2015年

3月

03日

経営者:編集長インタビュー 後藤夏樹 エス・エム・エス社長 2015年3月3日特大号

 ◇高齢社会の情報インフラ企業目指す


 医療・介護分野に特化した人材紹介や求人広告、資格などのウェブサイトを運営している。全国に専門のコンサルタントを配置し、ITサービスの枠を越えた情報提供が奏功、創業2期目の2005年3月期から前期まで10期連続の増収増益を達成。15年3月期は売上高156億円、経常利益25億円を見込む。

── ビジネスモデルを教えてください。

後藤 我々の事業の起点は、社会のニーズに即したサービスを提供することです。高齢化が急速に進む日本で求められる事業領域として、医療、介護、そしてアクティブシニア(仕事や趣味に対して積極的に参加する高齢者)の三つを定義しました。この各領域で、病院や介護事業者などの事業者、看護師やケアマネジャーなどの従業員、そして患者やその家族を顧客として想定し、インターネットを中心にサービスを提供する情報インフラ企業であることを目指しています。

── 主な事業の現況は。

後藤 人材紹介サイトは、03年にケアマネジャーで立ち上げ、その後、理学療法士、作業療法士と対象を拡大してきました。介護分野の人材紹介の売り上げが全社の7%を占めます。05年に始めた看護師の人材紹介は、専門の人事部門を持たない病院のニーズに応えることで看護師紹介市場の25~30%(当社推計)を占めるまでに成長しました。当社売上高に占める割合も60%に達します。

 こうした転職の人材紹介・求人案内といったサービスは、顧客が頻繁には利用しないもので、「非日常」の事業と位置づけています。さらにケアマネジャーや看護師向けのSNS(交流サイト)やネット通販など、顧客が日ごろから利用できるサービスを「日常事業」として取り組んできました。

── 中小介護事業者向けの経営支援サービスもしています。

後藤 まず手掛けたのが、介護事業者が国民健康保険団体連合会(国保連)に対してウェブ上で保険料を請求できるシステムです。大手情報システム会社の10分の1ほどの価格に設定したことで喜んでいただき、一気に顧客を広げました。

 14年2月からは、中小事業者が8割を占める介護事業者の経営をさらに支援するため、保険料請求のほかに売り上げ管理やダイレクトメールの作成などさまざまな機能を加えたシステム「カイポケ」を展開しています。この分野が将来的には人材紹介以上の実績に拡大すると見込んでいます。現在は約1万の事業所と契約していますが、機能をさらに追加し、当社が潜在顧客と考える残り約8万の中小事業者のうち半数を獲得することを目指します。


 ◇満足度と収益性の二面で


── 競合が多い人材紹介業でどのような差別化を心掛けていますか。

後藤 参入企業は多いですが、みなさん苦戦しています。というのも人材紹介は、求職者と事業者のマッチングに成功すると、求職者の想定年収の一定割合を得る仕組みですが、看護・介護職の場合、他業界に比べて年収が低く、我々に入る手数料も相対的に低いからです。

 一方で看護師紹介では、10年前に事業を始めたとき、16の事業所を設置し、全国を一気にカバーしたことが強みになっています。16拠点のコンサルタントが、転職検討者と病院などの情報を多く集めて精度の高いマッチングに努めています。

── 台湾で処方薬宅配サービス会社を買収したほか、スリランカ、マレーシアなどにも進出しています。海外展開の方針は。

後藤 アジアも今後高齢化が予想されるため、将来的な市場として期待できます。買収会社や提携会社を通じて、各国の制度や環境に合わせた手法で攻めていく考えです。

── 今後の展開は。

後藤 医療情報専門サイトを運営するエムスリーと共同で設立したエムスリーキャリアを通じ、医師や薬剤師の人材紹介サービスも拡大しています。このほか、10年、20年先に向けて人材紹介、介護事業者の経営支援に次ぐ第3の柱となる事業の開発に取り組んでいて、SNSをはじめ、現在30の新規事業を運営しています。これらの事業を軌道に乗せるために割いている人員は約200人で全社員の3分の1です。必要となる人材は、自律して考え、行動できる人であり、戦略的な思考の養成など多角的な観点での育成に努めています。

── 新規事業では予算や売り上げ目標をどう管理しているのですか。

後藤 立ち上げた事業すべてに採算を求めているわけではありません。「顧客の満足度」と「収益性」という二つの目的を設定し、各事業ごとに評価の比重を変えています。

 例えば、SNSは会員同士が交流して情報交換するためのものですから、会員数や利用率に重きを置きます。収益向上のために広告を過剰に掲載することはしません。その一方、収益向上を追求するのが人材紹介やネット通販です。事業ごとに目的を明確にし、SNSを利用するユーザーが、転職などを検討したときに当社のサービスを利用する流れを作っていきます。こうして事業全体を通じ、高齢社会の情報インフラとして貢献していきたいと考えています。

(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=藤沢壮・編集部)


 ◇横顔


Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 実は27歳まで学生でした。映画監督になりたかったのですが、挫折してしまい、その後、ニューヨークのビジネススクールでMBAを取得しました。

Q 最近買ったもの

A ものにはこだわりがないのですが、同じものをどれだけ安く買えたかを妻と自慢し合っています。買うのは日用品や健康器具などです。

Q 休日の過ごし方

A 空手道場に通っています。そのために自宅でもストレッチを欠かしませんし、ジムにも通っています。

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 ■人物略歴

 ◇ごとう・なつき

 東京都出身。2003年ニューヨーク私立ペース大学大学院MBAフィナンシャルマネジメント卒業、04年アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス入社。07年エス・エム・エス入社、09年取締役、14年4月から現職。38歳。