2015年

3月

24日

ワシントンDC 2015年3月24日特大号

 ◇注目を集めるイラン核協議 大統領選やビジネスにらみ


篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)


 オバマ大統領は3月2日、長引くイランとの核協議に関し「最終合意の可能性は50%以下」と引き続き慎重な姿勢を示した。

 イラン側は、国連および欧州連合による経済制裁の早期解除を求めている(硬派の米国に見切りをつけてか、米イラン制裁には言及なし)。同国のウラン濃縮能力を縮小することで、少なくとも今後10年間は核兵器の潜在開発スピードを現在の数カ月程度から1年以上に減速するよう求めるP5プラス1(国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国)との間にはいまだ埋まらぬ溝があるようだ。

 イラン核交渉の行方には、ビジネス業界も気をもんでいる。対イラン経済制裁は日系企業にとっても他人事ではない。かつては天然ガス由来品の一大輸出国であったイランとの貿易が実質不可となったり、同国との金融取引が禁止されたことで、イラン企業に対する債権の回収にも支障が生じたりなどの話を聞いたことがある。

 ビジネス界の焦りをよそに、ワシントンでは元々の「オバマ政権対議会」の構図に、演説にやってきたイスラエル首相までが加わり、イラン、P5プラス1の両サイドが交渉期限の6月末に最終合意に到達する見込みがあるのかさえ見えにくくなっている。

 事態が混迷を来す理由の一つには、次期米大統領選をにらんだ民主・共和両党による政治的パフォーマンスの激化という内政的要素がある。「オバマ大統領の外交実績」を争点に持ち込みたい共和党は、追加制裁案や制裁緩和の阻止案などを通して、オバマ政権が推し進める核交渉の価値自体に疑問を呈する。

 一方で議論が長期化すれば、民主党最有力候補と予想されるヒラリー・クリントンにとっても、オバマ政権下、国務長官としてイラン核問題に深く関与した経験を売り込む絶好の機会となる。その上、イランによる核技術保有を断固拒否するユダヤ国家イスラエルの訴えに同情を示すことで、米国内ユダヤ系有権者にアピール、という側面も含まれる。


 ◇交渉妥結見込む声も


 そんな中、当地シンクタンクやメディアの間では、核交渉には進展が見られ、最終的には①イランによる核技術の限定的保持、②20年以上にわたり国際原子力機関による厳密な査察プロトコルの受け入れ、③前述2点の順守を確認した上での段階的な経済制裁解除──を基本に交渉妥結を見込む声も聞こえ始めた。

 さらに、2014年6月以来続く油価下落によって毎月20億ドル相当の財源縮小に直面するイラン国内の企業も、信用不足や、20%近い高インフレに苦しんでおり、国内不良債権の比率は20~30%に達するという分析もある。今後イラン国内においても早期合意への圧力が強まりそうだ。

 交渉妥結の可能性は十分で、妥結後に想定しうる事態に備え動く時期が来ているとするランド研究所ハノウアー上級アナリストは、米議会は引き続き派閥間闘争による政治停滞を続け、米国の対イラン制裁の中核を成す「イラン制裁法」の適用期限が更新されることもなく、16年12月31日に期間満了を迎えると見る。

 そうするとイラン石油関連分野への(再)進出の道が開かれ、アメリカ以外の企業が一斉にイランへなだれ込むかもしれない。ライバル企業の動きを見て、これまで対イラン制裁解除を負け試合と静観していたエクソンモービルやシェブロンなど米エネルギー大手も、議会へのロビー圧力を強めるはずだ。

 ワシントンでは、6月の期限を越え当分白熱した議論が続きそうだ。