2014年

12月

02日

経営者:編集長インタビュー 間下直晃 ブイキューブ社長 2014年12月2日特大号

 ◇ウェブ会議でアジア1位を目指す


 パソコンやタブレット端末、スマートフォンを使いインターネット上で会議ができる「ウェブ会議サービス」。ブイキューブは、この分野で国内最大手だ。2013年12月に東証マザーズ上場。14年5月には、電子黒板などを手がけるパイオニアの子会社を買収し、順調に業績を伸ばしている。


── ウェブ会議の国内市場で08年からシェア1位。2位の米シスコシステムズ、3位のNTTアイティに勝てる強みは何ですか?

間下 IT(情報技術)が得意でない人も快適に使える商品設計をしています。また、アジアの企業文化も考慮に入れています。つまり、北米では電話会議の延長にウェブ会議があり、映像付きが標準ではない。一方、日本を含めアジアの人は顔を見ることを重視するので、映像付きサービスを標準にして、使い勝手を高めています。

 自前の営業部隊を持っていることも強みです。ほとんどの競合相手が自社の営業を持っていませんし、大企業系は中核事業でないため営業がうまく機能していなかったりもします。法人向けのネットサービスでは、技術と営業のバランスが取れていることが強みとなります。

── 料金体系は?

間下 当社はパッケージ型ソフトを売るのではなく、基本的に毎月課金して、ネットを通じて利用していただくクラウド型です。料金は同時1接続当たり1万1000円からです。つまり、10人の同時接続が必要であれば、11万円でウェブ会議やオンラインセミナーが利用できます。

── 何社が導入していますか?

間下 国内4000社以上と公表しています。ただ、月5000円から800万円まで契約額が多様なので、社数だけでは計れない面があります。海外では数百社が利用しています。中国では、上海GMの自動車に会議システムとして搭載されています。ソフトにおカネを払う習慣が少ない国で売る成功事例です。

── 売り上げの約6割がクラウド型。パッケージからクラウドへ移行できないソフト会社が多いなか、ブイキューブはなぜできたのですか。

間下 当社は09、10年にパッケージ型からクラウド型への移行を進めました。リーマン・ショック後、企業が出張費節減のため、ウェブ会議の導入に乗り出していた時期で、年間3~4割の勢いで売り上げが伸びていたので影響は小さくて済みました。

 しかし1桁成長の会社では、クラウド型への移行は一時的に売り上げ、利益ともに減る可能性が高いので、その経営判断をできる会社は少ないのが現状です。

 また営業面でも、一般的に月額課金で少額の売り上げを積み重ねるクラウド型より、一度に高い売り上げを計上するパッケージ型を売ることが評価される風土が残っています。

── 今、強化している分野は?

間下 医療分野に期待しています。目先でやっているのは、製薬会社がオンラインで新薬説明会を提供できるサービスです。4月にエムスリーと合弁会社を設立し、一緒に提供しています。遠隔医療は規制もあり、売り上げはまだほぼゼロです。ただ、過疎の村や離島などで利用が広がるのははっきりしています。

── パイオニア子会社の買収以来、教育分野にも注力しています。

間下 パイオニアVCは、電子黒板を中心に展開しています。文部科学省が、14~17年度に総額6712億円で「教育のIT化」を進めています。電子黒板だけではないですが、毎年1600億円以上の調達額が発生します。現在、電子黒板市場で25%のシェアを持っているので、いいポジションにつけています。

 国内のウェブ会議市場は、10年以内に現在の10倍の1000億円規模になると見込まれています。一方で、医療と教育はこの数字に含まれていないので、それ以上に拡大する可能性もあると考えています。


 ◇シンガポールを拠点


 間下社長は13年にシンガポールに移住した。1年の6割はシンガポールを拠点にアジア各国を回り、日本での滞在は3割程度だ。現在の同社の海外売上比率は10%だが、将来的なアジアの成長を見込んで先手先手で動いている。


── なぜ海外に?

間下 会社全体が海外を見るようにするためです。どこのIT企業もそうですが、海外市場に参入して現地で問題が起きても、本社対応となり後回しにする。そのあげく売り上げが伸びないからと撤退する。その点、社長が海外にいると、東京の本社もしっかり対応しますし、相手国の企業にも我々の本気度が伝わります。

── 今後の戦略は?

間下 ウェブ会議の国内普及率はまだ2~3%です。啓蒙活動をしている状態なのでそこから早く脱却したい。そのため、情報システム会社など販売パートナーが自社ブランドで当社のウェブ会議サービスを提供できるOEM戦略も強化しています。

── 法人向けLINEとも言えるチャットアプリを提供し始めました。

間下 LINEをビジネスで使うことに不安のある企業は多い。この新サービスを広め、ウェブ会議の利用者増加も狙っています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)


 ◇横顔


Q 起業の経緯は?

A 学生時代にウェブサイトの受託開発を始め、その延長で起業しました。25歳で米国法人を設立して東京と連絡をするとき、ウェブ会議の重要性に気づき、自社向けに開発したのが今のビジネスの原型です。

Q 最近買ったもの

A カメラを搭載した小型ヘリコプターです。将来的には、工場やビルの保守に使われるかもしれません。

Q 休日の過ごし方

A 子どもとプールですね。シンガポールは年中暑く、外国人向けの家にはどこもプールがついています。

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 ■人物略歴

 ◇ました・なおあき

 慶応義塾大学在学中の1998年有限会社ブイキューブインターネット(現ブイキューブ)を設立して社長就任。2004年にウェブ会議サービスを開始。09年インテル・キャピタルから出資を受ける。13年12月東証マザーズ上場。36歳。