2015年

1月

13日

経営者:編集長インタビュー 坂田宏 サカタのタネ社長 2015年1月13日号

 ◇野菜と花のタネを全世界で適地適作


 国内最大手の種苗会社。野菜と花の種子(タネ)や苗を生産し、農家や園芸愛好家向けに販売している。国内販売は横ばいだが、海外販売が伸び2014年5月期は売り上げの49%を占めた。世界各地の天候や栽培条件に適した種子を育てるため、19カ国で生産をしている。


── 海外事業が好調です。

坂田 地域や気候ごとに異なるニーズに対応するため、世界を「アジア・オセアニア」「北・中米」「南米」「ヨーロッパ・中近東・アフリカ・ロシア」の四つのエリアに分けて統括していて、最も伸びているのがアジア地域です。インドはベジタリアンの多い国ですし、中国は中華料理にも西洋野菜などが取り入れられています。今後も野菜の消費はさらに増え、それに伴いタネの売り上げも伸びていくと見ています。

── シェアが高い品種は。

坂田 国や地域によって主要野菜は違いますが、国内外でトップシェア(自社推計)が定着しているのはブロッコリーです。国内では約75%、海外でも約65%を占めます。このほか当社が得意とする野菜は、カリフラワーやキャベツ、白菜、ネギ、にんじん、大根などです。

 種苗会社の商品は、遺伝形質の異なる2種類の親系統を交配させた「F1種子」。色、形、味などに優れた野菜や花が収穫できるため、農業の生産性向上につながる。一方で、F1種子を栽培して採ったタネをまいても同じ性質の野菜・花は育たず、農家は種苗会社から毎年F1種子を購入することになる。このため「一代雑種」とも呼ばれている。

── ブロッコリーは、他社に先駆けてF1種子を販売したわけですね。

坂田 はい、商業レベルでブロッコリーのF1種子の販売に成功したのは当社が最初だと思います。1969年にアメリカで試験販売を開始し、生育が良く、形もそろい、収穫量が従来の2倍以上になると好評でした。その後、日本や欧州でもよく売れるようになりました。

 F1種子は、新興国にも広がりつつあります。例えばインドで栽培されているカリフラワーでF1品種は6割程度(面積比、自社推計)となっています。

── 海外展開にはどう取り組んでますか。

坂田 これまでも韓国など11カ国で現地会社のM&A(合併・買収)をしてきました。M&Aは、販売チャネルの獲得に加え当社にはない品目を持っているかどうかなどを基準にして検討しています。今後も有望な会社があれば進めていくつもりです。こうしたM&Aによって当社の世界シェアは、自社推計ですが現在5位につけています。

── 研究開発と生産体制は。

坂田 研究開発拠点は国内に5カ所、海外では8カ国10カ所にあります。地域や国ごとで気候や土壌、栽培方法が違いますので、条件に合う品種を開発します。日本の種苗会社が世界でトップレベルの競争力を有するのは、厳しい気候環境のなかで研究開発を進めているからです。四季があり、湿度も高い。台風もある。そういう環境で研究開発された強い品種なので世界に通用します。

 一方、種子の生産は「適地適作」といって、それぞれの種子が最も品質良く安定的に採取できる地域を選んでいます。海外19カ国に生産拠点があり、当社の種子の90%以上は海外で生産しています。


 ◇ニーズ高まる耐候性


── 国内市場の現状は。

坂田 全体で見れば国内トップですが、シェアが取れていない品目もたくさんあります。いま力を入れているのはトマトです。現在のシェア3割を5割にするのが目標です。トマトは色、形、味など競争が厳しい野菜ですが、当社の品種は大産地である熊本県八代市や愛知県豊橋市で採用されています。大産地で認められると、そこから他の地域にも波及していくと期待しています。

 また、当社の強みは種子だけでなく、苗や農業資材などフルパッケージを農家に提供できることです。土壌改良や液肥などのオリジナル商品もあります。

── 野菜のトレンドは。

坂田 生産者からは、耐病性や耐寒性、耐暑性などに加え、耐候性といって気候の変化や異常気象などに強い野菜が求められています。流通面だと日持ちの良さですね。農業の成長戦略として野菜の輸出増が話題になりますが、輸出するには日持ちが良くないといけません。また、健康志向の高まりから消費者からは健康に良い機能性野菜が人気を集めています。

── 花はいかがですか。

坂田 景気に左右されやすいため、いまはやや厳しい状況です。トレンドとしては、花びらが大きく華やかなものが人気です。花も野菜と同様、アジアで伸びています。

 当社が開発したオリジナル品種で「サンパチェンス」という花があります。この花は汚染物質の浄化能力などに優れ「環境浄化植物」として注目されています。見た目が奇麗なだけでなく環境にも良いということで、公園の植栽などに使われ、日本より海外でよく売れています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)


 ◇横顔


Q 最近気になっていること

A 日本の良さをもっと世界にアピールする必要があると思います。思いやりやおもてなしの精神もそうですし、青色LED発明でのノーベル物理学賞受賞や「はやぶさ2」の打ち上げを見て、日本の匠(たくみ)の技術を守り育てていかなければとあらためて思いました。

Q 最近買ったもの

A GPS腕時計「アストロン」(セイコーウオッチ)です。日本の最先端技術ということで購入しました。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフと読書です。

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 ■人物略歴

 ◇さかた・ひろし

 神奈川県出身。1974年慶応義塾大学経済学部卒業。74年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。81年坂田種苗(現サカタのタネ)入社。98年8月に取締役社長室長就任。2007年6月より現職。62歳。