2015年

3月

03日

ワシントンDC 2015年3月3日特大号

 ◇予断を許さない対イラン法案 大統領と制裁派議員の対立


堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)


 イランの核開発疑惑を巡る「P5プラス1」(国連安全保障理事会常任理事国である米・英・仏・露・中に独を加えた6カ国)とイランとの協議は、すでに一度延長された2014年11月24日の交渉期限までに合意に至ることができなかった。核開発の縮小とその見返りとなる制裁緩和の実現を目指して今年3月末までに「枠組み合意」、6月末までに「包括合意」に至るべく、その交渉期限が延長されている。

 対話による外交政策を通じてイランと最終合意に至り、これを自らの政権の外交上のレガシー(実績)として残したいオバマ大統領に対し、その交渉姿勢を「手ぬるい」として更なる追加制裁を課すべきとする声は、議会共和党のみならず一部民主党にもある。昨年の中間選挙で共和党が米議会上下両院で過半を占めたことを機に、議会で追加制裁法案が可決される機運が高まっていた。

 オバマ大統領は1月20日の一般教書演説で「交渉が継続する中でイランの態度を硬化させかねない法案を通すならば大統領拒否権を発動する」と議会の動きを牽制(けんせい)した。だが、まさにその翌日に共和党のベイナー米下院議長が突如イスラエルのネタニヤフ首相を米議会に招待し、上下両院合同本会議での演説を要請した旨を発表し、波紋を呼んだ。

 対イラン強硬派で知られ、オバマ大統領とも何かとソリが合わないとされるネタニヤフ首相をこのタイミングで招く目的は、紛れもなくベイナー議長を中心とする議会共和党によるオバマ外交政策へのあてつけだ。議会演説でイランの脅威を強調させることで、対イラン追加制裁法案の早期可決に弾みをつけようとするものと捉えられた。

 ホワイトハウスは翌22日に、訪米するネタニヤフ首相とは会談しないと発表。その理由を3月17日に迫ったイスラエル国内の総選挙に絡めて「選挙直前に会うことは海外の選挙に影響を与え、内政干渉にあたるリスクがあるため」とした。ネタニヤフ首相側も当初招請を受けた2月11日ではなく、かねてより別の目的で予定されていた自身の訪米日程に合わせて3月3日に議会演説を行うとすぐさま日程変更を行ったが、この背景に両国間でどのような駆け引きがあったかは定かではない。


 ◇足並みの乱れも


 一方、ベイナー議長によるネタニヤフ首相の招請は、追加制裁法案の早期可決を目指す勢力にとっては予想外の結果をもたらすことになった。つまり、抜き打ち的な招請を行って党派的な対立の構図を議会に持ち込んでしまったために(オバマ大統領が先に拒否権発動を示唆したためともいわれるが)、元々追加制裁法案に賛成していた上院民主党議員が法案の早期可決に反対する側に回ってしまったのである。

 1月27日には追加制裁法案策定者の一人であるメネンデス民主党上院議員をはじめ、これを支持していた一部民主党上院議員が、核協議の期限以前での法案決議は目指さない旨を書面で大統領に伝えることになった。一部民主党議員の賛同を得られない限り、大統領拒否権を再度覆すだけの票、すなわち上下両院での3分の2以上の賛成を集めて法案の再可決を図ることは事実上困難だ。この結果当該追加制裁法案の採択は少なくとも3月末まで遠のくこととなった。オバマ大統領にとっては議会の動きを、たとえ短期間にせよ封じ込めることに成功したことになる。

 とはいえ、肝心の核協議の方は期限が迫りつつある中、依然として合意点が見いだせないままにある。合意に至らず、最終的に法案が可決される可能性は残っており、予断を許さない状況だ。