2015年

2月

03日

経営者:編集長インタビュー 鬼頭芳雄 キトー社長 2015年2月3日特大号

 ◇高い安全性を強みに海外展開

 工場などで重量物を運搬する巻き上げ機(ホイスト)とクレーンの国内トップメーカー。主要製品であるチェーンブロックやレバーブロックでは国内シェア6割を超える。世界でも事業規模で4番目に位置し、地域別の売り上げ構成も約75%を海外が占める。昨年8月には、売上高1億1800万ドル(2013年6月期)の北米最大級のチェーン(鎖)製造会社「ピアレス」の大規模買収を実現。好調な北米市場を強化し、積極的な海外展開に打って出ている。
── 2014年3月期まで4期連続で増収増益を達成するなど業績好調です。主力の米国市場の現状は。

鬼頭 北米市場は、幅広い産業が活況です。加えてシェール革命によってエネルギーコストが下がり、国外に分散してた生産活動も回帰している。底堅いと思います。

── 「ピアレス」買収の目的は。
鬼頭 当社の主力製品である巻き上げ機の重要な部品であるチェーンの品質強化と、北米での競争力を高めるという二つの側面があります。チェーンは巻き上げ機の部品としてだけでなく、積荷の牽引(けんいん)、固定用など幅広い用途がある製品です。北米の競合他社は品ぞろえの範囲が広いので、当社もチェーン製品などの周辺機器の販売を拡大するのが狙いです。これまでチェーンは国内で製造して輸出していましたが、現地調達比率を上げるために調達先のピアレス社と交渉していく中で買収という形になりました。
── キトー製品の強みは?
鬼頭 安全性とそれを実現するための製品の耐久性です。それぞれの国に安全規格がありますが、当社はそれより厳しい独自の安全基準を設けています。世界で販売されている同業他社の製品の中では最も価格が高いと思いますが、安全性で高い評価をいただいています。
── 海外展開はどう進めていますか。
鬼頭 できる限り現地の人材をリーダーに据え、それぞれの国や市場に合った独自のビジネスモデルを構築しています。日本からの駐在員は現地スタッフのサポートと、当社の価値観を伝える役割です。

 ◇エンタメ分野にも進出

── 国内市場はどうですか。
鬼頭 アベノミクスの効果や円安で、数年前に比べれば明るい兆しが出ていますが、国内の市場規模はピーク時に比べると半分ほどです。国内市場は安定的で大事な市場ですが、今後の当社の成長戦略を考えると、成長を牽引する市場にはなりえません。
── 円安は追い風ですか。
鬼頭 輸出採算の面では円安の恩恵は受けています。ただ、為替は大きく変動せず安定してくれることが理想です。頭が痛いのはエネルギーコストです。今は原油価格が下がっていますが、今後1ドル120~130円というレンジが定着すれば、長期にわたってエネルギーコストを賄えるのか不安です。
── 期待の分野は?
鬼頭 舞台装置などのエンターテインメント業界です。照明や音響装置をつり上げるのに当社の製品も使われています。夏の野外フェスタなどの仮設ステージを使ったコンサートなどは年々規模が拡大していて、当社の出番も増えています。

 2003年8月、米投資ファンド・カーライル・グループにTOB(株式公開買い付け)で買収され、4年後、東証1部に再上場を果たした。

── ファンドに買収され、会社はどう変わりましたか。
鬼頭 1991年が当社の業績のピークで、売り上げの90%は国内市場でした。03年はピーク時に比べ国内の市場規模は3分の1まで落ち込んだため、海外事業で成長する目算を立てていました。一方で大きな負債や赤字事業も抱えていた。そこでいったん株式市場から退出して事業構造転換の外科的手術を果たし、海外に出るための資金を獲得する。これが買収を受け入れた理由でした。
 景気回復にも支えられ業績が上がったので、幸いファンドとの軋轢(あつれき)や文化の違いは表には出ないで済みました(笑)。彼らは短期で利益を求めますが、我々は会社の持続性を考えなくてはいけません。ゴールのないマラソンを走っているのに、短距離にギアを入れるのはきつかったですが、ここで息切れしてはいけないという一心でした。
── 14年3月期の売上高418億円に対して16年3月期に580億円、将来的には1000億円の目標を掲げています。達成への道筋は。
鬼頭 自前の成長とM&Aとの組み合わせで実現しようと考えています。良い相手を見つけ、そことキトーで相乗効果を出していきたい。そのためには、今まで日本中心で進めてきた事業構造を、きちっとグローバルに事業展開できる組織に作り変えることが重要です。
── 株主資本利益率(ROE)が前期末で12・3%と、メーカーとしては高いほうです。ROEも経営目標に置いているのですか。
鬼頭 業績は常に意識していますが、数字が目的ではありません。目標は、市場の中で最も安心して使える、信頼されるメーカーになることです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 1992年に29歳で役員になりました。ちょうどバブルが弾けて30代は最も苦しかった時期です。ただ30代前半で東南アジアでの仕事に関わり始め、現地で日本では経験したことのないような熱気に触れ、海外ビジネスの面白さを味わいました。
Q 最近買ったもの
A 腹筋のトレーニング器具など健康グッズを買いました。年齢とともに健康に対する意識が出てきましたね。
Q 休日の過ごし方
A 家族は本社工場のある山梨で暮らしているので、休日はできる限り家に帰っています。
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 ■人物略歴
 ◇きとう・よしお
 東京都出身。1988年ユタ州立ユタ大学経営学科卒業。同年キトー入社。92年6月に取締役就任。専務取締役営業統括管掌兼海外本部長などを経て2006年1月より現職。51歳。