2014年

12月

09日

経営者:編集長インタビュー 和田真治 日本瓦斯社長 2014年12月9日号

 ◇ガス・電力自由化へクラウドと営業力で勝負

 2016年前後の全面自由化を控えるガス・電力業界では再編の動きが急だ。関東地方が地盤のLPガス(プロパンガス)最大手・日本瓦斯は、電力小売りや海外展開に乗り出す一方、クラウドを使った独自の業務管理システムの構築でコスト削減を図るなど、保守的な企業の多い業界の中では先端的な取り組みを打ち出してきた。「ガス業界の風雲児」とも呼ばれる和田社長は、根っからの自由化・再編論者だ。

── クラウド活用の狙いは。

和田 新システムは、ガスの配送や検針、保安といった当社の基幹業務を効率化する狙いです。クラウドと携帯端末をつなぐことで、現場で処理した作業内容をシステムを通じて自動的に処理できるようになります。その結果、データの入力・集計や伝票処理といった作業を大幅に圧縮できます。また、作業のミスや漏れ防止にもつながりますし、処理した情報をリアルタイムに関連部署で共有できるようになります。
 当社は国内では、LPガス70万件、都市ガス38万件の計108万件の顧客を抱えていて、1カ月ごとに検針や料金請求を行い、4年に1回以上は器具や設備の点検をする必要があります。営業や設備の新設・改修といった業務を含め、データの集計・処理のための負担は相当なものでした。
 業務管理コストを削減できれば、より有利な料金を設定できるようになります。システム構築の結果、毎年4万~5万件ずつ顧客数が増え続けているにもかかわらず、販売管理費は同水準を維持しています。
 開発にあたっては、電力小売りや水分野への参入も視野に入れました。今後、同業他社への外販も考えています。
── 全面自由化に備えた取り組みということですね。
和田 エネルギー業界はこれまで、さまざまな規制に守られ、倒産を気にせず仕事ができました。そのため競争が少なく、イノベーションが生まれる素地もなかったのです。そうした構造を支えてきた総括原価方式の料金体系が自由化や規制緩和で見直しを迫られています。
 自由化に向けては、電力・ガスのパッケージ販売も始めました。当社の既存顧客のうち、主に産業分野向けに提案しています。すでに第1弾として埼玉県でアルミ鋳物業を手掛ける企業と契約を結びました。具体的に成約したのは国内で初めてではないでしょうか。夜間や休日の安価な電気料金やガスとのセット割引を提案します。
 今後は50戸以上の集合住宅向けや、省エネコンサルティングといったサービスなども提案したいと考えています。究極的には、当社の全ての顧客に販売する目標です。
── 合併・買収(M&A)戦略は。
和田 チャンスがあれば、海外も含め積極的に対応していきたいと考えています。自由化の過程では、まずエネルギー調達や発電を手掛ける電力会社や大手ガス会社の上流は上流で、当社のような小売りの下流は下流で、それぞれ合従連衡が進むことになるでしょう。その後、電力会社や大手ガス会社は小売りの経験に乏しいので、合従連衡した大手グループは、いずれ小売りに強いグループと組む必要が生じるはずです。
 そんな時に必要だと思ってもらえるように力を付けておく必要があります。そのために当社の名前が消えることもいといません。当社はこれまで、業界の常識と呼ばれるものに真剣に向き合い、徹底的に構造改革を進めてきました。クラウドシステムの構築や物流改革、グループ内再編といった取り組みを進めてきたのはそのためです。
── 米JPモルガン・チェース傘下のファンドと11年に資本業務提携しました。その目的は。
和田 彼らは当初、海外投資のパートナーとして声を掛けてくれたようですが、当社の現場でのオペレーションに魅力を感じ、日本のガス業界の集約化のほうが先決だと判断しました。提携した3年間で彼らが助言・提案してくれた資本政策は大いに参考になりました。昨年度に都市ガス子会社4社を完全子会社化したり、増配したりしたのは彼らの助言によるものです。

 ◇「対面」にこだわる

── 海外事業にも積極的です。
和田 11年にエントラスト・エナジー社への出資・経営参加を通じて参入した米国事業に注力しています。10月末時点の顧客数は、テキサス・カリフォルニア両州の南西部13万件、ニューヨーク州など北東部4万件の計約17万件に上ります。米シェル社と包括的なエネルギー調達契約を結んでおり、競争力のある価格を設定できる点も強みです。
 豪州では、商業向け電力小売り事業を展開するコーゼロ社に出資・経営参加しています。同社は電力効率化のノウハウを持っていますので、日本で電力・ガスのパッケージ販売を展開する時、そのノウハウを生かすことができます。
 日本でも海外でも、最終的には対面での営業活動を通じて、きめ細かくサービスを提供する姿勢が評価されると信じています。自由化に備えて多角化に活路を見いだそうとする同業他社が少なくないなか、当社はあくまでお客様に最も近い立ち位置での事業形態にこだわってきました。消費者が支持してくれるような取り組みを積み重ねることで、小売りでは誰にも負けない存在になりたいです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A モーレツ営業マンでした。とにかく、より多くの顧客と会うことを心掛けました。体力のある時期に、あれだけの仕事をこなすことができたのは幸運なことです。
Q 最近買ったもの
A 健康に気遣うようになり、マッサージチェアを買いました。最近の商品はスクワットなど体力増進機能や骨盤矯正機能なども付いています。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフです。普段の仕事とはまったく関係のない人たちとフリーでパーティーを組むように心掛けています。
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 ■人物略歴
 ◇わだ・しんじ
 1952年生まれ。島根県出身。1977年成城大学経済学部卒業後、日本瓦斯入社。97年取締役営業部長兼西関東支店長、2004年専務取締役営業本部長などを経て、05年6月営業本部長を兼任したまま社長就任。62歳。