2014年

11月

11日

ワシントンDC 2014年11月11日号

 ◇ISIS台頭の責任巡り情報機関の反発招くオバマ


堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)


 米CBSテレビの報道番組(9月28日放映)の中でオバマ大統領は「イスラム国」(ISIS)台頭の理由について、「米国の情報機関がこれを過小評価し、イラク軍を過大評価していたため」と述べて物議を醸した。イラク、シリアでの「イスラム国」の勢力拡大を未然に防げなかった責任を情報機関に押し付けていると受け止められたからだ。

「イスラム国」の脅威については実際にはCIA(米中央情報局)やDIA(米国防情報局)を通じて昨年来、数次にわたってホワイトハウスに報告がなされていたことが確認されている。特に今年2月にはマイケル・フリンDIA長官(当時)が米議会上院軍事委員会公聴会で、シリアを拠点とするISISの年内のイラク侵攻の可能性に言及しており、これをイラク軍が抑えるのは困難との予想も示されていた。実態としては度重なる情報機関からの脅威報告に対し、イラクからの米軍撤退を果たし、再度の軍事介入を避けたいホワイトハウス側が真剣に取り合わなかったというのが実情で、情報機関としては前述のオバマ氏の発言でとんだとばっちりを受けた形となっている。

 ISISの台頭についてはそもそもオバマ政権の中東政策に非を求める声が大きい。先般、同政権下でCIA長官と国防長官を歴任したレオン・パネッタ氏による回想録『価値ある戦い』が出版されたが、同書の中でパネッタ氏はオバマ大統領が米軍の早期のイラク撤退実現に執着し過ぎたと記し、このことが結果的に同国に軍事的な空白を生じさせてISISの侵攻を許した可能性に言及している。またこれに先駆けて発刊されたヒラリー・クリントン元国務長官の回想録でも、シリアの反体制派に対して武器供与をすべきとの進言に耳を貸さなかったオバマ大統領の姿が描かれ、このために同国での過激派分子の動きに関するより詳細な情報収集の機会を逸した可能性が指摘されている。


 ◇矛盾するコメント


 もとよりオバマ大統領の「軍事アレルギー」や「他国の紛争への不介入主義」は衆目の一致するところであるが、これが高じて軍首脳や一部閣僚の進言を信用せず、自らに忠実なホワイトハウス内の首席補佐官や少数のスタッフのみで重要な政策決定を行い、これが迷走するや前述のように他の行政機関などに責任転嫁をする大統領の姿に疑問を投げかける声は日増しに強くなっている。政権中枢部によるダメージコントロールとはいえ、その対応の稚拙さ、不用意さが大統領自身の支持率・好感度の低下につながってしまっている可能性に、果たしてホワイトハウスは気付いているだろうか。

 昨年のシリアによる化学兵器使用問題においても一旦表明した空爆を取りやめた際、オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と述べているが、一方で今回のISISへの空爆では冒頭のCBSの番組中に「世界のどこかで紛争がおきれば、その時助けを求められるべき相手は北京やモスクワではなく米国である。自分は今までそういう場面で常に指導力を発揮してきた」と半ば矛盾するようなコメントを発している。周囲の振り付けであったにせよ、指導者としての一貫性に欠ける印象を与えた感は否めない。

 元々外交は不得手といわれるオバマ大統領であるが、ホワイトハウス内の側近、特に外交・安全保障関係の補佐官らスタッフに一連の責任を求める声は大きい。2年後の大統領選をにらんでスタッフの刷新が必要との意見が自らの支持基盤である民主党内からも聞こえ始めたが、オバマ大統領がこれにどう応えるかが注目される。