2014年

12月

16日

ワシントンDC 2014年12月16日特大号

 ◇動き出したパイプライン計画 注目される大統領の対応

堂ノ脇伸
(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 共和党が圧勝した米中間選挙から約1カ月が過ぎ、年明けから選挙結果を踏まえた第114議会が始まる。上下両院で過半数を得た共和党が2年間の任期を残したオバマ政権と今後どのような形で対峙(たいじ)し、あるいは政策協調を図りながら議会運営を行っていくかが注目される。

 一方、年末まで残りわずかな会期のみとなった第113議会では、かねてから議論となりながら、オバマ政権下で6年間にわたり結論が先送りされてきたキーストーンXLパイプラインの建設計画認可を巡る動きが活発化。上院民主党内に少なからぬ軋轢(あつれき)をもたらす結果を招いている。
 キーストーンXLパイプラインは、カナダ産原油を同国アルバータ州から米国メキシコ湾沿岸の製油所まで全長約2700キロメートルにわたり輸送するパイプライン建設計画だ。建設には国境をまたぐため、申請を所管する国務省で環境面、経済面、エネルギー安全保障、外交政策などへの影響が審査された上で大統領の承認を必要とする。
 一般に産業界寄りで、その経済効果を重視する共和党は計画推進に賛成している。一方、同計画が環境に与える影響を懸念する民主党とオバマ政権は環境団体からの圧力などもあり、国務省の審査の遅れなどに乗じ、長きにわたって承認を先送りさせてきた経緯がある。

 ◇民主党内で割れた対応

 すでに下院では11月14日に共和党を中心に252対161で建設を承認する法案が可決されている。民主党が過半を制する上院では18日に本会議にかける審議が行われ、45人の共和党上院議員と14人の民主党議員が賛成の意向を表明したものの、法案可決に必要とされる60票にあと1票足りず、成立しなかった。
 今回上院でこの法案が取り上げられた背景には、先の中間選挙で過半数を獲得できず、12月の決選投票での上院議員再選に懸けるルイジアナ州のマリー・ランドリュー民主党議員の強い意向が働いていた。地元ルイジアナ州に多くの石油精製企業を抱え、自らも上院エネルギー・天然資源委員会委員長を務めてきたランドリュー議員は、民主党でありながらパイプライン計画の強い推進論者であり、共和党ジョン・フーヴェン上院議員(ノースダコタ州)と共に超党派で今回の建設承認の法案を提出している。
 ランドリュー氏の委員長職は、中間選挙で共和党が勝利したことで、次期議会で共和党のリサ・マコウスキー議員に譲ることが確定している。だが自らの上院再選のためには、委員長である今議会中に公約として掲げた同法案を可決させることが必至との思いが強かったようである。また決選投票における共和党の相手候補が下院からのくら替えで、今回同様の法案を下院で可決させたビル・カシディ議員であることも奮起の要因であったようだ。
 結果、否決となったことで、ランドリュー議員にとっては再選に向け相当の政治的ダメージとなったことは否めない。今回否決された法案は、どのみち共和党が過半を占める次期議会で年明け早々にも再提出され、可決される可能性が極めて高い。このような見通しなのだから、ランドリュー氏を少しでも再選に近づけるために、民主党の議員たちが法案可決に協力をする道はなかったのかとの意見も聞かれるが、結果的に同氏は民主党内の環境重視派から見放された形となってしまったようだ。
 一方、オバマ大統領はこの法案に対して、現時点では拒否権の発動を示唆している。パイプラインを巡る議会民主・共和両党と政府の動きは、来年早々から注目のトピックとなりそうだ。