2014年

10月

28日

経営者:編集長インタビュー 角倉護 カネカ社長 2014年10月28日特大号

 ◇1兆円企業に向け新製品比率拡大


 カネカは高シェア商品をそろえる樹脂事業、パン酵母など発酵技術に強みを持つ食品事業を中心に、有機EL材料、サプリメントの還元型コエンザイムQ10、かつらの合成繊維材料など幅広い事業領域を持つ。2014年3月期に5247億円の売上高を20年には1兆円まで伸張させる計画だ。


── 中期経営計画(14~16年度)では、最終年度に売上高を7000億円とする計画です。どうやって実現しますか。

角倉 当社には七つのセグメント(化成品、機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維)がありますが、このうち化成品、食品は売上高1000億円を超えており、さらに売り上げを伸ばします。

 900億円弱の機能性樹脂もやがて売上高1000億円を超えます。エレクトロニクスは電子材料と太陽電池の伸張が見込め、ライフサイエンスでも医療機器の拡販などで、将来的にはそれぞれ1000億円の売り上げが期待できます。

 これに加えて、全社的にグローバル展開や新製品を拡販することで、17年3月期に7000億円の売上高を達成することは可能だと思います。17年以降も、新規事業の立ち上げやM&A(企業の合併・買収)などで3000億円上乗せして、20年に1兆円を目指します。

── 主力商品のグローバル展開が進んでいます。

角倉 機能性樹脂の二つの商品が順調です。まず、塩ビ樹脂などの機能強化材が世界シェア50%以上を確保しています。これは水道管に使う樹脂パイプや樹脂サッシの品質強化に利用されています。生産拠点をグローバルで拡大しており、化学大手のBASF(ドイツ)やエボニック(同)から事業譲渡を受け、マレーシア工場の生産能力も1・5倍まで増大させました。

 もう一つは、建築材のサッシ取り付け部や外壁の隙間(すきま)などをふさぐために使う建築用シーリング材の原料樹脂です。日本で使われるシーリング材の原料樹脂の約40%のシェアを占めています。

 この原料樹脂は、日本、欧米が市場の中心でしたが、中国を中心にアジアで製品のプロモーションを行ったこともあり、中国の建築規格でも認められる見通しがつきました。現在、日本、ベルギー、米国に生産拠点がありますが、今後、アジアにおける生産拠点の建設も検討しています。


 ◇マレーシアに集中投資


── 今後3年間で1900億円の設備投資を計画しています。

角倉 ここ数年、塩ビ樹脂強化材や電子機器の主要部品であるプリント基板向け樹脂などマレーシアに集中的に投資をしました。さらに、この3年間でマレーシアに500億円以上投じて、カネカのマレーシアでの生産拠点を完成させるつもりです。

 例えば、今年2月には、かつら(ウィッグ)の合成繊維材料の設備投資を決めました。アフリカ女性が付けるウィッグでは世界シェアが50%以上あります。アジアだけでなく、アフリカやインド向けの輸出も念頭に入れています。

── ほかの千数百億円の使い道は。

角倉 マレーシアの投資が完成すれば、アジアの第二の拠点も考えなければなりません。さらに、中身は決めていませんが、米国への投資も考えています。シェール革命の影響でエネルギーコストの低減が進んでおり、10年後くらいには米国の人口は4億人になるともいわれています。

── M&Aは。

角倉 欧米が中心になります。特に、ライフサイエンスは研究開発の中心が米国です。当社が注力している再生細胞医療やカテーテル(医療用に用いられる中空の柔らかい管)事業などの案件を探しているところです。

── 17年3月期の海外売上高はどのくらいになりますか。

角倉 目標は47%です。現在の海外比率は36%で、食品事業の売り上げはほとんど国内です。こうした国内市場向けの売り上げを除けば、既に60%以上の海外比率を達成しています。さらに、今まで国内が大半だった食品事業も海外比率が高まりそうです。インドネシアで、「ヤマザキ」ブランドのパン向けに加工油脂製品を供給する工場が2月に完成しました。今後、アジアの製菓、製パン市場の拡大が見込まれ、この需要をとっていきたいと考えています。

 また、過去5年間に発売されたものを新製品と呼んおり、その比率は14年3月期の21%(売上高1100億円)から、17年3月期には36%(売上高2500億円)にする予定です。「選択と集中」が強調された時代もありましたが、今は多くの企業が新規事業を模索しています。「カネカさんはいろんな事業を持っていて、新製品のシーズが豊富で羨ましい」と言われます。カネカの強みは、ダイバーシティ(多様性)と言えます。

── 今後の経営の課題は。

角倉 海外比率も高まり、連結9000人のうち2500人は外国人社員です。今後の成長分野は海外ですから、そろそろマネジメントの中に外国人を入れ、グローバル展開に適した経営体制を作っていかなければならないと考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代はほとんどベルギーに居て、樹脂強化材の研究と技術サービスの仕事をしていました。国際舞台で活躍したかったので、入社前から、ベルギー勤務を希望していました。

Q 最近買ったもの

A ドライバーとスーツです。

Q 休日の過ごし方

A 基本はゴルフです。単身赴任なので掃除や洗濯など家事もやりますが、ハンカチのアイロンがけは苦手です。

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 ■人物略歴

 ◇かどくら・まもる

 大阪府出身。1987年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了後、鐘淵化学工業入社(現カネカ)。高機能性樹脂事業部長などを経て、2012年6月に取締役常務執行役員に就任。14年4月より現職。55歳。