2015年

3月

17日

経営者:編集長インタビュー 福田修二 太平洋セメント社長 2015年3月17日号

◇セメント原料の廃棄物活用を推進


── セメント需要の現状は。

福田 2014年度は4600万トン程度になりそうです。国内のセメント需要は1990年度に約8600万トンのピークを記録しましたが、その後は10年度の4160万トンまで、20年かけて半減しました。転機となったのは11年3月の東日本大震災です。復興需要に加えて、インフラに対する防災・減災への意識の高まりが需要を押し上げたと考えています。ただ、このところは需要の伸びに一服感が出ています。昨年4月の消費増税の反動減や、人手不足による施工の遅れが響き、13年度の4770万トンから減少する見込みです。

── 2020年に東京五輪が開かれます。今後の需要の見通しは。

福田 インフラ整備の需要が16年以降に本格化し、20年までは年間4600万~4800万トンで推移するとみています。課題はその後です。東京五輪はいわば特需であり、震災復興の需要も五輪までにはある程度、メドが付いてきます。1割程度は需要が落ちる可能性があり、4300万トン程度になると見込んでいます。

 ただ、日本で将来にわたって、4000万トンを切る水準まで需要が落ちるとは考えていません。建設から50年を経過した高速道路が増えるなど、インフラ維持の問題が生じるほか、ゲリラ豪雨のような雨も降るようになり、防災・減災への取り組みがより重要になります。1億2000万人超の国民が今後も快適な生活を送るためには、一定のセメント需要は不可欠です。セメント産業は財産、命を守っていく産業なのです。

 連結売上高8402億円(2014年3月期)と国内最大手の太平洋セメント。同社は今、リサイクル資源として産業廃棄物や一般廃棄物を受け入れる「環境事業」に力を入れている。セメントの主原料は石灰石や粘土、ケイ石、鉄だが、多くの廃棄物にはこうした成分が含まれているため、原料として再利用できるのだ。また、1450度にもなるロータリーキルン(焼成窯)でセメントを焼成する工程では、廃タイヤや廃プラスチックなども燃料になる。

── どれぐらいの廃棄物を再利用しているのですか。

福田 当社では13年度の実績で、セメント1トン当たり430.1キロの廃棄物や副産物を使っています。主には石炭火力発電所から出る石炭灰や建設発生土などですが、実は下水汚泥や生ごみも原料として活用しているんですよ。下水汚泥や生ごみの成分が、粘土に非常に似ているのです。セメントとして再利用することで、廃棄物の処理に一役買っています。

 特に、生ごみなど一般廃棄物の焼却灰を原料として5割以上使用したセメントを「エコセメント」と呼び、東京たまエコセメント化施設(東京都日の出町)での生産を当社が受託しています。こうした廃棄物や副産物の比率をさらに高めるよう取り組んでおり、セメント生産全体に占める廃棄物や副産物の原料の比率は将来、5割までは上がるのではないでしょうか。


 ◇ようやく「健康体」に


── 青色発光ダイオード(LED)の原料となる高純度の窒化カルシウム「チッカライト」や、パワー半導体の原料の超高純度炭化ケイ素など、最先端製品の原料も作っています。

福田 チッカライトのベースとなる原料は石灰石から取れるカルシウムで、炭化ケイ素のベースはケイ石です。天然の石灰石やケイ石の純度にはバラつきがありますが、セメント会社はそれらを採掘して微細な粉にし、最終的に一定の品質のセメントに仕上げています。鉱物を細かな粉にして純度を上げる、セメント会社の技術が生きている分野なんですよ。

── グループで中国やベトナム、米国など環太平洋の6カ国に工場を展開し、海外の売上高比率は2割弱です。海外事業の方針は。

福田 日本のような成熟国と異なり、海外には高成長によってセメント需要が伸びる国はたくさんあります。日本の最新鋭の工場を作り、その国の将来の発展に貢献していきます。価格競争をするつもりはなく、品質とブランドには自信を持っています。

 これから当面、東南アジアが伸びると見ていますが、欧米大手との競争が激しい地域でもあります。多額の資金が必要ですが、M&A(合併・買収)も考えなければいけません。中国には現在、南京など3工場がありますが、市況に変化も出てきており、昨年9月に現地企業とのセメント合弁事業契約を解除しました。あれだけの市場は魅力ですが、当面は3工場体制でやっていきます。

── 長く財務体質の改善が課題でした。

福田 合併によって98年に太平洋セメントが発足した当時、売上高は1兆円にもかかわらず、有利子負債は9000億円もありました。15年3月末にはようやく4100億円程度まで減る見通しです。しかし、それでもまだ多い。負債の支払い余力を測るネットDEレシオ(純有利子負債資本倍率)は現在1・5倍(14年9月末)ですが、1倍にまで下げて初めて健康体になると考えています。

 海外・国内で将来に向けた新たな投資を行うと同時に、我慢をお願いしてきた株主に配当などの面でどう対応するかも議論を進めています。

(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)


◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代後半の経理課長時、在籍していた小野田セメントが秩父セメントとの合併を検討することになりました。トップの特命で極秘の仕事を扱い、誰にも相談できません。常に自分の判断を迫られる苦しい時期でしたが、とても勉強になりました。

Q 最近買ったもの

A ゴルフのドライバーです。高反発のドライバーが発売されると「うまくなるかな」とつい手が伸びます。

Q 休日の過ごし方

A 近くに住む2人の孫がしょっちゅう遊びに来ます。遊びの相手はくたびれますが、とても癒やされます。

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 ■人物略歴

 ◇ふくだ・しゅうじ

 山梨県出身。福島大学卒業後、1974年小野田セメント(現・太平洋セメント)入社。経理部長、北陸支店長、執行役員(人事部長)、取締役常務執行役員などを経て、2012年4月から現職。63歳。