2014年

9月

23日

経営者:編集長インタビュー 脇田栄一 ラ・アトレ社長 2014年9月23日号

 ◇中古マンション再生を核に事業再構築

 

── 不動産業界では新築分譲や仲介など、ある分野に特化する会社が多い中で、多様な事業を展開していますね。

脇田 1990年の設立当初から、一つの事業に特化しない「脱特化型」戦略を掲げています。さまざまな事業を行うことで、その時々の市場の変化に適切に対応するためです。現在は大きく、①新築の分譲マンションなどを開発する「新築不動産販売事業」、②中古マンションをリノベーションする「再生不動産販売事業」、③賃貸物件を管理する「不動産管理事業」、④仲介を含めた「不動産ソリューション事業」──の四つの事業があります。

── 現在の売上高の構成は?

脇田 全社の売上高を10とすれば、大まかに新築不動産販売が4、再生不動産販売が4、不動産管理が2、残りが不動産ソリューションという比率です。それぞれの事業をバランスよく手がけ、着実な成長を目指しています。実は、中古マンションのリノベーションは、当社がパイオニアなんですよ。設立時から、中古物件を安く買い取り、内装を変えたりして販売していたのが、2000年代に入って広まっていきました。

 

 ◇将棋の元「奨励会」

 

 不動産業界を激震させた08年のリーマン・ショック。ラ・アトレも一時、事業不振に見舞われ、09年3月期に10億円超の最終当期赤字を計上。ピーク時に100億円近くあった売上高は、13年12月期は25億円へと縮小した。ラ・アトレが再起を図る中で、当時の岡本英社長が12年、次のトップにと白羽の矢を立てたのが、20歳から自らの会社で分譲マンションの企画・開発などをしていた脇田さんだった。

 

── 10代の頃は、将棋のプロ棋士を目指す「奨励会」に所属していたそうですね。

脇田 将棋は腕に自信があったのですが、羽生善治さん(現名人・王位・王座・棋聖)ら並み居る天才と同世代。早々に「この世界ではトップは取れない」と絶望感を味わいましたね。父が建設会社を経営していたこともあり、20歳からアパートなど不動産投資を始めました。その後、分譲マンションの設計や企画もするようになりましたが、自ら資金調達して不動産開発をしてみたいと考えていた時、知り合った岡本社長から打診を受けたのです。

── どのように事業を再構築してきたのですか。

脇田 社長に就任後、創業当時からの事業である再生不動産販売を核に再建を進めました。特に、再生不動産の事業はそれまで関東の1都3県で展開していましたが、東京の都心5区に絞り込むことにしました。事業エリアを拡大していく他社とは逆の戦略で、販売戸数は当然減ることになります。その代わり、1戸当たりの単価を引き上げ、利益率の向上を狙ったのです。

── なぜ高い利益を出せるのですか。

脇田 いつの時代も変わらない不動産の普遍的価値は、ロケーション(立地)にあります。例えば、赤坂迎賓館近くの元赤坂(港区)という立地では、新築分譲マンションの供給は限られ、単価も非常に高くなります。ですから中古であっても、利便性の高い元赤坂にマンションを持ちたいというニーズは根強いのです。こうした不動産の普遍的価値を的確に見極め、いかに安く仕入れることができるかがカギとなります。

 

 ◇新築販売は立地厳選

 

── 20年には東京五輪も控えます。不動産市況や金融環境は。

脇田 東京の湾岸エリアが活況ですが、不動産の普遍的な価値は変わりません。湾岸エリアの活況も一時的でしょう。一方、我々の不動産業界の景況感を大きく左右するのが、調達金利の動向です。現在はアベノミクスによって超低金利の状況で、事業ができないわけはありません。

 ただ、建築費の高騰は頭の痛いところです。ゼネコン大手の既存下請けの人件費自体はそう上がっていないのですが、今まで取引のなかった新規の受注はどれだけ値段を上げても人を集められません。建築資材の価格も上がっています。そのため、新築不動産販売は立地を厳選して慎重に進めながら、現在は再生不動産販売に注力しています。

── 今後の事業の目標は。

脇田 利益面での貢献が大きい事業は、自社保有の物件から得られる不動産管理です。当社の保有する固定資産は13年12月末で約26億円ですが、これを60億円に引き上げて不動産管理事業の売上高を年間5億~6億円とし、収益を安定させたいと考えています。そのため、現在は増資などによって純資産の引き上げを図っており、13年12月末の純資産約5億円を早期に30億円まで引き上げます。これをベースに、新築や再生の不動産販売を合わせ、売上高50億~60億円を目指していきます。

 来年は当社も創業25周年。この間、さまざまな浮き沈みも経験しました。好況の時こそ慎重に、そして不景気になれば攻めていけるよう、コアの事業を堅実に進めながら、さまざまなチャンスを狙っていきたいです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 365日、毎日ずっと仕事をしていました。平日は分譲マンションの開発業者と打ち合わせ。週末は朝一番からマンションのモデルルームを見に行き、パンフレットを集めてマンションの企画・設計の研究をしていました。

Q 最近買ったもの

A 都内で投資用のマンションを買いました。不動産業界では、自分でも投資をしなければ、事業の感覚が鈍ってしまいます。

Q 休日の過ごし方

A 仕入れた中古マンションの現場を見に行きます。年間60戸ぐらいあるので、結構大変です。夜はおいしいものを食べ、お酒を飲みます。

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 ■人物略歴

 ◇わきた・えいいち

 1968年生まれ。東京都出身。89年4月マックス企画設計代表取締役。96年に東洋大学経営学部中退。2012年2月にラ・アトレレジデンシャル取締役に就任。ラ・アトレ副社長兼不動産管理部長を経て、13年3月から現職。46歳。