2015年

2月

17日

ワシントンDC 2015年2月17日特大号

 ◇米国とキューバの歴史的転換 存在感取り戻したオバマ外交


篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)


 1月21・22日、米国とキューバの国交正常化に向けた初の高官協議がキューバの首都ハバナで開催された。協議では移民問題や両国の大使館設置に向けて話し合われた。両国の意見に溝は残ったままであるが、米国のジェーコブソン国務次官補は協議後の記者会見で「重要なステップ」と評価した。

 その約1カ月前の2014年12月17日、ワシントンでシンクタンクとの会合が終わりオフィスに戻る途中、ビルに設置されているテレビから「Obama moves to normalize relations with Cuba( キューバとの国交正常化)」とのニュースが流れ、目を見張った。米国民の驚きは大きく、両国政府による発表以来、キューバに関するニュースを見ない日はない程の注目を集めている。

 オバマ政権は今回の高官協議に先駆け、1月16日からキューバに対する通商や渡航の制限を大幅に緩和すると発表。米国のキューバ系移民らによるキューバへの送金の限度額が年間2000ドルから8000ドルに引き上げられ、家族訪問や政府職員の公務など、特定の目的を持った米国人の渡航制限が解除された。また、キューバへの旅行者は米国へ400ドルまでの土産物を持ち帰ることができ、アルコール・たばこ類も100ドルを限度に米国内へ持ち帰ることができるようになった。

 渡航者のみならず、米国企業にも新たなビジネスチャンスが見込める。従来キューバで使用不可であった、米国発行のクレジットカードを利用できるようにするほか、金融機関で決済口座の開設が可能になる。国交正常化交渉発表直後にキューバを訪問した知り合いによると、ハバナでは現在も多くのレストランや店舗ではクレジットカード端末すら導入されていないのが現状という。

 今回の国交正常化には、残り2年となり、ふっ切れたようなオバマ政権の積極的かつ大胆な政治的意図や広報戦略が見てとれる。原点回帰とも言えるオバマ「対話外交」のレガシー作り、レームダック化からの脱却、16年の次期大統領選を見据えた民主党の支持拡大に向けた布石などである。

 

 ◇産業界とラテン系の支持

 

 14年の中間選挙で民主党が歴史的な大敗を喫した一つの要因は、前回の大統領選で民主党を支持していた多くのラテン系の票を失ったことである。オバマ大統領は中間選挙直後に大統領令行使による「移民救済措置」を実施し、多くのラテン系から支持を得た。今回の国交正常化も、経済的・外交的にも、米国のラテンアメリカ全体への影響力の再構築、および将来のビジネス・経済利益に関わるものであり、米産業界から評価を得ると当時にラテン系からの支持を更に高めている。

 また米国では今回の国交正常化交渉に好意的なメディア報道も多い。特にテレビ報道では連日のようにハバナの美しい町並みを映し、米国人の渡航規制緩和により高価なキューバ葉巻や米国では買うことのできないHavana Club(ラム酒)などを国内へ持ち込むことができるなど、「カリブ海の真珠」キューバへの憧れを抱かせるような報道ぶりである。

 中間選挙敗退後初の一般教書演説を前に、オバマ大統領が立て続けに発表した大胆な方針転換には賛否両論があるものの、政治への関心が低い層からも注目を集め、多くの国民の支持を得始めている。一般教書演説後に各メディアが実施した世論調査によると、オバマ大統領の支持率は1年半ぶりに50%を回復した。

 ここに来て単なるレームダック政権ではないとの見方も一部出始めており、好調な米経済に加え、外交面での手腕も注目されている。