2015年

1月

06日

ワシントンDC 2014年12月30日・2015年1月6日合併号

 ◇歴訪で見せたアジア重視 オバマ政権に問われる「実行」

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 オバマ大統領は11月10日から1週間にわたり、中国、ミャンマー、豪州のアジア大洋州3カ国を歴訪した。
 最初に訪れた中国では、アジア太平洋経済協力首脳会議(APEC)に参加した他、中国・習近平国家主席と夕食会も含め3度にわたり会談。会談後に習主席と共に臨んだ記者会見で、オバマ大統領は中国との協力関係をアジア重視外交の核心と述べ、関係を重視する姿勢を示した。

 さらに、温暖化ガス排出量の削減に向けた長期目標設定で合意した他、世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)の対象品目拡大や、偶発的衝突を回避するための相互連携システム構築などで具体的な合意に至っている。
 一方で、香港情勢や人権問題などの課題については、両首脳間で意見の相違が見られた。また、中国側は、今回のAPEC首脳会議開催に向けて、中国を含むAPEC全域を対象にしたアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)交渉開始の働きかけなどを打ち出しており、アジア太平洋地域での影響力発揮を巡る米中間競争の高まりも浮き上がった。
 次に訪れたミャンマーで、オバマ大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳に対し、安全保障分野での協力関係を深めていく姿勢を示した。さらに、ミャンマーのテインセイン大統領やアウンサンスーチー氏とも個別に会談。ミャンマーの民政移管後の関係発展はオバマ外交の成果だが、民主化プロセスは米国が望むような速さでは進んでおらず、透明な選挙の実施などさらなる進展を求めた。
 最終訪問先の豪州では、主要20カ国・地域(G20)首脳会合に出席。さらに今回のアジア歴訪を締めくくるように、クイーンズランド大学でアジア太平洋の外交政策について演説し、「アジア太平洋地域における米国のリーダーシップ発揮は常に私の外交政策の基軸である」と表明した。

 ◇「弱腰外交」の批判も

 今回のアジア歴訪について、ワシントンの専門家の間では、中国との気候変動問題に対する目標設定やITAに関する合意などで具体的な成果を上げたとの積極的な評価が見られる。また、オバマ政権のアジア太平洋地域へのリバランス政策の重要性を改めて発信する機会となった。
 しかしながら、オバマ政権の今後のアジア外交には課題も多い。オバマ政権の中国への対応には共和党内に「弱腰外交」との批判も見られ、中間選挙で共和党が多数を占めることとなった米議会が、今後、対中強硬姿勢を迫る可能性もある。
 アジア外交の成果とされるミャンマーについても、米議会には人権や少数民族の問題が解消されていないとの批判もある。経済面での最大の焦点であるTPPについては、議会共和党の協力も期待されるが、米国内の移民問題への大統領権限による対応に共和党側が反発して対決姿勢を強めており、先行きは不透明だ。
 加えて、「イスラム国」やイラン核協議などの中東情勢、ウクライナを巡る対ロシア制裁など、引き続き他地域での重要課題への対応が求められる中でどれだけアジアに対して注力し続けることができるのか、アジア地域では疑問視する向きもある。
 米国の有力シンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)がアジアの有識者を対象に行った調査では、米国のアジアでのプレゼンスを求める声が多数を占めるが、一方で、オバマ政権のアジア・リバランスは「実行」が課題との見方が多いとの結果が示されている。
 残り任期が2年と迫る中、オバマ政権のアジア外交は、引き続きその「実行」が問われている。