2015年

2月

03日

ワシントンDC 2015年2月3日特大号

 ◇移民政策とヒスパニック系支持 大統領選に向け悩ましい共和党

今村卓
(丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 1月から米議会の上下両院の多数派となった共和党が、移民制度改革でオバマ大統領の攻勢に翻(ほん)弄(ろう)されている。
 オバマ大統領は2012年に大統領権限で、子どものうちに親に連れられて不法入国した若者に合法滞在を認める措置を施行した。14年11月にもその若者や、米国で生まれ市民権を持つ子どもの親である不法移民にも3年間の滞在資格を与える措置を、同じく大統領権限で導入すると発表した。この措置により、1100万人超といわれる不法移民のうち500万人前後が強制送還の対象から外れた。

 共和党は11月の措置を職権乱用として反発したが、上院を民主党が制していた当時は大統領に措置を撤回させるすべがなかった。そこで、移民制度改革を所管する国土安全保障省の予算だけは15年2月下旬までの暫定予算にとどめ、新議会で大統領に改革の見直しを求めることにした。
 そして共和党は1月14日に下院で、大統領の11月の措置はもちろん、12年の措置にも予算の執行を禁じる条項を盛り込んだ同省予算案を可決した。大統領の移民制度改革に対する共和党の全面否定といえる。
 しかし、この予算案がこのまま上院を通過する可能性は無いに等しい。上院の共和党は54議席だが、民主党による予算案への議事妨害を打ち切って採決に持ち込むには60議席が必要なのだ。
 また、民主党に対し、国土安全保障省が閉鎖に追い込まれてもよいのか、という瀬戸際戦術で譲歩を迫るのも難しい。フランスでの連続テロ事件を受けて米国内でも危機感が強まり、テロ対策を担う同省は警備・警戒体制の強化に動いている。そうした情勢の中で共和党が暫定予算の期限切れで同省を閉鎖の危機にさらせば、同党の信用は地に落ちるだろう。

 ◇保守派との板挟み

 では共和党指導部は、議会を通過するはずのない予算案をなぜわざわざ下院で可決したのだろうか。そこには、二つの共存し得ない課題がある。一つは党内への影響力が大きい保守派が、不法移民に一切の恩赦を与えるなという主張を続け、譲歩を拒んでいることである。
 だがその一方で、16年の大統領選で勝利するには、移民制度改革を求めるヒスパニック系の有権者からの支持を広げる必要がある、という共和党の苦悩がある。保守派の主張を選んで不法移民対策への強硬姿勢を貫けば、12年に敗れたロムニー候補と同じ失敗を繰り返しかねない。
 オバマ大統領の不法移民対策は阻止したいが、それによってヒスパニック系有権者に敬遠されることも避けたい。「大統領権限の乱用を抑えるためにやむなく二つの措置を阻止する」というベイナー下院議長らの発言は、この矛盾を避けるための苦しい説明なのだろう。しかし、共和党指導部がどのような説明をしても、同党が不法移民対策に反対していることは隠せないし、それにヒスパニック系有権者が失望することは避けようがなかろう。
 オバマ大統領は共和党の弱みと矛盾を認識しているのだろう。大統領の攻勢が効いていることは、共和党が大統領権限の二つの措置を撤回に追い込めそうもないことで明らかである。最近のオバマ大統領の支持率の回復と議会の支持率の低迷をみると、世論もオバマ大統領の攻勢をより高く評価しているようにみえる。
 共和党が上下両院を制したとはいえ、オバマ大統領は完全にレームダック化したといえるほど両者の関係は単純ではない。今後の攻防がどうなるか、そうした認識を持ってみていく必要がありそうだ。