2014年

10月

14日

経営者:編集長インタビュー 大久保昇 内田洋行社長 2014年10月14日特大号

 ◇学校、オフィスの空間を変える

 

 内田洋行は1910年、南満州鉄道の社員だった創業者の内田小太郎が、中国・大連市に設立した測量器・事務用品の専門商社から始まった。戦後は理科教材を手掛け教育界に足場を築く一方、オフィス家具にも進出。現在は全国の小・中学校を中心に約4000校で使われるデジタル教育コンテンツのプラットフォーム「EduMall(エデュモール)」をはじめとした教育システム、小・中・高校と大学の教室や企業のオフィス構築、中小企業向けのERP(総合業務ソフトウエアパッケージ)、オフィス家具販売を事業の柱としている。

── 低迷していた業績が昨年は大きく回復しました。

大久保 長期的な視点で見ると、バブル崩壊以降、オフィス家具業界は低迷が続いています。2008年のリーマン・ショックも重なり、特に民間企業でのオフィス家具への投資がぴたりと止まってしまいました。さらに、中小企業向けの情報システムの構築の需要も激減しました。

 しかし、昨年は企業内のパソコンのOS(基本ソフト)である「ウィンドウズXP」の買い替え需要、さらに今年4月の消費増税前の駆け込み需要がありました。また、14年7月期は公教育分野への大型補正予算もありました。そのため、売り上げが最も大きい小・中・高校および大学向けのICT(情報通信技術)支援サービス部門の業績が非常に良く、同部門の売り上げは前年比で2割増えました。

── 教育事業が好調の一方、オフィス事業の落ち込みが利益を帳消しにしています。テコ入れは。

大久保 オフィス事業は赤字幅は縮少していますが、黒字基調にはまだ時間がかります。総需要もリーマン・ショック前の水準に戻っていません。そこで、ユーザーの視点に立って、教育とICTという今のリソースを組み合わせたサービス作りをしています。

── 早くから教育分野に力を入れていましたが、市場の拡大速度は想定より遅かったのでは。

大久保 私が学校教育のIT化ビジネスの立ち上げに関わったのは、今から30年前です。また、20年前の黎(れい)明(めい)期からインターネットの教育利用を模索していました。当時はもっと早く市場が大きくなると思っていました。実際、95年時点では、教育分野でのIT利用は日本がアジア諸国を完全にリードしていました。ところが、00年のITバブル前後から停滞が始まります。その間、韓国やシンガポールは教育への投資を増やし、日本は逆転されて今に至っています。私たちは早くからITに注目し、経済産業省などにも重要性を訴えていたので、非常に歯がゆい思いをしました。

── 今の少子化の流れは、向かい風ですか、それとも追い風ですか。

大久保 売り上げの95%は国内と完全に内需型企業なので、少子化はマイナス要因です。しかし、日本がグローバル社会で生き残るためには、少子化を跳ね返さなければいけません。その点で私たちが貢献できるのであれば、少子化はプラス要因と見ることもできます。バブル崩壊で止まった教育への投資が、数年前から徐々に戻ってきています。その中で、私たちがこれまで取り組んできたことが改めて注目され、業績が伸びている面もあります。

 

 今、内田洋行が最も注力しているのがICTを駆使した教室作り。本社ビルに設置したモデル教室(写真)は、教室の三つの壁の全面がそれぞれ巨大なホワイトボードになり、巨大な世界地図や原寸大の動物、モノなどを映し出すことができる。これによって、生徒の視覚に訴える授業が可能になり、学習の自由度も上がると期待される。同社は、プロジェクターやカメラなどICT機器を組み込める「スマートインフィル」というフレームシステムを開発し、特許を取得。各学校や企業に普及させようとしている。

 

 ◇教育改善に取り組む

 

── スマートインフィルによって視覚的な授業ができますね。

大久保 個々の製品は他社製もありますが、当社がコンセプトを提供し、全体の設計を行います。ICTの力で、これまでの黒板の方向だけを向いた授業ではなく、生徒同士がコミュニケーションしやすい授業ができます。これは企業でも同じです。会議室が変われば、よりクリエーティブな意見が出るかもしれません。スマートインフィルの導入費用は、遠隔会議システムや電子黒板、共同学習用ソフトウエアなどを組み込んだ「フューチャークラスルーム」仕様の場合、1教室当たり2000万円程度で、設置時の天井の改修の度合いで異なります。

── 今後の戦略は。

大久保 現在、オフィス家具業界の大手4社の中では最もシェアが低いですが、教育分野ではトップです。IT製品と机・椅子などオフィス家具の両方を手掛けている強みを生かし、「教育の質の改善」というニーズに取り組みます。今、学校も私たちの強みに気づき始めています。これを企業にも当てはめ、働き方の質を変える「チェンジ・ワーク」という提案を行っています。

── 理想のオフィス像は。

大久保 例えば、企画部門の社員に「机を片付けろ」と言うのは無理です。雑然としたまま帰って、次の日に出社したらアイデアが浮かぶということもあります。「それでもきれいに見えるオフィス」を提供したいです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか?

A 日中は営業マンとして案件を取り、夜は組合の副支部長も引き受け、仕事量が倍になり忙しかったです。

Q 最近買ったもの

A 出張先で小物をよく買います。押すとブーブー鳴く豚の置物など、変わったB級土産が好きです。

Q 休日の過ごし方

A 街角ウオーキングです。歴史と地理が一緒になっている史跡を巡り、長いときは8キロぐらい歩きます。

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇おおくぼ・のぼる

 京都大学工学部卒業後、1979年内田洋行入社。2003年取締役教育システム事業部長。14年7月、社長就任。60歳。