2014年

12月

09日

ワシントンDC 2014年12月9日号

 ◇オバマ政権残り2年の総仕上げ 外交で実績狙うが前途は多難

及川正也
(毎日新聞北米総局長)

 2期通算8年の任期を得た米大統領にとって最後の2年は「歴史に名を刻む」大統領になるための総仕上げの期間だ。そのために熟考し、実行に移す。決まり文句は「レガシー(遺産)は外交」。だが、最後の審判となった先の中間選挙で惨敗し、国内外の求心力を一段と低下させたオバマ大統領の前途は多難だ。

「投票した人の声も、棄権した(有権者の)3分の2の人の声も聞く」「大事なのは政権が問題を解決し、議会が問題を解決するのを手伝うことだ」。民主党が敗北した11月4日の中間選挙から一夜明けた5日。ホワイトハウスで記者会見したオバマ大統領は責任論に触れず、むしろ強行突破を図る意欲すらみせた。
 内政問題では不法移民の処遇を巡る移民制度改革、外交ではシリアとイラクで勢力をふるう過激派組織「イスラム国」対策が当面の最重要課題だ。
 不法移民の強制送還措置を緩和して労働力を維持したいオバマ大統領は、不法移民排斥を訴える共和党との対決を避けるため、大統領令で政策を押し通す決定をした。米国では議会の権限は非常に強く、中間選挙結果を受けて来年1月から始まる新議会では民主党が「議会野党」に転じることを見越した対策といえる。共和党は予算を盾に大統領令を事実上撤回する法案提出などで対抗する構えで、議会を舞台とする与野党対決は2016年大統領選も視野に入れた権力闘争の様相を帯びる。
 これでは「実現できない政治」の堂々巡りだが、議会にうかがいをたてる必要はなく極秘で交渉を進めることができる外交は政権・政府の「専権」分野だ。だが、それとて簡単ではない。1980年代以降で2期務めた大統領はレーガン(共和党)、クリントン(民主党)、ブッシュ(共和党)の3人。レーガン大統領は当時のソ連と中距離核戦力全廃を含む核軍縮交渉で功績を残したが、中東和平交渉や北朝鮮との国交正常化を目指したクリントン、北朝鮮核放棄を実現しようとしたブッシュ両大統領はともに失敗している。

 ◇イラン核問題の前進

「オバマ外交」といえば「核なき世界」が印象に強いが、ウクライナ問題でロシアとの対立は先鋭化し、一段の戦略核兵器削減交渉は凍結の縁にある。イスラム国問題では大規模戦闘部隊を派遣せず空爆中心の戦術は共和党の支持を見込めるが、イラク撤退を急いだツケとの指摘もあり、出口戦略を探るのが精一杯だ。ブッシュ前政権のコンドリーザ・ライス元国務長官は「米国が後ずさりし、優しく話すときは、だれも言うことを聞かない」と、「弱腰」といわれるオバマ外交を批判している。
 ワシントンでは、イスラム国対策やウクライナ問題が対症療法的なのに対し、長年の懸案のイラン核問題は「経済制裁の圧力路線と交渉継続の対話路線をミックスさせたオバマ政権のイニシアチブで前進した」(米政府関係者)と評価されている。イランの核兵器開発を未然に防げば「核なき世界」の功績とも位置付けられる。
 ただ、ブッシュ前政権時には北朝鮮核問題を巡り金融制裁の圧力で交渉を前進させたものの、最後は取引材料としてテロ支援国家の指定を解除したにもかかわらず、打開できなかった苦い経験がある。オバマ政権が功を焦って制裁解除を急げば「反イラン派」が多い共和党議会との激突を招き足元をすくわれると警戒する声もある。
 日本にとって重要なアジア重視戦略はどうなるのか。「イスラム国やイラン核問題の陰でかすんでいるのは確かだ」。日米政府関係者はこう嘆いた。