2014年

11月

04日

経営者:編集長インタビュー 米山久 エー・ピーカンパニー社長 2014年11月4日号

 ◇生産者と直接契約の「高品質中価格」飲食チェーン


 契約農家や自社農場から仕入れた食材のメニューを売り物にする飲食チェーンのエー・ピーカンパニー。仲買業者を経ずに生産者と直結したビジネスモデルで地鶏や鮮魚を「高品質中価格」で提供している。宮崎県の地鶏料理のチェーン店「塚田農場」を主力店舗に、魚専門の居酒屋「四十八漁場」も展開し、全国に計191店舗(10月17日現在)を出店している。


── 農家との直接契約や自社農場などを着想したいきさつは。

米山 2001年にエー・ピーカンパニーを立ち上げて飲食店を経営するなかで、外食業界が内装や立地条件などで競争している現状に疑問を抱きました。仲買業者から仕入れる前の段階で何か消費者を喜ばせる企業努力ができないかと考えました。良いものを高く売る富裕層向けのビジネスか、海外産で低価格の競争をするか、そのどちらでもない「高品質中価格」で他との差別化を図れないかと考えてできたのが現在の形です。直接仕入れでコストは3分の1になりました。高級地鶏を仲買から仕入れると客単価は6000円はないと成り立ちませんが、3800円にすることができました。

── なぜ地鶏だったのですか。

米山 豚や牛は基本、肉の「格付け」で価格が決まります。地鶏はそういう相場がないので、企業努力する余地があると考えました。ただ、すでにブランド化されている地鶏は高い。全国を回って30種類くらいの地鶏を食べて見つけたのが宮崎県日南市などで生産されている地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」です。おいしいけどまだ知名度が低くて価格も比較的安い。これならいけると思いましたね。

── 生産者との関係は。

米山 自社農場で育てたヒナを農家に委託して、規格通りの鶏は全量買い取りするという形です。当初は自社農場を含めて4農家で始まり、彼らが利益を出しているのを見た他の農家も「自分たちもやりたい」と。約4年で13農家まで増えました。

 5年で約20店舗まで拡大しましたが、生産者を抱えたことで早く利益を出さないといけないと無理に出店したこともありました。出店が生産量に追いつかず、生産者から「約束と違うじゃないか」と詰め寄られ、“農民一揆”が起きそうなこともありました(笑)。逆に生産量が追いつかなくて何日か営業できなかったこともあります。店舗数と生産量がうまく連動できるようになったのはここ4、5年です。鶏の生産量に合わせて出店する飲食店なんて世の中に他にないのでは。

 いまは、野菜なども約8割は生産者から直接仕入れています。生産者の事業拡大のために出資や貸し付けをすることもあり、昨年ファンドを立ち上げました。


 ◇リピーター客をつかむ


── 会社立ち上げ時の資金繰りはどうしましたか。

米山 銀行借り入れです。地方は土地が安いこともあり、養鶏場なんて数百万円でできます。なのでそんなにリスクだと思わなかった。最初のうち、店舗は(店舗内に設備が残っている)居抜き物件を探して改装しました。立地条件の良くない物件が多かったのですが、自社農場という看板があったから成り立ちました。

 それと、農業やメーカー、商社の出身者を幹部クラスで登用しました。こうした人材が当社のビジネスモデルを支えています。

── 天候不順や鳥インフルエンザへの対応策は?

米山 これまで地鶏が被害を受けた事例はありませんが、リスクゼロではないので、契約農家を宮崎県内に分散し、北海道、鹿児島にも契約農家を増やしています。

── 店舗ではリピーター客の獲得に力を入れていますね。

米山 サービス券の配布や広告宣伝などで新規顧客の獲得にお金をかけるより、サービスに付加価値をつけ、「また来よう」と思ってもらえるようにしようと、スタッフにリピート率を高めることを意識させました。1テーブル当たり約400円分以内で独自のサプライズサービスをする権限を与えて工夫をこらさせています。顧客全体に占めるリピート率が上がると売り上げも安定します。率は55%くらいがちょうどいいですね。

── 14年3月期の売上高は157億円。中長期計画では1000億円を目標としています。

米山 6、7年後には塚田農場を350店舗まで拡大させ、400億円の売り上げを目指しています。それ以上増えすぎるのもブランド維持という観点ではよくありません。四十八漁場は50店舗、80億円規模が目標です。鮮魚はその日の朝水揚げした「今朝獲れ」をウリにしていて、それが可能なのは首都圏だけです。鮮度を落として全国展開することはしたくありません。

 そのほか肉・鮮魚の卸なども手掛けたい。あとは海外。12年にシンガポールに出店して、現在3店舗です。じとっこのがらスープを日本のプレミアムチキンスープとして打ち出しています。シンガポールを足場に、フィリピンやタイ、ベトナムなどでもパートナー相手を探しています。

 既存事業は出店が達成されれば成長は止まります。その後の成長のために海外や新規事業を仕掛けています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A エー・ピーカンパニーを立ち上げたのがちょうど30歳でした。大手飲食チェーンや業界で当たり前のように行われていることとは違う方法があるはずだと、今までにない価値を模索していた時期でした。

Q 最近買った物

A iPhone6を買いました。

Q 休日の過ごし方

A 会社の保養所に特別注文したバーベキューの鉄板セットがあり、私が焼いた肉を友人や社員らにふるまったりしています。素材を生かした食べ方に凝っています。

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 ■人物略歴

 ◇よねやま・ひさし

 東京都出身。不動産業、海外挙式のプロデュース業などを経て、2001年エー・ピーカンパニーを設立。12年9月東証マザーズに上場、13年9月に東証1部へ市場変更。43歳。