2015年

1月

27日

経営者:編集長インタビュー 木股昌俊 クボタ社長 2015年1月27日号

 ◇大型農機で畑作市場に本格進出

 国内トップの農業農機メーカー、クボタの売り上げは、海外が約6割を占める。稲作用農機を中心に海外市場を開拓してきたが、今年は、水田に比べ4倍の耕作面積を有する畑作市場に本格的に乗り出す節目の年になる。
── 主力市場の北米が好調です。

木股 稲作用農機で米国に進出しましたが、米国に水田なんてありません。住宅用芝刈り・草刈り機、軽土木用機械などに改良して販売してきました。この市場が米国の景気回復の追い風もあり非常に順調に推移しています。

 そこに今年はクボタ125年の歴史で初めて、エンジン出力130~170馬力の畑作用大型トラクター市場に進出します。今春からフランスで量産して北米向けに輸出しますが、2~3年内には需要が生産能力を上回りそうなので、北米での生産も検討しています。

 それと建設機械も、スキッドステアローダーといってブルドーザーのような機械をクボタとして初めて出しました。大型トラクターもスキッドステアローダーも、これまでクボタにはなかった分野で、北米のディーラーから、やっとクボタが出してくれたと、好評です。
 ローダーは、当面、日本から輸出しますが、引き合いが多いので、ジョージア州のトラクターや芝刈り機を生産する工場の隣地約20万坪を購入しました。そこで生産する予定です。
── 大型トラクターの製造は悲願だった?
木股 北米で1100社のディーラーと契約していますが、170馬力までの商品をそろえたことで、やっとクボタ1社専属で商売できることになりました。250馬力があればなおよいので、その開発にもかかるように指示しています。設計分野の提携など、他社の経営資源の利用も視野に入れながら進めます。畑作用大型トラクターで早期に500億~1000億円の売り上げを目指しています。
── 好調な北米市場に対して、日本やアジア市場は低調です。
木股 中国は当社の手続きミスで農機購入時の補助金対象から外れていた影響が大きい。これが当局との話し合いで年初から戻りましたし、市場規模も大きいので今後の売り上げは全く心配していません。
 タイは政治の混乱もあり小規模米作農家の購買意欲は減っているので、大型米作農家や畑作農家にシフトしています。今年は従来同様の伸びに戻ると期待しています。
 一方、カンボジア、ミャンマー、ラオス、フィリピンなどタイの周辺国は、市場規模が小さいこともあり、どこも前年比1・5倍程度の高い伸び率を記録しています。特に最近進出したインドネシアやインドは、非常に潜在成長力の高い市場です。インドネシアは農業国である半面、機械化率が低く、いまだに乗用タイプではない耕運機が多く使われています。工業化で農業人口が減れば、いずれトラクター需要も増えるでしょう。一方インドは、トラクターの稼働台数は非常に多いのに、当社は出遅れ、シェアが1%もありません。現地のお客さんに合ったトラクターを投入して、1万台、2万台と販売台数を増やしていく計画です。

 ◇課題はグローバル体制

── 国内市場は縮小気味です。
木股 (食品加工なども展開する)6次産業化のサポートや農業の肩代わりビジネスなどもさらに進めていきます。例えば、熊本の販売会社が手掛けるコメのペーストでつくったパンが好評です。こうしてコメの消費が増えれば、農家の収入も増え、農機も売れます。
── 農機の無人運転も今後の一つのトレンドでは。
木股 政府の後押しもあるので、2~3年後の発売を目指しています。ほかにも麦や米を収穫するコンバインに収量センサーや食味センサーを搭載して、どの田畑が収量が多く、味の良い作物がとれるかを把握し、肥料や水の量などを加減する「精密農業」にも力を入れています。日本の農業を停滞させないようにサポートするのは我々の使命です。
── 水道関連はどうですか。
木股 老朽設備の更新や耐震化などニーズはあるのですが、自治体の財政難で厳しい状況です。そこでいまはアジアを攻めています。日系企業の工業排水処理のほか、カンボジアでは上水道整備、マレーシアではパーム油の再生処理なども手掛けています。
── 今後の課題は。
木股 グローバル経営体制の構築です。営業拠点ですら整備されているのは、北米や西欧、中国、タイくらい。マーケティングから生産、販売、メンテナンスまでの一貫した運営体制ができていません。各地のニーズを製品につくりあげていく力も弱い。市場ごとに農機に求められる機能も作物の種類も異なるので、研究開発拠点はなるべく現地に置き、現地スタッフを中心に運営していくつもりです。
── 2019年3月期の売上高目標2兆円を1年前倒しで達成しそうです。
木股 14年3月期が1兆5000億円なので、このままのスピードで18年3月期の2兆円達成を目指します。国内は少し心配ですが、欧米やインドがカバーしてくれるでしょう。2兆円の内訳は機械1・5兆円、水・環境で5000億円のイメージ。農業機械でグローバルトップ3の一角に入るのが目標です。

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A グローバル人材になろうとしていました。入社後11年筑波工場で働いた後、立候補してアメリカ工場の立ち上げをやらせてもらいました。40~50人でスタートした会社が2000人の会社になり誇らしい気分です。
Q 最近買ったもの
A ゴルフでホールインワンをしたので、一緒にプレーしていた32人のためにボールを買いました。
Q 休日の過ごし方
A 社長就任後は、ラグビー部「クボタスピアーズ」の応援をする以外は、ほとんど海外出張の移動日に充てています。
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 ■人物略歴
 ◇きまた・まさとし
 岐阜県出身。1977年北海道大学工学部卒業後、久保田鉄工(現クボタ)入社。2001年筑波工場長。05年取締役。10年サイアムクボタコーポレーション(タイ)社長などを経て14年4月代表取締役副社長執行役員。同7月から現職。63歳。