2015年

2月

10日

経営者:編集長インタビュー 杉原博茂 日本オラクル社長 2015年2月10日号

 ◇クラウドで国内トップ目指す


 業務用のデータベース管理ソフトウエアなどを手がける日本オラクルが、2020年までにクラウド事業で国内トップになるという目標を掲げている。グローバルでは、米オラクルの売上高全体の5%に上昇し、米国本社も「クラウドナンバー1」を掲げている。日本オラクルの現在の売上高は、7割以上がソフト関連で、15%前後がサーバーやストレージ(データ記憶装置)などのハードウエア。主力のソフト製品を、インターネット経由でサービスを提供する「クラウド」にかじを切ろうとしている。

── オラクルが目指すクラウドとは?

杉原 一言で言うと、データベース関連のソフトや、プログラミング言語のJava(ジャバ)などを、誰でも気軽にすぐに使えるようにするということです。

 オラクルは多くのソフト製品を持っており、業種によって使い方にいろんなパターンがあります。クラウドにすれば、それらを買わずに月決めで使えます。一方で、自社でソフトやハードを持ちたい企業には、その選択肢も提供します。

── オラクルの強みは?

杉原 データベースのソフトでは、日本で44%のシェアがあります。ソフトだけでなく、サーバーなどのハード製品も扱っている。09年に企業向けサーバー事業に強みを持つ米コンピューター大手サン・マイクロシステムズを買収したためです。


 15年5月期上期(14年6~11月)の業績は好調だ。売上高は前年同期比7・6%増の781億円、営業利益は同16・5%増の226億円。ただし、クラウド契約の売り上げは、前年同期比13・3%減の11億円だった。


── クラウドを伸ばす目標とは裏腹にその売上高は減少しています。

杉原 戦略的にそうしています。企業も準備が必要です。クラウド化してデータは安全に守られるか。それがグローバルで使えるか。20年のクラウドナンバー1になるために、オラクルもお客様とともに準備をしっかりしているのが現状です。

 従来の強さを生かし、現在44%の国内シェアを20年をめどに50%にし、クラウドへの転換をオラクルが主導できるようにする。そうすればおのずとクラウド事業での国内トップも見えてくると思います。

── ソフトの売り切りではなく、月決め料金体系であるクラウドに注力すると、一時的に売り上げは減ります。これをどう乗り越えますか。

杉原 米国本社の幹部会議でも、「いまのままでいいのになぜクラウドなのか」という意見は出ました。だが、創業者のラリー・エリソン会長もマーク・ハード社長も「我々は変化しないと死ぬ。だから売り上げが減ろうが減るまいがクラウドを強化する」と言いました。

 ただ、私は売り上げが減っていいとは一切言っていません。売り上げを落とさずに、クラウドを強化するというのが与えられた使命です。

── クラウド事業では低価格のアマゾンやセールスフォース・ドットコムが先行しています。

杉原 アマゾンさんが提供しているサービスはそろえますが、正面から競争するつもりはありません。オラクルの技術は世界標準で、JavaはソニーのPS4に使われるなどオープンで、柔軟です。オラクルの製品は電気、水道、電車など社会インフラの分野でも幅広く使われており、中断や失敗が許されない場面で使われることも想定しています。

 お客様のビジネスが大きくなって自社でデータベースを持ったほうがよくなった場合は、今までクラウドを利用されているお客様をスムーズに自社内のシステムに移動できます。国内は自社データベースだが、海外事業だけはクラウドを利用するということも可能です。(クラウド専業のアマゾンやセールスフォースと異なり)お客様に選択肢を提供できるのがオラクルです。


 ◇海外展開をサポート


── 今後の課題は。

杉原 首都圏以外の販売と国際化です。地域別の売り上げを見ると、ほとんど首都圏に集中しており、地方での売上比率が低い。これからのIT(情報技術)は、全く新しいビジネスモデルを支えていかなければいけません。例えば、九州の農家が食の安全性を生かし、海外向けにネット販売するとか、北海道で外国人観光客を10カ国語で対応するような場合です。現在注目されているビッグデータやIoT(アイオーティー)(モノのインターネット)は、オラクルが最も得意とする分野であり、ビッグデータ分析ではサービスをどんどん提供できます。

── 責任領域は日本国内なのに、国際化が課題とは?

杉原 いま多くの日本企業がM&A(合併・買収)や単独進出などさまざまな形態で海外に出ています。そのなかで日本企業の多くは、現地法人に経営を任せ、同じ会社なのにITインフラをばらばらに買っています。これは日本企業の競争力を著しく落としている。欧米のグローバルカンパニーでは考えられない話です。

 グローバルに事業を展開する場合、在庫管理や営業、購買などで共通のIT基盤がないと、的確な分析はできません。日本企業が稼ぐ力をどう増やしていくのか、お客様と一緒になって考えていきます。

(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ベンチャー企業で、北米事業を任されていました。全米に販売網をつくり、シリコンバレーの企業の買収も経験しました。

Q 最近買ったもの

A ブルーレイ(BD)レコーダーを買いました。すぐに録画できるうえ、容量が2テラバイト あるので、たくさんの番組を録画できるのが気に入っています。

Q 休日の過ごし方

A 体を鍛えています。米国にいた時にタバコをやめたので、十数キロ増えました。あとは音楽鑑賞です。

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 ■人物略歴

 ◇すぎはら・ひろしげ

 大阪府出身。1982年フォーバル入社。2001年EMCジャパン入社。09年シスコシステムズ入社。10年日本ヒューレット・パッカード入社。13年10月米オラクルに入社、シニア・バイスプレジデント。14年4月から現職。54歳。