2015年

2月

10日

ワシントンDC 2015年2月10日号

 ◇地政学リスクの高まり受け 動く米国のエネルギー政策


須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 2015年の年明け1月、ワシントンでエネルギー分野においていくつかの注目される動きが見られた。

 まずは米国とカナダを結び原油を輸送する「キーストーンXLパイプライン」建設を巡る議会の動きだ。米国では、1月6日に第114議会がスタートしたが、すぐさま9日に下院で、同パイプライン建設を大統領の承認なしに認める法案が可決された。続いて上院では、12日に議事進行妨害(フィリバスター)を覆すのに必要な60票以上の賛成を得て、同パイプライン建設法案の審議を認める手続き上の議案を可決した。上院で審議が進められている。

 上下両院で過半数を占める共和党は、経済効果を重視し同パイプライン建設を推進しており、議会冒頭から動いた。これに対しオバマ政権側は、環境面への影響を重視し、現行制度で必要とされている国務省による環境面などの影響審査の結果が出るまで建設を承認しない方針だ。すでにホワイトハウスの報道官は、米議会の承認法案に対して大統領が拒否権を行使する意向であることに言及しており、早くも議会共和党とオバマ政権の対立が見られる。

 また、15年の米国のエネルギー政策見通しについて、モニツ・エネルギー長官が1月7日の講演で語っている。主要な取り組み事項として、①気候変動、②世界におけるエネルギー外交・安全保障、③米国で初めてとなる4年ごとのエネルギー計画レビュー──を挙げた。

 その中で、気候変動への取り組みについて、14年11月発表の米中温暖化ガス削減合意の成果を強調している点は注目される。モニツ長官は、この合意が気候変動分野における国際協調の議論を大きく変えたと述べており、世界の2大排出国の合意をもとに、今年末のパリにおける国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での新たな枠組み合意を推進する意向がうかがわれる。

 また、エネルギー外交・安全保障に関しては、ウクライナ危機後のエネルギー安全保障は欧州のみならず、米国の同盟国・友好国全体にかかわるもので、G7(先進7カ国)全体での議論となっていると述べた。


 ◇対ロシアの取り組み


 この問題については、国務省のハックスタイン国際エネルギー担当特使・調整官が1月8日、シンクタンクでの講演で、より具体的な言及を行っている。特に欧州地域に関しては、ロシアからのガス供給の依存度を引き下げるための取り組みを重視する姿勢を示した。

 具体例として、アゼルバイジャンから欧州へガス供給を図る「サザン・ガス・コリドー」(南回廊)計画や、バルト海沿岸諸国のLNG(液化天然ガス)受け入れ基地の計画などを挙げ、こうした欧州へのガス供給路の多様化を図るインフラの整備を促している。

 さらに、米国からのLNG輸出について、新たな供給源として市場でのアクセスが可能であるとし、また、世界の市場への供給増を通じて欧州や同盟国のガス購入者の選択肢を広げることにつながる旨を述べた。エネルギー外交面からも米国のLNG輸出を積極的に評価している点が注目される。

 ウクライナ危機をはじめとする現在の地政学的リスクの高まりは、世界のエネルギー安全保障に大きな影響を及ぼしている。こうした中、シェール革命により今や世界有数の石油・ガス産出国ともなった超大国・米国のエネルギー政策の動向は、その重要度・影響力をより一層高めている。今後も、米国のエネルギー政策論議の動向に注目したい。