2014年

9月

30日

経営者:編集長インタビュー 豊﨑賢一 あきんどスシロー社長 2014年9月30日特大号

 ◇IT導入で新鮮ネタを安く提供

 

 回転寿司最大手「あきんどスシロー」は大阪で創業し、現在全国に372店舗(8月末現在)を展開している。全店舗1皿100円(税抜き)の均一価格で客層の中心であるファミリー層を引き付けているが、1皿180円(同)の価格帯にも挑戦し、嗜好(しこう)の多様化に対応している。ネタの鮮度にこだわり原価率は50%という高さの一方、寿司が回るレーンをIT管理するなどコストダウンに取り組んでいる。

 

── 2013年9月期の売上高は1193億円と過去最高で、14年9月期も好調だとか。

豊﨑 店舗数を増やしていることも大きいですが、当社はヘビーユーザーの割合が高い。消費増税後も変わらず来店してもらっています。力を入れているのはお客様の嗜好に合わせた寿司の多様化です。同業他社では麺類やデザートなどサイドメニューを強化してファミリーレストランの要素を増やしていますが、当社は寿司屋という原点を大事に、傾きすぎないように注意しています。

 シニア層の来店が増えたことから、昨年、「吟味ネタ」という1皿180円の価格帯も全店に導入しました。デフレで値上げが難しい状況が続いてきましたが、高齢化で状況が変わってきています。平日の昼間を中心に来店されるシニア層は、枚数をたくさん食べるわけでないので、1皿の値段が上がっても価値があるものなら受け入れられると考えました。ただ、高すぎてはいけない。12年9月期に1010円だった平均客単価が13年9月期は1036円になりましたが、1200円にするのは難しいでしょうね。

── 鮮魚から店に出すまでの過程はどうなっているのですか。

豊﨑 当社は、外食大手では常識の食材の調達と加工を集約させる「セントラルキッチン」を持っていません。一度導入したのですが、セントラルキッチンを経由すると、冷凍・解凍を繰り返して味を落とすことになるので廃止しました。魚が水揚げされる産地で当社の店舗に合ったオリジナル加工をして各店に配送。魚はできるだけ各店舗でスライスしています。シャリ玉を握っているのはすべてロボットです。

 

 高い原価率を支えるコストダウンのために02年に取り入れたのが、レーンに出す寿司の数や種類を管理するITシステムだ。寿司皿にICチップを付け、時間ごとにどのネタが何皿食べられているのかをデータ管理している。厨房には1分後と15分後にどのネタをどれくらいレーンに流せばいいか予測数値が表示され、店員はそれを見て皿の枚数などを判断していく。

 

── ITシステムの効果は?

豊﨑 レーンに流すネタと数は、店長の経験や勘に頼っていましたが、人間がやると廃棄率は高くなる。かつては10%ほどでしたが現在は平均4%です。また、入店時にお客様に大人と子供の人数を入力していただいており、どの時間帯にどれくらい入店して、お子さん連れがどれくらいかなどのデータも集約しています。

ファンド傘下で再生

── 人材確保や育成にどう取り組んでいますか。

豊﨑 人材育成には、タブレット端末を使ったeラーニングを導入しています。店舗運営や材料の仕込みのやり方など、同じツールを使うので統一した人材育成ができます。

 飲食業の社員の離職率は平均30%くらいですが当社は12%です。一方アルバイトは60%くらいです。仕事が嫌になって辞めるのをいかに減らすか。研究を重ね制度の改善に努めています。

 

 創業一族が大手外食チェーングループに持ち株を売却した“お家騒動”をきっかけに、07年8月に日系投資ファンドのユニゾン・キャピタルの出資を受けて傘下に。その後業績は上向き、12年9月に欧州系のペルミラ・アドバイザーズに売却された。

 

── ファンド傘下に入り何が変わりましたか。

豊﨑 会議が英語になったくらいです(笑)。要は考え方だと思います。ファンドが自社の利益ばかりを求めれば悲惨なことになりますが、ファンドの目的は会社を大きくしリターンを得ることで、我々と同じです。成長の課程ではさまざまな軋轢(あつれき)もありますが、「成長痛のない成長はない」と前向きに考えています。

── 11年に韓国に出店しました。今後の海外展開は。

豊﨑 韓国はなかなか難しいですね。海外進出は長い目でみると必須だとは思いますが、現状では、国内にまだ出店していない地域があります。売り上げを20年までに2000億円に伸ばすことを目指しています。それには国内であと280店舗ぐらい増やす必要があります。

── 現在は郊外型店舗が中心ですが、都心部への出店は。

豊﨑 東京の都心は賃料が高いので現在のモデルでは進出できません。いま、東京のお客さんが驚くような商品提供モデルを考えているところです。寿司には男の食べ物というイメージがあるかもしれませんが、女性にもたくさん来ていただける店舗にするつもりです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 最初は職人を目指していましたが、28歳で取締役になり、会社経営に関わっていました。

Q 最近買ったもの

A 出張先で社員へのお土産に、桃を30~40個買いました。

Q 休日の過ごし方

A 子供のスポーツ観戦や、妻と買い物へ行ったりしています。買い物は食べ物がほとんどですね。

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 ■人物略歴

 ◇とよさき・けんいち

 徳島県出身。1984年辻調理師専門学校卒後、「鯛すし」(現あきんどスシロー)に就職。92年取締役就任。仕入部長、営業部長などを経て09年6月から現職。49歳。