2014年

10月

14日

緊急特集:追悼・宇沢弘文さん 復刻論文 2014年10月14日特大号

 ◇社会費用を無視した保護育成 自動車政策は間違っている

 

宇沢弘文

(東大教授・理論経済学)

 

 東京大学名誉教授で世界的な経済学者であった宇沢弘文さんが9月18日、肺炎で死去した。86歳だった。宇沢さんは米スタンフォード大、シカゴ大などで数理経済学を研究。帰国直後に本誌1969年12月23日号に「資本自由化と国民経済 ―競争原理をめぐる理論的な検討―」を寄稿した。その後は市場原理を優先する現代新古典派理論に否定的な立場をとり、70年9月8日号での「自動車政策は間違っている」で、自動車政策を痛烈に批判した。この原稿の内容は74年に出版され、古典的名著とされる『自動車の社会的費用』(岩波新書)にもつながった。以後もたびたび本誌に寄稿し、格差社会や環境問題など社会問題に精力的に取り組んだ。今回、宇沢弘文さんをしのび70年の「自動車政策は間違っている」を再掲載する。

 ◇無制限な環境破壊

 

 日本でいま、いちばん問題になっている公害現象はなにかというと、環境の破壊あるいは汚染の問題であろう。環境破壊、つまり社会共通資本の破壊、減耗が無制限に行われて、非常に深刻な公害問題を起こしているのはなぜか。それは、やはり、現在われわれの住んでいる社会の経済的な仕組み、あるいは制度そのものに、大きな原因があるのではないかと思う。

 というのは、環境破壊とは、けっきょく自然的あるいは社会的な環境という、社会にとって共通の資本をみなが自由に使って、自由に破壊していることによって起きているからである。社会共通資本という場合、道路とか港湾とか電力といったような、いわゆる社会資本だけでなく、たとえば大気、河川、土地、海水といった自然資本も当然そのなかに含まれている。………