル)へと開発のシフトが加速している。米国のシェール開発で生産される原油のうち、超軽質原油のコンデンセートは、テキサス州のイーグルフォード・シェール層を中心に近年、急激に増産されている。2014年の米国のコンデンセート生産量は1日当たり約120万バレルと、2年前より倍増。18年には約160万バレルにまで増加するとの予測もある。

 米国石油協会、石油業界は原油輸出を働きかけ、ワシントンでロビー活動を活発化させてきた。輸出推進派のマコウスキー上院議員(共和党)は今年1月に原油輸出解禁に向けたロードマップを提案。原油輸出解禁の第一歩になるよう、商務省にコンデンセート輸出容認を働きかけていた。

 コンデンセート輸出容認もあって、原油輸出解禁議論は活発になる一方だ。また、米エネルギー情報局は、国内ガソリン価格への影響など、原油輸出解禁がもたらす影響等についての一連の調査結果を14年末までに公表する予定である。ただ、ワシントンでは、14年中は解禁議論に大きな進展はないとする見方が多い。

 その一人が『探求──エネルギーの世紀』の著者として知られるダニエル・ヤーギン氏だ。11月の中間選挙を控えて、政策関係者はガソリン価格に影響を与えるような言動を控えるため、政策面で大きな変化は期待し難いとの見方を示す。フレッド・アプトン下院エネルギー商業委員会委員長(共和党)も、「検討に時間を要するため、原油輸出規制は来年も存続するだろう」と発言。「オバマ大統領の任期中は法改正を伴う全面解禁に踏み切る可能性は低い。17年以降にならないと原油輸出は解禁されない」との見方もされている。

 原油輸出の解禁は、日本などアジアへの影響も大きいだろう。新たなインフラやプラント建設需要の変化、北米での原油パイプラインや鉄道輸送整備需要など、多方面に波及効果がある。今後の動向を注視しておきたい。