2015年

2月

24日

経営者:編集長インタビュー 中村悟 M&Aキャピタルパートナーズ社長 2015年2月24日号

 ◇中堅企業の後継者不足に勝機

 中堅・中小企業の事業承継に特化した独立系M&A仲介専門会社。年間成約件数は年々増え、2014年9月期は35件と過去最高だった。

── どんな特徴がありますか。
中村 一つは料金体系です。同業他社では着手金や企業評価料、最終契約に至るまでの月額報酬がかかるケースが多いのですが、当社は「基本合意」、結婚でいうと婚約の時点で成功報酬予定額の1割、最終契約に至ると残り9割をいただく仕組みです。
 手数料にも特徴があります。株式価額が5億円、負債15億円の会社の場合、同業他社はレーマン方式といってそれらを合計した20億円をベースに算出します。しかし当社は、株式価額の5億円だけをベースに算出します。すると料率にもよりますが、当社の手数料は同業他社の3分の1から4分の1になります。
── 「安かろう、悪かろう」と思われるデメリットもあるのでは?

中村 会社売却の決断は、創業者にとっては一大事。設立数年の会社に着手金を払って売却を任せようとはなりません。オーナーが相談しやすい料金体系を追求したのが今の姿です。ただ、知名度や信用が大事な業態なので、創業当初は仕事を任せてもらえませんでした。2期目(07年9月期)と3期目の終わりに倒産寸前までいきました。個人保証をしていたので自己破産を想像しました。

 ◇成約100件目指す

── この仕事を始めた理由は。
中村 積水ハウスで地主さんの相続対策や資産運用を手掛けるなかでM&Aを勉強しました。大きな不動産を動かしているという自負はありましたが、M&Aの世界を知り、ぜひこの仕事をしたいと思いました。M&A仲介会社への転職を考えましたが、経験者でないと採用されづらいため独立しました。
── 市場をどう見ていますか。
中村 中堅・中小企業の社長が高齢化し、後継者不足が大きな問題になっています。後継者がなく廃業を余儀なくされるケースもあります。この解決策として、親族や役職員ではなく第三者に事業を引き継がせるのが「事業承継型M&A」です。承継した会社は、オーナーに株式価額分を現金で支払い株式を引き取る。オーナーの個人保証や負債も引き継ぎます。
 帝国データバンクによると、日本の株式会社約242万社のうち社長が60歳以上の会社は約117万社、うち後継者が不在なのは約60万社です。このうち利益を計上している約18万社が我々のターゲットです。対して当社の成約実績は年35社(前期)。東証1部上場で中堅・中小企業に特化したM&A仲介会社はあと1社しかなく、その会社の実績と合わせても200社に届きません。
── 顧客開拓の方法は。
中村 1年に3回程度、大規模なセミナーを催し、その来場者にダイレクトメールを出すなどしています。上場後は、ホームページを見ての問い合わせも飛躍的に増えました。
 引き合いは買い手の方が多く、「このエリアで、こんな会社を買いたい」という膨大なニーズを蓄積しています。売却を検討するオーナーが現れたら良い相手を紹介する流れです。
── 成約実績の多い業界は?
中村 成約実績の約4割が調剤薬局です。ほかに介護、小売り、物流、通販、IT、食品卸売業、住宅、アパレルなどでも実績があります。いまどきM&Aを考えない会社は少なく、国内市場でシェア拡大や新規事業進出を実現するには、M&Aに勝るものはありません。
── 日ごろ付き合いのある銀行ではなくM&A仲介会社に依頼する理由は。
中村 中小中堅企業では、銀行に相談をして、融資姿勢を変えられるのが怖いというオーナーが結構多い。銀行側も、積極的にはM&Aを提案しません。「失礼な」と怒り出されるかもしれないからです。一方、専門会社の当社は「M&Aはどうですか」と提案し、「帰れ」と言われたら帰るだけです。
── 仲介契約をしてから成約に至る割合は?
中村 3~4件に1件です。同業他社と異なり、仲介契約時に着手金が発生しないので、仲介契約後に「業績が落ち込んだ」「家族に反対された」などの理由でやめられることもあります。
── 今後ライバル会社が増えるのでは。
中村 銀行や証券会社も当然意欲は示しています。そうした金融機関にはすでに取引先の口座があり、オーナーとの関係も強いので、本気で取り組み始めたら怖い存在です。ただ実際は、M&Aの仲介で利益を上げるのは難しいのではないでしょうか。当社のように単一業務としてやるのとは違い、多くのビジネスを手掛ける金融機関が、1年後に成果ゼロもあり得る仕事に、どれだけの人員を割けるのか疑問です。
── 今後の目標を。
中村 19年9月期までに、安定して100件を成約できる会社にすることです。そのための課題は人員。この仕事は、一つの案件に膨大な時間と労力がかかります。年100件となると、コンサルタントは60~70人必要。現状の25人ではとても足りません。現在の1件当たりの成功報酬は、数千万円から数億円です。もっと大きなステージにも挑戦したいですね。
(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 32歳で起業し、仕事漬けの毎日でした。
Q 最近買ったもの
A 買ったのではなく、あげました。東証マザーズから東証1部への指定替えで流通株式比率を上げる必要があり、持ち株を売却しました。その売却益の一部を私と妻の両親など6人に200万円ずつあげました。
Q 休日の過ごし方
A 土曜日の午後は仕事をしますが、土曜日の午前と日曜日は4歳の娘と自宅近くの公園で遊び、ランチはいつも、とんかつかうどんです。
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 ■人物略歴
 ◇なかむら・さとる
 福岡県出身。1995年工学院大学工学部建築学科卒業、積水ハウス入社。2005年10月M&Aキャピタルパートナーズを設立し社長に就任。13年11月に東証マザーズ上場、14年12月に東証1部へ市場変更した。41歳。