2014年

10月

14日

特集:もめない遺産分割 2014年10月14日特大号

 ◇「田舎の実家」押し付け合い 増える遺産分割トラブル

 

桐山友一

(編集部)

 

「田舎の実家を誰も相続したがらないんですが……」

 遺産分割のトラブルは財産の奪い合いばかりでない。相続や不動産問題を中心に手掛ける「みずほ中央法律事務所」(東京都新宿区)ではここ数年、「田舎の実家」の相談がめっきり増えてきた。相続人の子どもは皆、東京など都会へ出たっきり。両親が亡くなった後、遺産分割で「いらない不動産」を互いに押し付け合い、トラブルに発展する例が後を絶たない。

 田舎の実家は売却しようにも、買い手がなかなか現れない。実家を相続しても将来、売却できる保証はなく、貸家にしても借り手がつかない。一方、不動産は所有するだけで毎年、固定資産税が発生する。そればかりか、誰も住んでいなくても建物の管理は必要だ。建物が崩れて近隣に迷惑をかければ、損害賠償を請求されるリスクもある。

 仕方なく複数の相続人が実家の土地を共有で相続。今度は固定資産税の負担や空き家の管理を巡って押し付け合う。やっと買い手が現れても、売却には共有者全員の合意が必要。「もっと高く売れるはず」「いま売らなければタイミングを逃す」ともめ始める。「遺言書が残っていればまだ、少なくとも誰が相続するかははっきりする」と同事務所の三平聡史代表弁護士は指摘する。

 

 ◇待ち構える相続増税

 

 遺産分割を巡るトラブルは年々増加している。「司法統計」によると、2013年の遺産分割事件(調停・審判)の新受件数は1万5195件と、10年前に比べ3割超も増えた。遺産分割のトラブルは、遺産の多寡にかかわらない。調停が成立するなどした13年の遺産分割事件のうち、遺産5000万円以下が実に75%を占めている。こうしたトラブルを生前に避けようと遺言書への関心も高まっており、公証人が作成する「公正証書遺言」の件数は9万6020件(13年)と10年前より49%増加した。

 さらに、来年1月からは相続増税も待ち構える。基礎控除が現在の「5000万円+1000万円×(法定相続人数)」から、「3000万円+600万円×(法定相続人数)」へと引き下げられ、課税対象者が大幅に増加する見込みだ。相続税は被相続人が亡くなった後、10カ月以内に申告・納付する。しかし、遺産分割協議がまとまらず、相続人それぞれの相続財産が決まらなければ、控除の大きな「配偶者控除」などが適用できなくなる。協議がまとまった後に相続税の還付を受けるとしても、高額の相続税を納付する可能性が多くの人に生じている。

 ずるずると遺産分割協議を続ければ、時間ばかりが過ぎていく。遺産分割に行き詰まる前に、一人ひとりが生前にしっかりと備える必要がある。