2014年

11月

25日

ワシントンDC 2014年11月25日号

 ◇原油輸出で国内ガソリン価格下落 EIA報告が解禁論議に拍車


須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 シェール革命による米国のシェールオイル生産増加を背景に、国産原油輸出の解禁を巡る議論が米国内で続いている。10月30日に、この議論に影響を及ぼしうるリポートが発表された。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)発表の「何が米国のガソリン価格を動かすか?」だ。

 このリポートでEIAは、原油の米国内市場価格(WTI)と国際市場価格(ブレント)の動向と、米国内のガソリン価格の動向の関係性について、特に米国のシェールオイル増産を背景にWTIとブレントの価格差(スプレッド)が広がっている2011年以降の動きに着目しつつ、統計的に分析。米国内のガソリン価格を決める要因として、原油の国内市場価格よりも国際市場価格がより重要との分析結果を示している。そして、原油輸出の解禁が米国内のガソリン価格に与える影響は、解禁措置が原油の国際市場価格に与える影響いかんによる、と述べている。

 リポートは、輸出解禁が国際市場への原油供給増を通じて国際市場価格を引き下げる可能性に言及しているが、実際にどの程度引き下げ効果があるかはさまざまな要因に左右されるとし、その効果については、今後追加的な分析を行うとしている。

 直接的に輸出解禁を支持するものではないが、関係者の間では、原油輸出の解禁が、国内ガソリン価格の高騰に結びつくものではないことを示唆する内容と受け止められている。


 ◇輸出推進派に追い風


 原油輸出解禁を巡る議論では、輸出が国内ガソリン価格に与える影響が大きな争点の一つになっており、最近、ワシントンでは、ほかにも類似の分析結果を示す報告書が出されている。10月に公開された米議会付属機関の政府監査院(GAO)による議会報告書や、9月に発表されたブルッキングス研究所の分析リポートなどだ。いずれも、米国のガソリン価格は国際市場価格に連動し、輸出解禁は国際市場への原油供給増・国際市場価格引き下げを通じて、国内ガソリン価格を引き下げる効果を持ちうると主張している。

 EIAなどの分析結果は、輸出の推進派に追い風となりうる。米国石油協会(API)は、「このEIAの分析は、原油の禁輸措置が米国内のガソリン消費者に対して何らの便益ももたらしていないことを示すものだ」とコメント。議会においても、輸出推進派の共和党・マカウスキ上院議員が「原油輸出は国内のガソリン価格を引き上げることはなく、むしろ引き下げる効果が期待できる」として、リポートの分析結果を歓迎している。

 一方で、引き続き輸出解禁への反対論や慎重な見方も多い。反対派の民主党・マーキー上院議員は「米国内の低い原油価格は、国内消費者のガソリン費用の節約に貢献している」と述べ、原油輸出は一般消費者や国内ビジネスの利益を損なうと輸出解禁に反対している。そのほか、原油産出州であるノースダコタ州の共和党・ホーベン上院議員が、原油輸出が国内ガソリン価格を引き上げないとする更なる確証が必要と述べるなど、共和党議員の中にも慎重な見解が見られている。

 世論調査でも、一般市民の間では輸出解禁による国内ガソリン価格高騰の懸念が強いとの結果が示されており、車社会である米国において政治的に神経質な問題をはらむ。それゆえ、中間選挙の前までは原油輸出に係る政策に大きな変化は見られなかったが、中間選挙を終え、今後は議論がさらに高まっていく可能性がある。EIAのリポートが今後の議論の方向性にどのような影響を与えていくのか、注目したい。