2014年

10月

21日

ワシントンDC 2014年10月21日号

 ◇大きな争点ない米中間選挙 勝敗決める接戦州の行方

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 米国議会は9月18日に2015年度の暫定予算案を承認した後、実質的に散会状態となった。上下両院の議員は11月4日の中間選挙に向けて選挙活動に入っている。
 今回の中間選挙では、下院の全435議席と上院100議席中36議席の改選が行われる。これまでの情勢では下院で共和党が多数党を維持することは確実と見られており、上院でどちらが多数党となるかが焦点だ。現在の上院の議席数は、民主党が55議席(民主党系無所属議員2人を含む)、共和党45議席で、改選対象は民主党が21議席、共和党が15議席となっている。

 これまでのところ、選挙に向けて全国で共通した大きな争点は見られていない。医療保険制度改革(いわゆる「オバマケア」)は、当初のシステム障害により批判が高まったが、その後は混乱の収束が見られている。また、「イスラム国」(ISIS)への対応では、オバマ政権の軍事力行使は米国民の支持を受けており、争点化する様子は見られない。世論調査では、経済・雇用が米国民の最も関心の高い論点となっているが、足元の米国経済は回復基調にあり、この点も大きな争点が見いだしにくい要因となっていると見られる。
 そのため、今回の中間選挙は「地方選」の様相を呈しており、個々の選挙区の状況に応じた争いになりそうだ。上院の多数党は、両党の支持が拮抗(きっこう)している個々の接戦州をどちらがどれだけ制するかにかかってくるといえる。

 ◇注目はカンザス州

 現下の専門家分析によれば、現職が共和党の州ではジョージア、カンザス、ケンタッキーの3州、現職が民主党の州ではアラスカ、アーカンソー、ルイジアナなどの8州が上院の接戦州となっている。共和党は、改選の現有議席をすべて守った上で接戦州から6議席以上を増やすという基本シナリオを描くが、ここにきてにわかに情勢が変化し注目されている選挙区がある。カンザス州だ。
 カンザス州は共和党の地盤で、現在の知事、連邦上下両院議員は全員共和党だ。また、同州選出の上院議員は1939年以来、共和党議員が続いている。現在のパット・ロバーツ上院議員は上院3期目、下院議員歴を含めると連邦議員歴33年のベテラン有力議員であり、予備選で「ティーパーティー(茶会)」系候補を破った後、再選は確実視されていた。
 しかし、8月末に実業家のグレッグ・オーマン氏が無所属で立候補して有力候補に浮上し、9月3日に民主党候補のチャド・テーラー氏が急きょ、立候補を取りやめることを表明したことで情勢が急変した。無所属ながら政策路線が民主党に近いオーマン氏に“一本化”すればオーマン氏が勝てる可能性が高いと読み、民主党側がテーラー氏に立候補取りやめを説得したと見られている。
 この結果、ロバーツ氏とオーマン氏の支持率は拮抗し、カンザス州の上院選は一気に接戦州へと変化した。このカンザス州の異変は、共和党の上院多数党奪回のシナリオを揺るがしかねず、共和党に衝撃を与えている。『ワシントン・ポスト』紙も「共和党の上院議員はスクランブル状態」との見出しで、一面でカンザス州の上院選挙の状況を報じており、その影響の大きさを物語る。
 米国の政治に関する主要世論調査を集計している「リアル・クリア・ポリティクス」のデータを見ても、今回の上院選挙での民主党・共和党の議席見通しは、ここ数カ月拮抗した状態が続いており、予断を許さない状況だ。今後、情勢は刻一刻と変化しうるが、カンザス州をはじめ個々の接戦州の動向から目が離せない状況だ。