2015年

1月

27日

ワシントンDC 2015年1月27日号

 ◇強い影響力を持つロビー活動 米国民の政治参加への熱心さ

堂ノ脇伸
(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 ワシントンにおける政策立案・法案策定の過程でロビー活動が果たす役割は大きい。ロビー活動というと日本ではとかく利権団体による不当な利益誘導などのマイナスイメージで捉えられることが多いが、およそ全ての政策・法案にはこれによって影響を受ける利害関係者が存在するため、米国では賛成・反対双方の立場から民間企業がロビイストを介したり、あるいは業界団体や人権団体などが草の根運動などを通じて政府・議会や行政機関に対して影響力を行使すべく、活発なロビー活動を公然と展開している。

 連邦議会の動向を伝える専門紙『The Hill』が2014年に議論・策定された主要な政策課題の中で注目されたロビー活動の成果をいくつか列挙している。いずれもメディアなどで注目された政策ばかりだが、背後でどのような企業・団体が支持・反対といった活動を展開していたかを知る上で興味深い。
 まず不法移民の一部受け入れを認める大統領令の発効に際しては、NCLR(National Council of La Raza)と呼ばれるヒスパニック系の人権団体や、United We Standという若年層の移民団体による活動がオバマ政権を強く後押ししていたことが知られている。
 一方、オバマ政権が成立させた医療保険制度、いわゆるオバマケアの施行にあたっては、中小企業に従業員への医療保険付与を義務付ける時期が16年まで先延ばしとなるなど導入に際して緩和策が取られたが、これは全米商工会議所や全米フランチャイズ協会、全米小売業連盟といった団体によるロビー活動の成果と言われている。
 また、地球温暖化対策として環境局が推し進める石炭火力発電に対する二酸化炭素排出規制にはNRDC(National Resources Defense Council)をはじめとするさまざまな環境保護団体が後押ししており、産業界寄りの議会共和党とのあつれきが注目された。企業が株主に対して政治献金先を開示しなければならないとする公正取引委員会の規制案は私企業であるコークインダストリーズや、全米商工会議所、建設業界ラウンドテーブルといった団体の圧力によって日の目を見ることはなかった。

 ◇注目されるTPP交渉

 他にも遺伝子組み換え食品の表示義務を巡りコカ・コーラ、ユニリーバ、スターバックスやモンサントといった企業が加盟する食料品製造者協会が、消費者に無用の不安を想起させるとして反対運動を展開したことで法案化の動きが見送られ、ハリケーン・カトリーナによる被害を受けて見直し対象となった洪水被害保険プログラムの料率改定も全米不動産協会、全米住宅建設協会の強い反対によって実施が見送られている。
 オバマケア導入に際しては一部の国民が保険再加入を余儀なくされ、保険料負担が増えることに対してAFL・CIO(米労働総同盟産別会議)などが強い反対運動を行い、救済条項が設けられた。このように、注目された政策の決定過程においては各種の団体や企業からの政治的圧力が議会や政府、行政機関に対して行使されていることがうかがえる。政治的圧力に賛否はあろうが、米国民の政治参加への熱心さと言えるだろう。
 15年も引き続きさまざまな政策が協議されていくが、それぞれにいかなる企業・団体がどのような立場から支持・反対の活動を行っていくかが注目される。差しあたっては大詰めのTPP交渉を巡り、従来より厳しい立場を堅持している米国自動車業界と農業団体の動きが注目されるところだろうか。