2014年

12月

23日

特集:2015日本経済総予測 Part1 キーワードで読む2015年 2014年12月23日特大号

 ◇「まさか」のマイナス成長 さらなる追加緩和の可能性


桐山友一

(編集部)


「えっ、まさか」──。

 12月8日午前。内閣府が発表した2014年7~9月期の国内総生産(GDP)の2次速報値に、多くの民間エコノミストが目を疑った。前期比0・5%減、年率換算で1・9%減(季節調整済み)。11月17日に発表した1次速報値(前期比0・4%減、年率換算1・6%減)から、大半のエコノミストは上方修正を見込み、民間の事前予想の平均は年率換算で0・5%減。まさに予想外の下方修正となったのだ。

 民間の2次速報値の事前予想は、1次速報値に比べて精度が高い。例えば、GDPの設備投資は経済産業省の生産動態統計などを用いて推計するが、2次速報では財務省の法人企業統計も加味する。この法人企業統計では、7~9月期の設備投資が前期比3・1%増。このデータを基に、民間エコノミストは7~9月期2次速報で設備投資を増加すると見込んでいた。

 しかし、フタを開ければ、GDP2次速報の設備投資は前期比0・4%減。法人企業統計には資本金1000万円未満の個人事業主などが含まれていないが、内閣府のGDP推計ではこうした要素も考慮する。ただ、これほど極端に民間の2次速報値の事前予想が外れたことは「過去にあまり記憶がない」(伊藤忠経済研究所の三輪裕範所長)。今年4月の消費増税(5→8%)の反動が、想定以上に尾を引いている。


 ◇設備投資主導できるか


 11月の1次速報値のマイナス成長を受け、安倍晋三政権は15年10月からの消費再増税(8→10%)を1年半先送り、衆院解散・総選挙に踏み切った。消費増税の反動減が表れた4~6月期に続く、「まさか」の2四半期連続の景気の落ち込み。設備投資ばかりでなく、個人消費も前期比0・4%増(2次速報値ベース)にとどまり、「当初の見込みに比べれば回復の足取りが重い」(第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミスト)状態だ。

 はたして、15年の日本経済はどのような姿になるのか。本誌は主要な民間調査16機関に、15年の日本経済見通しをアンケートした。実質GDP成長率の予測は16機関平均で1・1%。これは、14年の平均0・1%(予測)を上回る。各社が描くのは、個人消費や設備投資の増加による内需主導の成長だ。また、このところの原油安も、ガソリン価格や企業の原材料価格の下落を通じ、個人消費や設備投資の押し上げ要因になりうる。

 ただ、消費増税の反動減が響く形で、住宅投資は東レ経営研究所を除く各社が減少を予想。また、企業の生産拠点の海外移転などで、輸出の伸びも14年に比べて低く見る。さらに、建設現場の人手不足などが意識され、公共投資も10機関で減少を見込んでいる。


 ◇国債市場にバブル


 金融市場だけでなく日本経済全体にとって大きなサプライズとなった、今年10月の日銀の追加緩和。その後、ほぼ一本調子で「株高・円安」が進行し、ドル・円相場は12月5日、一時約7年4カ月ぶりとなる1ドル=121円台の円安水準に。日経平均株価も同8日、一時1万8000円台と同じく約7年4カ月ぶりに大台を突破した。日銀の黒田東彦総裁は追加緩和の理由を、足元の原油価格の下落などを挙げたうえで「デフレマインドの転換が遅延するリスクがある」と説明した。

 インフレ率2%を目指す日銀は、異次元緩和に伴って国債などの資産買い入れと引き換えに市場に資金を大量に供給。世の中の将来に対するインフレ率の見通しを引き上げるとともに、名目金利からインフレ率を引いた実質金利を引き下げることで、設備投資や個人消費などの民間需要を刺激する狙いだ。日銀は追加緩和によって月平均約10兆円もの国債を購入し、国債の月間の市中発行額の9割をも占める規模に拡大。債券市場では国債の品薄感が続き、“プラチナ”とさえ呼ばれ始めた。しかし、これほどまでに日銀が取り組んでも、11月の消費者物価指数(生鮮食品除く)は消費増税の影響を除いて前年同月比0・9%増にとどまっている。

 その一方で債券市場では、本来は金利を受け取る側の投資家が、金利を払ってまで国債を購入する「マイナス金利」が相次ぐ異常な“国債バブル”が起きている。すでに今年9月以降、3カ月物、6カ月物の短期国庫証券(短期国債)でマイナス金利が生じていたが、12月に入ってから新発2年物国債にまで波及した(最終出来値ベース)。

 さらに、15年中には再び、追加緩和が実施される可能性すら出ている。本誌の民間調査16機関アンケートでは、15年の消費者物価指数はいずれも日銀のインフレ目標の2%未満。力強さを欠く個人消費に加え、原油価格の下落なども物価の下押しとなるためだ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストは「日銀はとにかく『物価2%原理主義』。今回の追加緩和の理屈に従うなら、物価見通しの達成が危うくなる来年10月ごろにも、再び追加緩和があるのではないか」と指摘する。

 原油安は本来、日本経済にとってプラスに働く要素だが、それが基になってさらなる追加緩和が必要になるという、実体経済と金融政策の奇妙な“ねじれ現象”すら引き起こしている。いまひとつな実体経済と、バブル的な金融市場が共存する危うさを抱えたままで迎える15年。はたして、日本経済はどのような姿になるのか。さまざまな角度から展望した。