2015年

3月

24日

特集:日本人が知らない中東&イスラム教 2015年3月24日特大号

 ◇イスラム国と中東の混迷 

 ◇民族・宗教対立、格差…中東問題は世界の縮図


秋本裕子

(編集部)


 中東やイスラム教に対する世界の関心が、急速に高まっている。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の誕生と勢力拡大が、多くの人の理解を超えるものだからだ。

 イスラム過激派によるテロ事件は、過去にも起きている。例えば、2001年の「アルカイダ」による米同時多発テロもそうだ。だが、「両者の性質はまったく違う」と東京外国語大学の飯塚正人教授は言う。

 なぜか。「アルカイダが行ったのは対米テロであり、“欧米の攻撃からイスラム教徒を守る戦争”と見る向きも多いが、ISが敵視したのはむしろ同じイスラム教徒のシーア派。イスラム社会では、アルカイダはレジスタンス(抵抗者)、ISはテロリストと見なされている」と説明する。

 さらに、従来になかった点は、欧米で生まれ育った若者が、望んでISに参加していることだ。飯塚教授は、「IS撲滅に成功したとしても、残党が自国に戻ってテロを起こす可能性が高い。欧米諸国では、彼らを生んでしまったことへの恐怖や問題意識が渦巻いている」と指摘する。

 中東には、IS問題以外にも、パレスチナ問題、シリア内戦、「アラブの春」後の進まない民主化など、問題が山積している。そして、これらの問題の多くは、第一次世界大戦後、英仏が自国の都合で国境線を引いたことに起因している。

 問題を複雑にしているのは、中東の人々が、①部族・家族、②国民国家(シリア人、イラク人など)、③民族(クルド人、アラブ人など)、④宗教・宗派(イスラム教徒、ユダヤ教徒、シーア派、スンニ派など)という、さまざまなアイデンティティーを持ち、場面によって立場が変化するからだ。中東を理解するには、そうした歴史とアイデンティティーを理解することが欠かせない。

 ある中東専門家は、「いま中東で起きていることは、世界の問題の縮図」と見る。宗教対立、民族問題、社会格差は、世界中で起きていることでもある。「欧米では中東問題は国内問題として捉えられてきた」(飯塚教授)なか、日本人も無関心ではいられない。