2015年

1月

13日

特集:1ドル130円時代 Part1 マーケットの目 2015年1月13日号

 ◇米利上げで一層のドル高・円安 長期的な円安時代の始まり


秋本裕子

(編集部)


 2014年12月初め、7年4カ月ぶりに1ドル=121円台までドル高・円安が進んだ。その後は、年末にかけて値動きが荒い展開になったものの、先行き円売り圧力はなお根強い。果たして、120円は通過点に過ぎないのだろうか。

 ◇次の節目は123円


 ドル・円相場は、史上最高値をつけた11年10月の1ドル=75円台から、3年余りで45円も円が下落した。今後の節目として市場関係者が意識するのが、07年7月以来の1ドル=123円台。その次に130円の大台を突破するかが焦点になる。00年代に入ってからの最安値は、02年1月につけた135円だ。

 15年にドル・円相場はどう動くのか。大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストは、「年央には米国でインフレ期待と金利上昇から株価が下落に転じ始め、それをきっかけにリスクオフになって円高に転じやすくなる」と見る。そのため、「年前半に1ドル=125円程度まで円安が進んだ後、年後半は115円程度に落ち着くのではないか」と予想する。

 米国経済の回復を反映し、14年は米国株も上り調子だった。米ダウ工業株30種平均は14年12月23日に大台になる1万8000ドルを超え、最高値を更新した。だが、金利上昇が引き金になり、投資家がひとたびリスクオフの姿勢を強めれば、株価は下落し、安全資産である円が買われやすくなる、との見方だ。


 ◇貿易赤字で実需の円売り


 ただ、「前半の円安から、後半に向けて円高に転じる」との見方よりむしろ、為替ストラテジストには「年末に向けて円安傾向が進む」と見る向きが多い。

 最大の理由は、米国で米連邦準備制度理事会(FRB)が15年年央から後半にかけて金融正常化のために利上げする一方、日銀が消費者物価上昇率目標2%の達成に向けて追加緩和に踏み切るという、日米の金融政策の方向性の違いが予想されること。そうなれば日米金利差拡大が意識され、金利上昇が見込めるドルで運用するため、円を売ってドルを買う動きがさらに加速することになる。

 第二に、日本が貿易収支の赤字であるという構造的な問題がある。原油安の進行で足元は貿易赤字が縮小傾向にあるものの、15年も貿易赤字が続くのは確実だ。そのため、「貿易赤字による実需の円売り」により、円安が続くとの見方だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外国株と外国債券の運用比率引き上げも、実需の円売りを支える材料になる。

 このようにみると、15年はドル高・円安の材料がそろっているように見える。もちろん、こうした要因は既にある程度は市場に織り込まれている。「ヘッジファンドの円売りポジションの売りが断続的に買い戻される」(野村証券の池田雄之輔・チーフ為替ストラテジスト)ことで、円安のスピードは緩やかなものにとどまる可能性はあるが、少なくとも趨勢(すうせい)的に円安方向に動く可能性が高そうだ。


 ◇17年ぶり円買い介入も


 一方で、さらなる円安進行には警戒感も強い。通貨安競争には国際的な批判もあり、海外の通貨当局や政府・日銀が、どの程度までの円安を許容するのかも15年の焦点になる。

 市場では、政府日銀による円買い介入の可能性も意識され始めている。UBS証券ウェルス・マネジメント本部の中窪文男チーフ・インベストメント・オフィサーは、「125円を超えて130円に近付くような円安が進めば、介入への警戒感が高まる」と見る。

 その理由は以下の2点だ。1点目は、円の総合的な実力を示す「実質実効為替レート」で見た円の「レベル」が、1985年のプラザ合意前より低い水準にあること。日銀の発表によると、14年12月前半の平均で69・51と、73年1月(68・88)以来の低水準となり、変動相場制移行(73年2月)後初の70割れとなった。そして2点目は、前回の円買い介入時の97年末に比べて円安の「スピード」が速いことだ。

 実際、今回の円安スピードは極めて速い。前回円買い介入された97年11月まで2年間での円安の進行は16%程度なのに対し、今回14年12月までの過去2年間では40%以上も進行している。「急速で行き過ぎた円安には、産業界などからの不満が高まりかねず、円買い介入の可能性は否定できない」(中窪氏)。今後の円安進展によっては、政府が17年ぶりの円買い介入に乗り出す局面があるかもしれない。

 14年に引き続き、どの程度まで円安が進むのか。15年は「1ドル=130円時代」に入り、いよいよ中長期的な円安時代が始まる。