2015年

1月

20日

経営者:編集長インタビュー 石野博 関西ペイント社長 2015年1月20日特大号

 ◇新興国に建築用塗料を売り込む

 塗料国内大手の関西ペイントは2011年、南アフリカの塗料最大手フリーワールド・コーティングス(現・カンサイ・プラスコン・アフリカ)を買収した。約280億円をつぎ込んだ買収劇を指揮したのが当時専務だった石野博氏だ。中東、アフリカへとグローバル展開を加速し、売り上げの6割近くを海外で稼ぐグローバル企業へと変貌を遂げつつある。
── 海外展開に積極的です。

石野 1990年代までは自動車メーカーの海外進出に合わせて中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、インドに出ましたが、2000年代は建築用塗料などの汎用品を新興国に売り込むことに力を入れるようになりました。モータリゼーションの目安は1人当たり国内総生産(GDP)で3000ドルと言われていますが、インフラや住宅の需要は1000ドル程度から中間層にも広がり始めます。塗料は世界の一大成長産業であり、そこに打って出なければ負けてしまう。自動車の一本足打法では、極東のニッチ企業のままだという思いがありました。

 ◇現地の人材を積極登用

── アフリカ、中東にも事業を拡大しています。
石野 建築を含む汎用品市場は性能で差がつきにくい分、ブランド力がモノを言います。だから他社が参入していない中東、アフリカに早く出たかった。今後はロシアへの進出も考えています。
 現在は日本、中国、ASEAN、インド、中東、アフリカ、その他、の7つの極ごとに市場に応じた事業を展開しています。14年3月期の売り上げは日本が約1500億円強、インド約550億円、アジア約600億円、アフリカ約350億円、その他170億円になりました。
── 各地域に権限を委譲しているのですか。
石野 極ごとに商品、購買、生産、営業などの機能を束ねて、それぞれに適したビジネスモデルを作る体制を敷いています。さらに各々が最善の方法を発表する場を設けて、知見を共有しています。
 例えば日本の品質は最も高いですが、我々は美術品を作っているわけではない。オーバークオリティ、オーバースペックではグローバルで通用しません。海外の方が実践的で生産性が高い部分もあるので、そこを取り入れる。また建築用塗料の色味は南アの方が豊富で約1500色のバリエーションを持っていますが、日本は750色程度です。色、質感を楽しむ使い方、プロモーションの方法などアフリカを参考に日本でも取り入れています。海外に学ぶことは多くあるわけで、それを共有していけばコストも低減できます。
 現在のような体制になったのはこの1年くらいです。南アの買収が大きかった。日本のモデルを持ち込んだ中国、ASEANに対して、現地塗料会社を買収して傘下に収めたインドが異質な印象だったのですが、南ア、中東に出てみて世界的な標準はむしろ向こう側だということがわかりました。
── 人材の確保が難しいのでは。
石野 日本人にこだわらず、現地の信頼できる優秀な人間に任せるので、人材には困りません。インドから西側は日本人の常勤のマネジメント層はゼロ。インドの経営トップはインド人、中東はパキスタン人、買収した南アもパキスタン人です。
── 新興国は経済情勢の変動が激しく、業績もブレやすい。
石野 タイや中国を除いてほとんどの地域が右肩上がりです。海外全体では売り上げも利益も伸びています。実は一番しんどいのは日本です。

 ◇自動車と建築用が2本柱に

── かつて主力だった自動車向けの比率が低下しています。
石野 自動車用が売り上げに占める比率は、リーマン・ショック前は45%でしたが、13年度は38%程度。一方、建築用は同期間に17%から26%に拡大し、自動車と肩を並べるようになりました。ただ、自動車が中核事業であることに変わりはありません。これまでは日系自動車メーカーと中国、インドのローカルメーカーが対象でしたが、欧米メーカーにも広げます。
── 日本国内での展開は?
石野 足元は良い状態ではありませんが、東京オリンピックの20年まではなだらかに需要が続くと期待しています。自動車用も来期は回復するでしょう。20年以降を考えると国内で大きな投資はできませんが、悲観的ではありません。例えば住宅の内装では、現在市場の8~9割を占める壁紙に代わって塗料を検討する人が増えるなど新しい動きが出てきています。
 新商品の投入も企画しています。14年12月にマレーシアで蚊をよける効果のある塗料を発売しました。デング熱対策としてマレーシアの保健省も注目しています。日本でも15年春以降に発売する計画です。
── 英国の名門サッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)のスポンサーになっていますね。
石野 マンU側からアプローチがありました。11年の南ア、フリーワールド社の取得は敵対的買収だったので、欧州で話題になったためでしょう。スポンサー料? 高いですよ(笑)。マンUはアジアで人気が高いので、ブランド認知の向上に効果があると期待しています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 三菱商事の自動車部で中東、中国、タイなどを担当しました。マーケティング全般から部品メーカーの工場の立ち上げの手伝いまで何でもやりました。今の自分の基礎になっています。
Q 最近買ったもの
A クールビズの導入にあわせて、昨年の夏に明るい色のスーツやワイシャツを買いました。
Q 休日の過ごし方
A 若い頃はスキューバダイビングなどをしましたが、40歳を過ぎたらやらなくなりました。最近は健康のために自宅の周辺を妻と一緒に散歩しています。
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 ■人物略歴
 ◇いしの・ひろし
 兵庫県西宮市出身。1975年東京大学法学部卒業後、三菱商事入社。自動車関連の業務を担当。2003年3月関西ペイント入社。常務取締役塗料事業部営業統括、代表取締役専務執行役員を経て13年4月から現職。63歳。