2015年

3月

10日

経営者:編集長インタビュー 三浦和哉 日立キャピタル社長 2015年3月10日号

 ◇社会の変化に合わせた「金融サービス」提供


 日立グループの金融サービス会社、日立キャピタルが好調だ。国内のリース市場が伸び悩むなか、2015年3月期決算は売上高に当たる営業収益が前期比12%増の1428億円、経常利益が同17%増で2期連続過去最高益の392億円となる見通しだ。海外事業の伸びや円安などが業績を押し上げたという。


── 海外事業が好調です。

三浦 消費者向け販売金融でトップシェアの英国を中心に、堅調に推移しています。09年度までは営業利益で国内事業の割合が9割を占めていましたが、14年9月中間期には海外事業の割合が初めて50%を超えました。ただ、今後も海外の比重をどんどん高めていくということではなく、5割前後でバランスを取りながら展開していきたいと考えています。

 好調な欧州に加え、今後は特に米州とアジアに力を入れます。米州では昨年5月にカナダ東部に強い現地のリース会社を買収するなど、東部を中心に医療や商用トラックの販売金融などを手掛けてきました。今後も現地企業の合併・買収(M&A)を選択肢に入れながら、西部に対しても積極的に働きかけを強めます。

 アジアは全域を重視しています。例えば中国では、これまで子会社を通じて病院や教育機関などの公共案件を手掛けてきましたが、近年、中国国営銀行系のリース会社や重慶市の直轄企業との提携に動いたことで、同国内の資金やビジネスの流れがさらによく見えるようになりました。海外展開に当たっては、オペレーションの「現地化」を重視していますが、現地には現地の進め方があることを再認識しました。中国市場は巨大なボリュームがありますから、政治や経済の大きな流れに沿って展開していきたいと考えています。

── 国内市場は縮小しています。

三浦 自動車や住宅を購入する世代や人口が減りました。従来主流だった住宅ローンや自動車ローンといった消費者向け販売金融の比重が低下しています。特にこの10年間で事業内容や業態は大きく変わりました。リース会社には、ファイナンスの役割だけでなく、金融商品の提供に伴って生じるサービスの役割が大きくなっています。

── どう変わっていきますか。

三浦 「金融サービス」のうち、「金融」に関しては、環境の変化に合わせてやれることとやれないことの取捨選択を進めています。日立グループの従業員向け住宅ローンや自動車ディーラーと提携して進めてきた自動車ローンはすでにやめました。一方で、自宅を担保にすることで返済期間を終身に設定できる融資「リバースモーゲージ」やネットを使った自動車ローンなどを検討しています。自動車や住宅も必ずしも必要とされなくなったわけではなく、例えば自動車なら、カーシェアリングで使われたり、電気自動車が蓄電池として利用されたりするなど利用法が多様化しているのです。こうした変化に合わせた事業を模索しています。

「サービス」については、当社でなければできないことを伸ばしていきたいと考えています。メーカー系の金融サービス会社として、製品やモノの流れに精通していると自負しています。加えて、顧客と接しながら顧客が何を求めているかを絶えず考えてきました。今は顧客自身が自分の抱える課題を解決するために何が必要なのかを明確に思い描くことが難しい時代です。顧客と同じ立場に立って課題の解決方法を一緒に作り出していきたいと考えています。

── どんな事業に力を入れますか。

三浦 13~15年度が対象の中期経営計画では六つの注力分野を掲げています。このうち、インフラ事業など「社会イノベーション事業」では、設備や資機材を調達するための資金だけでなく、事業のリスクやリターンの管理をはじめ、プロジェクトをより円滑に進めるための多様なサービスが求められます。

 他の注力分野でも、環境・再生可能エネルギー分野では発電システムのリースとともに、日立製作所や日立グリーンエナジーと共同で「日立ウィンドパワー」を設立し事業者としてプロジェクトに携わるなど、一歩踏み込んだ取り組みを進めています。ヘルスケア分野でも、ファンドへの出資を通じて介護施設の運営や病院の経営支援に携わり、新たなモデルへの足場を増やしています。アグリ(農業)分野では、製造業の視点からより付加価値の高い生産物を作れるようにするためのソリューションを提案します。


 ◇働き方も変える


── 「働き方改革」も進めています。

三浦 社内の結束力を強め、顧客のニーズにより高いレベルで応えられるようにする狙いです。その一環で、経営陣と社員が直接語り合う「コミュニケーションロードショー」を14年に国内外で30回以上開催しました。昨年9月には、東京都内に分散していた本社や営業拠点、グループ会社の事務所を集約。これを機に、自分の机を決めない「フリーアドレス」を導入しました。

 その結果、今まで以上に社員間のコミュニケーションが活発になり、営業担当者が聞き取ってきたニーズや互いの強みを部署を超えて共有できるようになったことで、サービスの幅が広がる効果が出ています。

(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 企画部門に配属された北海道営業本部から関東圏の営業を担当することになり、現場の最前線で打ち込むうち、あっという間に時間が過ぎた気がします。

Q 最近買ったもの

A ゴルフのドライバーです。顧客から「上達の秘訣は『ウン・ドウ・カイ』(運と道具とコースに出た回数)だ」と教えられ、まずはクラブを1本新調しました。

Q 休日の過ごし方

A Jリーグシーズン中は柏レイソルの応援によく出掛けます。国内外の出張が多いものですから、今後は体力をつけるためにもっと運動するよう心がけたいです。

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 ■人物略歴

 ◇みうら・かずや

 1953年生まれ。北海道出身。76年小樽商科大学商学部卒業後、日立キャピタル入社。2003年リテール事業部門ビジネス機器事業開発部長、執行役常務、05年同副社長などを経て09年4月から現職。62歳。