2014年

10月

21日

経営者:編集長インタビュー 大塚紀男 日本精工社長 2014年10月21日号

 ◇高品質を大量生産できるのが一流

 国内最大手のベアリング(軸受け)メーカー。世界でもアジアを中心に65の生産拠点を持ちシェア3位(13%)に位置する。今期(2015年3月期)は、自動車業界の好調を受けて、主力の自動車向けベアリングが堅調な一方、ハンドル操作を容易にする電動パワーステアリングが伸び、株価は年初来高値を更新している。

── 売り上げの7割を占める自動車事業が追い風を受けています。
大塚 自動車市場は国内はそこそこですが、北米の回復や中国市場の拡大などで生産台数は毎年伸びています。その恩恵を当社も受けています。一方、過去数年取り組んできたコストダウンの成果が想定より前倒しで出ていて、売り上げの拡大に比べ、利益が大きく出ています。

── どんなコストダウンを?
大塚 日本企業としては若干残念ではありますが、海外での現地生産や原材料・部品の現地調達などの現地化を進めてきました。それと自動化です。中国や新興国でも人件費が上がっていますので、自動化で品質の安定とコストダウンの両立を地道に進めています。
── 残り3割の産業機械事業で強い分野は?
大塚 家電、パソコン、鉄鋼など幅広く展開していますが、当社に限らずどのベアリングメーカーも、自国の産業構造の強さ弱さに比例した得意、不得意があります。当社の場合、相対的に強いのは「軽いもの」で、家電製品に強いです。鉄道は、新幹線は強いのですが、通常の鉄道車両となると海外勢に分があります。
 最近回復しつつあるのは中国の高速鉄道車両や風力発電。またスマートフォン本体にはベアリングは使われていませんが、製造用の工作機械で需要が伸びています。
── ベアリングの競争力で重要なことは何ですか。
大塚 品質、コスト、供給力の三つがそろっていることが重要ですが、最も大事なのは品質です。当社では毎月1億5000万個から2億個のベアリングを製造しています。100個、1000個の良い製品をつくるのはそれほど難しいことではありませんが、グローバルに、それもコンスタントに月2億個の良い製品をつくれるのが一流メーカーです。そのためには生産技術や原材料の鉄の品質を維持する管理能力などさまざまな力が必要であり、新興国メーカーが一朝一夕に追随できるものではありません。
── ベアリングにおける新しいトレンドは?
大塚 自動車や鉱山機械などでは寿命までの間にベアリングの交換が何回か必要で、そのためメンテナンスの時期を正確に検知できる能力が求められるようになっています。それが分かればメンテナンスにかかるコストと手間を減らせ、顧客の生産効率向上につながるからです。
 具体的には劣化などを検知するセンサーをベアリングに付けます。そこから出る情報と過去のデータと突き合わせて寿命を予測します。ただ、鉄道や車両などは一つ間違えれば大事故につながりかねませんので、慎重に開発を続けています。
 さらに、ベアリング単体ではなく他の部品と組み合わせて売るシステム売りも一つの流れです。

 ◇1兆円企業目指す

── ベアリング以外に、電動パワーステアリングが絶好調です。
大塚 現状、ステアリングは油圧式から電動式への移行が加速しています。そのなかで当社は小型車など比較的小さな自動車に搭載される「コラム式」にほぼ特化していて、この分野のグローバルシェアは15~20%に達します。
 コラム式は構造上全長が短く、ボンネットの内側に搭載できます。そうすると水や汚れへの対応が少なくて済み、小型化、軽量化ができます。
 当社の電動パワステの最大の顧客メーカーは独フォルクスワーゲンさんで、同社が中国市場で躍進する波に乗り、当社の電動パワステも売り上げを伸ばしています。
── 海外戦略は?
大塚 売り上げの海外比率は14年3月期で62%です。本音を言えばもう少し国内で製造販売したいところですが、国内市場が縮小していて、顧客の要求も現地調達になっています。
 生産高も今期は国内比率が50%を切る見込みですが、売り上げほどには比率は下がらないでしょう。ベアリングに使う鉄は純度が高く海外調達は難しいからです。105~107円くらいの為替水準なら、鉄は国内で調達するのが最適です。
── 円安基調は、業績には追い風ですか。
大塚 現状では円安メリットのほうが大きいですが、さらに円安となると鉄鋼メーカーの原料輸入コストが上がってしまいます。その影響は当社にも出てきます。
── 16年の創立100周年に向けての課題は?
大塚 売上高1兆円(14年3月期8717億円)を目標としていて、そのためには月産2億5000万個が必要です。そのとき、本当に良い製品だけを取引先に納入するのはそう簡単なことではありません。製造過程だけでなく、設計段階からつくり込みをすることで品質を上げる、100周年までやらなくてはいけない課題はたくさん残っています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 31歳でフランスの販売法人に出向しました。仕事はリストラ。フランス人社員40人を解雇しなくてはならず、つらかったですね。38歳で帰国後は人事部で人事の国際化を担当しました。
Q 最近買ったもの
A 孫に教育費を贈与するため、教育資金贈与信託の手続きをしています。買い物ではありませんがお金の使い道としては大きいですね。
Q 休日の過ごし方
A 近所の介護施設にいる母親の見舞いに行きます。あとは家で本を読んだりして過ごしています。
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 ■人物略歴
 ◇おおつか・のりお
 東京都出身。1973年慶応義塾大学経済学部卒業、日本精工入社。経営企画本部長などを経て2002年6月に取締役就任。09年6月から現職。64歳。