2015年

3月

10日

ワシントンDC 2015年3月10日号

 ◇党内穏健派で有力者が乱立 混戦の共和党大統領候補争い


今村卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長)


 2016年の大統領選の共和党の指名候補争いの初戦は、来年1月中旬のアイオワ州党員集会である。まだ11カ月も先だが、同党の候補者レースは8年ぶりの政権奪回に向けて早くも幕を開けて熱を帯びつつあるようだ。

 同党支持者の間で一定の人気がある顔触れの中では、2月中旬時点で正式に出馬を表明した候補者はまだいない。だが、14年12月にジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が出馬の検討を表明し、それに触発されてか他の有力候補も動き始めた。

 1月にはクリス・クリスティー・ニュージャージー州知事やスコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事が資金集めの母体となる委員会などを設立、ランド・ポール上院議員やマルコ・ルビオ上院議員も選対チーム幹部の人選を進めるなど出馬準備への動きが加速している。

 共和党の大口献金者や影響力の大きい保守系政治団体の動きも活発だ。1月下旬には大富豪で知られるコーク兄弟が支える保守系団体が会合を開き、共和党候補の支援に約9億ドルの選挙資金を提供する計画を表明した。これは12年の共和党候補だったミット・ロムニー氏が選挙運動で使用した金額の2倍以上である。

 とはいえ、肝心の同党の候補者レースは抜きんでた候補者が現れない混戦だ。2月中旬の共和党支持者に対する世論調査によれば、首位はマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事の17%で、その後をブッシュ氏やポール氏、ウォーカー氏が11~12%で追い、クリスティー氏やルビオ氏は5~6%の支持にとどまる。


 ◇ブッシュ氏の伸び悩み


 混戦となっている最大の理由は、党内の穏健派に属する候補者の多さだろう。同派は党内本流だが、ブッシュ氏、ウォーカー氏、クリスティー氏、ルビオ氏など有力候補が多く残っている。今後、同派内の競争に勝ち残る候補が同党のレースを制する可能性が高いが、絞り込みが進むまでは混戦が続くことになる。

 逆に穏健派以外の有力候補は、他派まで支持が広がっていない。特にハッカビー氏は、党内で一定の勢力である宗教右派の唯一の有力候補として今は首位だが、同氏の主張が穏健派に支持されるとは考えにくく、頭打ちになっていく可能性が高い。

 共和党にとって、この混戦の先行きへの不安は大きいだろう。現時点では、本選挙で無党派層の支持を幅広く集められる候補がいない。世論調査でも、主な有力候補は全員、民主党の最有力候補のヒラリー・クリントン前国務長官に支持率でリードされている。

 とりわけ大きな誤算は、一時はフロントランナーになりかけたブッシュ氏の支持の伸び悩みだろう。父と兄が大統領を務めたというブッシュ家のブランドは、一方で共和党を衰退に追い込んだブッシュ前大統領への厳しい評価に相殺されている。

 ブッシュ氏も、兄と父の政権のメンバーや関係が緊密だった専門家を自らの外交ブレーンに多数招きつつ、最近の外交に関する演説では「私は私自身」と強調して兄や父の影響を否定するなど対応に矛盾が見られる。独自の政策や方向性を示せなければ、支持の伸び悩みは長引く可能性がある。その間に、現在はダークホースとなっているポール氏、ウォーカー氏やルビオ氏が成長を遂げ、人気候補に「化ける」可能性はある。

 世論調査で民主党と共和党の支持率に大差がなく、オバマ政権の支持率は持ち直したとはいえ不支持率が上回る。この先行きが非常に不透明な共和党の候補者レースの勝者が次の大統領になる可能性は十分にある。その意味でも、このレースからは本当に目が離せない。