2014年

11月

25日

経営者:編集長インタビュー 岩田彰一郎 アスクル社長 2014年11月25日号

 ◇オフィスから個人の日用品まで


 オフィス用品通販の先駆けであるアスクル。主に中小企業向けに、事務用品購入のカタログ通販というビジネスモデルを確立した。現在、堅調な企業向けに加え、一般消費者向けサービスに力を入れる。2012年にヤフーと業務・資本提携し、食料品や台所用品など日常用品をメインにした個人向けの通販サイト「ロハコ」をスタートさせた。


── 個人向け通販サービスを始めた狙いは。

岩田 EC(ネット通販)の普及とともに、企業向けか個人消費者向けかは関係なく、あらゆる流通がインターネットを通して行われる時代が来ると思いました。ここは思い切って会社を変えていかないと、10年後に会社が存続できるのか、という危機感もありました。

 そこで自分たちがお客様に提供できる価値はなんだろうかと考えた時、アスクルは20年前から、オフィスにコピー用紙など重たくてかさばるうえに利益が出にくい商品を、当日・翌日配送して収益を出してきました。この物流のノウハウは我々の財産です。

 我々がいま「ロハコ」で目指しているのは、洗剤やトイレットペーパー、水、食料品など日常使いのもののECです。アマゾンや楽天が得意とするECは、本や家電、地方の名産食品などですが、これからは日常品をすべてECで買う時代が来ます。特に子育てしながら働いている人たちの負担軽減につなげたいと思っています。アマゾンや楽天が第1世代とすると、我々は「第2世代のEC」を標榜(ひょうぼう)しており、この分野で先行者になりたい。

── 手応えは?

岩田 ロハコで日常品を買う習慣がつくと、次第に買う商品の種類も増えます。分析したところ、最初の購入では、例えば台所用品と水など平均2種類ですが、2回目は4、7回目で9と増えていきます。さらに8回目では24まで一気に増えます。ここでライフスタイルが変わって、第2世代の消費者になるのです。社内では「ロハコさん」と呼んでいます。

 現在、ロハコさんは約15万人ですが、将来は100万人まで伸ばしたい。そのためには今年4月に100万人となった累計利用数が1000万人を超えないといけません。


 ◇ヤフーと提携


── ヤフーとの業務・資本提携の狙いは。

岩田 当社の物流のノウハウと、ヤフーのECでの知名度、集客力、決済システムを組み合わせることです。ヤフーの宮坂学社長も、パソコンからスマートフォンという変化に対応して新しいことに挑んでいこうという思いがあり、志は一緒だと意気投合しました。

 提携から半年後に立ち上げたロハコでは、利用者がヤフーIDを持っていれば、そのIDがロハコでも使えます。またヤフーの決済システムも利用できます。

 物流の仕組みはアスクルと同じで、基本的にメーカーから買い取ります。ヤフーへの第三者割当増資で得た330億円のうち220億円をかけてロハコのために物流センター2カ所を新築・改装しました。センター内では自動化されたコンベヤーが走っていて、お客様ごとに注文がバーコード管理され、商品のある場所に最短のルートで走っていく仕組みです。最短20分で出荷できる能力があり、規模の面でも国内最大だと思います。


 ◇医療用品、建築資材も


── 医療・介護施設や建設会社向けのサービスも始めました。

岩田 アスクルといえばオフィスというイメージでしょうが、実際は病院や介護施設、工場、研究所などあらゆる職場で利用していただいています。全国の病院の約5割は当社のお客様です。そういうなかで、小さなクリニックまでは医薬卸業者もなかなか手が回っていない事情が分かり、我々で医療用品を届ける余地があると考えました。医療用カタログを事務用品カタログと一緒に提供しており、このように複合化することで購買点数も増えます。今後も業種ごとにお客様が必要とされるものを考え、カタログを出せば、まだまだ成長が見込めると考えています。

 さらに今年から法人向け弁当宅配サイト「ごちクル」を手掛けるスターフェスティバル(東京都港区)と提携して、弁当の宅配にも乗り出しました。企業主催のセミナーなどでお弁当の手配に苦労している企業が多いことを知ったからです。本業以外のことは極力アウトソーシングし、日本企業が競争力を付けるお手伝いができればと考えています。

── アスクル独特の「エージェント」とはどのような仕組みですか。

岩田 エージェントは販売パートナーで、約1400社と契約しています。顧客開拓と債権管理、代金の回収をエージェントがし、それ以外の注文の受付、配送、顧客からの問い合わせ対応などはすべて当社がします。

 ネットの普及でエージェントを通さずに来る注文も増えていますが、医療機関や建設業界の顧客開拓や新しいサービス・商品の提案など、エージェントの役割はますます大きくなっています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ライオンで女性のヘアケア製品の商品開発を担当していました。マーケティング方法など新しいチャレンジをして、楽しかったですね。その後、35歳で転職しました。

Q 最近買ったもの

A アメリカに出張した際、まな板やハンバーグを焼く時に使う調理器具を買いました。

Q 休日の過ごし方

A 料理が趣味で、朝から買い出しをして家族の料理を作ります。その料理の写真がロハコなどのカタログやHPに載ることもあります。

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇いわた・しょういちろう

 大阪府出身。1973年慶応義塾大学商学部卒業。73年ライオン油脂(現ライオン)入社。86年プラス入社。97年にアスクルの分社独立とともに代表取締役社長。64歳。