2014年

10月

07日

経営者:編集長インタビュー 西尾弘之 リンテック社長 2014年10月7日号

 ◇粘着と剥離の技術を多岐に展開

 

 粘着素材大手のリンテックは、ガムテープメーカーのFSK(旧・不二紙工)を母体に1990年、四国製紙と創研化工が3社合併して現在に至る。半導体製造時に使われる粘着テープの好調などで2015年3月期は売上高2100億円(前期比3・3%増)、営業利益160億円(同16・2%増)と2期連続の増収増益を見込む。

 

── 事業が多岐にわたります。

西尾 六つの事業部門があります。そのなかで最も大きく、全売り上げの26%を占めるのが食品や文具、車、家電などさまざまなものに貼るラベル用粘着紙を中心とする印刷・情報材です。冷凍食品や車のエンジン部など、どんな過酷な環境でもはがれないための粘着材や粘着フィルムの設計やノウハウの蓄積が当社の強みです。

 また、屋外看板や車体のロゴなどに使われるフィルム、建物の内装用化粧シートも手がけています。自動車向けもあり、ドアサッシ塗装の代替となるフィルムや納品後にはがすアルミホイール用保護フィルムなども手がけています。これら「産業工材」分野が売上高の16%を占めます。

── 半導体関連が好調とか。

西尾 事業として大きいのは、半導体製造用の粘着テープと半導体関連装置です。直径30センチくらいの薄いシリコンウエハーを微少のチップに加工していくとき、レーザーなどで切ってもバラバラにならないようにウエハーの裏面に当社の粘着テープを貼ります。切った後は紫外線を当てることで粘着性がなくなりつまみ出しやすくする。そういうテープです。

 一方、最先端では、ウエハーを切った後に多少の粘着性をわざと残す方法もあります。半導体を機器に実装する際に、その粘着性を利用することで粘着ペーストを塗る作業工程を減らすことができる。半導体分野では粘着や剥離のさまざまな応用技術が進んでいます。

 また、スマートフォン1台に500~600個搭載される積層セラミックコンデンサーを製造する時に必要な剥離フィルムもつくっています。1ミリ角にも満たない非常に薄くて小さいセラミックコンデンサーのなかに100層以上ものセラミックシートを重ねていきます。その極薄のセラミックシートは、当社の剥離フィルムに半導体企業が誘電体(電気の絶縁体)ペーストを塗り、乾燥させることでつくられるのです。

 

 スマホ向けが中心の液晶ディスプレー分野では住友化学とタッグを組む。住友化学がつくる偏光フィルムにリンテックの粘着加工が施される。最大の競合は日東電工。LGディスプレイ向けの販売が主のLG化学(韓国)を除けば、「住友化学・リンテック連合」と日東電工がグローバル市場の2強だ。

 

── 炭素繊維の製造にも関わっています。

西尾 炭素繊維をシート状に加工する際に必要な工程紙を提供しています。炭素繊維は、テニスラケットやゴルフシャフト、釣り竿(ざお)などのレジャー用が中心でしたが、近年になり航空機用が加わりました。航空機向けの売り上げは、前期に前々期比で5割近く伸び、この4~6月期も前年同期比で10%近く伸びています。

 あと、旧四国製紙の流れを受け継ぎ、カラー封筒用紙や色画用紙のほか、特殊機能紙もつくっています。クリーンルームでも使えるちぎってもホコリが出ない無塵紙(むじんし)やハンバーガーやフライドポテトを包む耐油紙などです。

── 用紙やラベル用粘着紙などは爆発的な伸びは期待できない分野です。今後の事業ポートフォリオは?

西尾 確かに用紙事業などは大きな伸びは期待できませんが、機能の高度化などでまだまだ新製品を出す余地はあります。事業領域の広さが当社の強みです。電子部品業界が軒並み赤字になったリーマン・ショック時にも、当社は赤字になりませんでした。自動車や携帯端末の市場環境が悪いときには、食品向けラベル素材が下支えしたりする。安定的に稼ぎ、そこで得た資金を成長分野の電子・光学に向けていく。こういうスタイルを続けていきます。

 

 ◇目指すはガラス代替材料

 

── 注力する新規事業は?

西尾 スマホやテレビなどの液晶パネルにはガラスが使われていますが、軽量化のためにフィルム素材の開発が続けられています。ガラスとほぼ同様の透明性や水蒸気を通しにくい性質を兼ね備え、かつ柔軟性のあるフィルム材料です。今年4月から始まった16年度までの中期経営計画でも注力分野と位置づけ、販売できる体制で動いています。

 あとはカーボンナノチューブです。この分野で世界をリードする米テキサス大学と共同で「曲げや引っ張りに強く、電気をよく通す」というカーボンナノチューブの性質を損なわずに薄いシート状に加工する技術を開発してきました。16年度中に、電気自動車用蓄電装置の電極材などへの活用を目指しています。

── 中期計画ではM&Aの推進も打ち出しています。

西尾 一番欲しいのは、東南アジアにおける販路を持っている同業企業です。現在36%の海外売上比率を16年度までに販路拡大で40%に引き上げる目標です。豊富な手元資金を次なる成長に向けて活用していきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 1990年から96年まで米国の子会社マディコに出向していました。設備畑出身として、投資効果を考えるという発想をそこでしっかり身に着けました。

Q 最近買ったもの

A トイプードル(小型犬)。すでに1匹飼っていたのですが、自宅近くのペットショップで長い間売れ残っているのがかわいそうになり買いました。

Q 休日の過ごし方

A 時間があれば推理小説を読みたいのですが、社長になってからはビジネス書ばかりを読んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇にしお・ひろゆき

 北海道出身。1978年室蘭工業大学工学部卒業後、不二紙工(現リンテック)入社。米国・マディコ社出向、経営企画室などを経て2010年取締役経営企画室長。14年4月から現職。59歳。