2014年

12月

02日

ワシントンDC 2014年12月2日特大号

 ◇大統領選に向け勢いに乗る共和党 立ちふさがる民主党「青い壁」


篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)


 中間選挙が終わった今、ワシントンはすでに2016年の大統領選挙に目を向けている。共和党の歴史的勝利を受け、大統領選でも共和党候補に勢いがあると考える人もいる。しかし、各州から選出される「選挙人」を巡って争われる大統領選挙では、当選のために270の選挙人を獲得する必要があり、現状では民主党が優位となっている。

 過去6回の大統領選では、カリフォルニア州やニューヨーク州などの18州とコロンビア特別区(ワシントンDC)が民主党の牙城となり、勝利に貢献してきた。これらの地域は、難攻不落の「青い壁」と呼ばれ、選挙人の総数は242にもなる。フロリダ州のように選挙人数の多い接戦州をあと1州獲得すれば勝利できる。

 共和党にも「赤い壁」があるが、それらの州の人口規模は比較的小さいため、選挙人総数は180にも及ばない。共和党候補がホワイトハウスを獲得するには、より多くの接戦州で勝利せねばならず、これは多様化した全米の有権者を相手にする大統領選では、難しいシナリオとなる。

 実は共和党には秘密兵器がある。州ごとの選挙人数は、各州2人の連邦上院議員と人口比で選ばれる下院議員の数の総計だが、選挙人の分配方式はそれぞれの州に委ねられている。ほとんどの州では最も得票数が多かった候補が全選挙人を獲得する「勝者総取り方式」を採用している。

 しかし、メーン州とネブラスカ州は、得票数に応じて大統領選挙人を分配する「比例割り当て方式」を採用している。すなわち秘密兵器とは、接戦州の州立法府に働きかけ、比例割り当て方式に変更することである。この戦略がうまくいけば、民主党は242の選挙人数確保は難しくなる。だが比例割り当ては州の大統領選挙人数が分散し、選挙への州の影響力が低下するため、州知事たちはこの変更を拒否してきた。秘密兵器は必ずしも使えるとは限らない。


 ◇混沌の候補者選び


 また、ヒラリー・クリントン氏がリードする民主党の候補者選びとは異なり、共和党には1人の突出した候補がいない。中道派のクリス・クリスティー・ニュージャージー州知事がスキャンダルで評判を落とした後、最近は61歳のジェブ・ブッシュ氏が、移民政策などへの現実的視点と強力な資金集めのネットワークを有するとして、共和党エスタブリッシュメントの中で有力な候補として浮上している。しかしブッシュ氏は、保守的な共和党支持層の路線とは一致しないとの評判もある。

 元大統領候補だったリック・ペリー氏、リック・サントラム氏、マイク・ハッカビー氏が再び浮上する可能性もある。同時にルイジアナ州のボビー・ジンダル氏、オハイオ州のジョン・ケーシック氏、インディアナ州のマイク・ペンス氏、ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー氏などの野心的な共和党知事らも虎視眈々(たんたん)と機会を狙っている。

 また、保守強硬派ティーパーティー活動家のテッド・クルーズ氏、移民法改革法案可決に失敗した後、人気が低下したキューバ系のマルコ・ルビオ・フロリダ州上院議員や、若者やマイノリティーから驚くほど大きく支持を伸ばした扇動的自由主義者のランド・ポール氏なども忘れてはならない。これだけ名前が挙がるということは、決定的な魅力のある候補がいない、ということでもある。

 今回の中間選挙は共和党にとって励みとなる結果となった。しかし、共和党が「青い壁」を攻略するには、今後2年間で自らの統治能力を証明し、人口動態上も無党派、中道派、若者、マイノリティー(非白人)からの票も獲得できる戦略をとる必要に迫られるであろう。